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レインボーポット編
第33話「想いは一つ!勇者クラフティと明日香の愛の力!!!・前編」②
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ユキは気が付くと、ソルベの姿のまま橋上駅舎の自由通路のど真ん中に佇んでいた。黒い人型の塊の数々と薄紫色の空が、まるで駅舎の雰囲気を怪しくしているようだ。
「茅ケ崎…駅…」
切符の自動券売機の真上にある路線図を見る。そこには、ユキが今いると思われる橋上駅舎とその周囲の装飾が8年前の茅ケ崎駅である証拠が示されている。
「一悟、みるく、玉菜の反応は…なしか。辛うじて、ネロと友菓がこの近くにいるみたいだけど。」
ブレイブレットから伝わる他のソルベの気配…迷っている時間などない!!!
「とにかく…みんなと合流しなくっちゃ…」
ユキはそう言いながら立ち上がるが…
「ユキ、ここは僕と入れ替わってくれないか?涼也の話で、明日香さんについて思い出した事があるんだ。」
「どういう…事?」
ユキはそう聞こうとするが、その質問を遮るかの如く、友菓の悲鳴が響き渡る。恐らく、友菓は駅構内にいるのだろう…
「キセルしちゃって…ごめんなさーい!!!」
そう言いながら走り幅跳びの要領で自動改札を通るのが、いかにもユキらしい。水色のマジパティが改札を飛び越え、着地すると、彼女の頭に飛び出ていた水色のアホ毛は引っ込む。人格がユキから雪斗へ移った証拠である。
「友菓は…ここから東南東100メートル…5、6番線のホーム…だな?」
一悟達と初めて鉄道に乗って出かけた際、大宮駅で聞いた列車の音…あの時見て、乗った湘南新宿ラインの車両の音だ。神経を研ぎ澄ませた水色のマジパティは、床、壁、天井、エレベーターなどの至る所から現れるダークミルフィーユを模した無数の黒い人形を蹴散らしつつ、同じマジパティのいる東海道線のホームへと走る。
雪斗の予感は的中した。階段を下りてすぐの所で、ソルベに変身した友菓が自販機とコンクリート状のホームから飛び出る無数の手によって、拘束されていたのだ。それと同時に、5番線に止まっている銀色のボディにオレンジと緑色のラインの車両から、次々とダークミルフィーユを模した黒い人形がぞろぞろと出て来る。
「ソルベブーメラン!!!」
雪斗は咄嗟に長弓を放ち、黒い人形達を蹴散らす。
「ゆ…ゆっきー!?」
「友菓、これは一体…」
今度は長弓を回転させながら、黒い人形達を吹き飛ばし、そのうちの数体は6番線の線路に転落した。駅構内の時計の針はぐるぐると回るばかりで、電光掲示板にはこの世の文字とは思えないほどの支離滅裂な表示がされている。
「わかんない…けど、これだけは言えるよ。トモちん達は、あすちゃんの心の中にある8年前の茅ケ崎市に飛ばされた…ダークミルフィーユに似た黒い人形達が、その証拠。」
友菓の言葉に、雪斗は納得する。薄気味悪い空の色、自分たち以外は人々と思わしき黒い塊…それは間違いなく明日香の心の中にある8年前の茅ケ崎市だ。
「コワイ…キラワレタクナイ…」
自分たちのいる場所が分かったと同時に、無数の人形達の声も手に取るように判ってきた。駅構内の時計はぐるぐる回るだけだが、電光掲示板の文字も段々と明日香の心の叫びに変わる…
「コレイジョウ…スキナキモチニ…ウソヲツキタクナイ…」
「ジブンニショウジキナ、ヒカワダイサンガウラヤマシイ…」
その電光掲示板の表示を見るや否や、友菓は全身を震わせ…
「ばか…あすちゃんの大バカヤローっ!!!!!」
その叫び声と同時に、友菓は自分を拘束する無数の手を振り払いつつ、足を押さえる手を踏みつけ、ソルベアローを構える。
「トモちんの事、「ウザい」とか、「サルみたいでやかましい」とか言ったクセにっ!!!」
大粒の涙をこぼしながら、友菓は黒い人形達に次々とソルベシュートを放つ。
「トモちんだって偏見の塊で、あたしのおじいちゃんとおばあちゃんをバカにしたゴリラの娘と仲良くするなんて、ぶっちゃけヘドが出たよっ!!!でも…あすちゃんがマジパティになって、生き生きとした表情で戦ってるのを見て、「きっと友達になれる」って信じてた!信じてたんだからっ!!!」
友菓の8年越しの明日香への本音を聞いた雪斗は、明日香の心の叫びに何を感じたのか、腰のブレイブスプーンを握りしめ、ソルベの姿から氷見雪斗の姿へと戻ってしまった。
「怖い…嫌われたくない…その感情は、誰にも存在する。それは僕だって同じだ…人間だから…」
そう言いながら、雪斗は階段やエレベーターから出て来る黒い人形達にフェイントをかけ、まるで日本舞踊を踊るかの如く、黒い人形達を惑わし始める。
「僕だって、いちごんから否定されるのは怖いし、嫌われたくないっ!!!それは、いちごんと仲直りした今でも、そう思ってしまう時もあるさ!!!」
今度は黒い人形達に囲まれてしまうが、水色の光が黒い人形達を弾いた刹那、雪斗は再びソルベの姿へと戻る。今度はアホ毛もでているため、人格はユキへと移ったようだ。
「それでも、本音をぶつけ合わなきゃいけない時だってあるんだよ!!!たとえケンカになろーが、どうしよーが…明日香だって、心を持ってるんでしょ!!!勇気を持ってるんでしょっ!!!」
ユキの強い叫びに、黒い人形達は思わず動きを止めてしまった。
「カオスの力を使ってでしか勇気を持てない…心を開けないなら、マジパティなんてやめちゃえばいいじゃんっ!!!思い出してよ!好きなものを見つけた時や、初めて好きなものを好きって言えた時の事をっ!!!!!」
ユキの叫びに、黒い人形達がたじろぎ、電光掲示板の表示が乱れ始める。それは、まるで明日香の心に変化があった事を示す様である。
「好きなものは好きだからこそ、好きなもののために心を開かねばならない…それは家族でもいい、ペットでも、学問でも食べ物でも構わない。」
階段からネロが涼しげな表情で降りて来る。恐らく、途中で明日香の心の中にいる事に気づいた上で変身したのだろう…ユキはそう推測する。
「心を閉ざし続けて深めた溝はすぐには埋まらないが、心を開いたことで、私達は新たな絆を生み出せる…心を持つ者だからこそ…な?」
「最後に来ておきながら、おいしいトコとるなーっ!!!」
ネロの様子に、友菓が怒りを示す。
「すまない…飛ばされたのが駅ビルの中だったから、来るのに時間がかかった。それと…変身の途中で自動改札機とやらが壊れた。」
来るのが遅くなった理由を聞くなり、ユキは呆れた表情を浮かべる。
「ありがとう」
電光掲示板の表示が変わった刹那、5番線に止まっている列車から千葉明日香が3人のソルベの前に出て来て、ソルベの姿の友菓に飛びついてきた。
「友菓っ!!!!!」
友菓は明日香を優しく抱きしめる。
「ごめんなさいっ…本当は、友菓の事が羨ましくて…」
「いいんだよ…寧ろ、トモちん…あすちゃんの事、感謝してるんだ。だって、あすちゃんのお陰でトモちんはマジパティになって、ネロちゃんやゆっきー、ユキたんと出会えたんだから!!!」
そう言いながら、友菓は明日香の前でにかっと笑う。友菓の笑顔を見た明日香は、優しく微笑み、光の粒子となって消えていった。
空は青空に戻り、時計の時刻は「2時44分」と、正しい時刻を示し、電光掲示板は次の列車の案内を示す。平穏な茅ケ崎駅の光景に戻った瞬間だ。
「何はともあれ、あとは一悟達と合流…」
「「ネロ、その列車は…」」
停車中の列車に乗ろうとするネロは、2人のソルベに腕を引っ張られる。
「ドアが閉まります。ご注意ください。」
ドアがシューという音を立てて閉まり、新宿方面へと動き出す。
「危なかったぁ~」
「もーっ…合流どころか、危うくネロだけ群馬に行く所だったじゃん!」
「えっ…群馬?」
3人のソルベの前を横切る列車の行先表示…そこに書いてあったのは、「前橋」。
「茅ケ崎…駅…」
切符の自動券売機の真上にある路線図を見る。そこには、ユキが今いると思われる橋上駅舎とその周囲の装飾が8年前の茅ケ崎駅である証拠が示されている。
「一悟、みるく、玉菜の反応は…なしか。辛うじて、ネロと友菓がこの近くにいるみたいだけど。」
ブレイブレットから伝わる他のソルベの気配…迷っている時間などない!!!
「とにかく…みんなと合流しなくっちゃ…」
ユキはそう言いながら立ち上がるが…
「ユキ、ここは僕と入れ替わってくれないか?涼也の話で、明日香さんについて思い出した事があるんだ。」
「どういう…事?」
ユキはそう聞こうとするが、その質問を遮るかの如く、友菓の悲鳴が響き渡る。恐らく、友菓は駅構内にいるのだろう…
「キセルしちゃって…ごめんなさーい!!!」
そう言いながら走り幅跳びの要領で自動改札を通るのが、いかにもユキらしい。水色のマジパティが改札を飛び越え、着地すると、彼女の頭に飛び出ていた水色のアホ毛は引っ込む。人格がユキから雪斗へ移った証拠である。
「友菓は…ここから東南東100メートル…5、6番線のホーム…だな?」
一悟達と初めて鉄道に乗って出かけた際、大宮駅で聞いた列車の音…あの時見て、乗った湘南新宿ラインの車両の音だ。神経を研ぎ澄ませた水色のマジパティは、床、壁、天井、エレベーターなどの至る所から現れるダークミルフィーユを模した無数の黒い人形を蹴散らしつつ、同じマジパティのいる東海道線のホームへと走る。
雪斗の予感は的中した。階段を下りてすぐの所で、ソルベに変身した友菓が自販機とコンクリート状のホームから飛び出る無数の手によって、拘束されていたのだ。それと同時に、5番線に止まっている銀色のボディにオレンジと緑色のラインの車両から、次々とダークミルフィーユを模した黒い人形がぞろぞろと出て来る。
「ソルベブーメラン!!!」
雪斗は咄嗟に長弓を放ち、黒い人形達を蹴散らす。
「ゆ…ゆっきー!?」
「友菓、これは一体…」
今度は長弓を回転させながら、黒い人形達を吹き飛ばし、そのうちの数体は6番線の線路に転落した。駅構内の時計の針はぐるぐると回るばかりで、電光掲示板にはこの世の文字とは思えないほどの支離滅裂な表示がされている。
「わかんない…けど、これだけは言えるよ。トモちん達は、あすちゃんの心の中にある8年前の茅ケ崎市に飛ばされた…ダークミルフィーユに似た黒い人形達が、その証拠。」
友菓の言葉に、雪斗は納得する。薄気味悪い空の色、自分たち以外は人々と思わしき黒い塊…それは間違いなく明日香の心の中にある8年前の茅ケ崎市だ。
「コワイ…キラワレタクナイ…」
自分たちのいる場所が分かったと同時に、無数の人形達の声も手に取るように判ってきた。駅構内の時計はぐるぐる回るだけだが、電光掲示板の文字も段々と明日香の心の叫びに変わる…
「コレイジョウ…スキナキモチニ…ウソヲツキタクナイ…」
「ジブンニショウジキナ、ヒカワダイサンガウラヤマシイ…」
その電光掲示板の表示を見るや否や、友菓は全身を震わせ…
「ばか…あすちゃんの大バカヤローっ!!!!!」
その叫び声と同時に、友菓は自分を拘束する無数の手を振り払いつつ、足を押さえる手を踏みつけ、ソルベアローを構える。
「トモちんの事、「ウザい」とか、「サルみたいでやかましい」とか言ったクセにっ!!!」
大粒の涙をこぼしながら、友菓は黒い人形達に次々とソルベシュートを放つ。
「トモちんだって偏見の塊で、あたしのおじいちゃんとおばあちゃんをバカにしたゴリラの娘と仲良くするなんて、ぶっちゃけヘドが出たよっ!!!でも…あすちゃんがマジパティになって、生き生きとした表情で戦ってるのを見て、「きっと友達になれる」って信じてた!信じてたんだからっ!!!」
友菓の8年越しの明日香への本音を聞いた雪斗は、明日香の心の叫びに何を感じたのか、腰のブレイブスプーンを握りしめ、ソルベの姿から氷見雪斗の姿へと戻ってしまった。
「怖い…嫌われたくない…その感情は、誰にも存在する。それは僕だって同じだ…人間だから…」
そう言いながら、雪斗は階段やエレベーターから出て来る黒い人形達にフェイントをかけ、まるで日本舞踊を踊るかの如く、黒い人形達を惑わし始める。
「僕だって、いちごんから否定されるのは怖いし、嫌われたくないっ!!!それは、いちごんと仲直りした今でも、そう思ってしまう時もあるさ!!!」
今度は黒い人形達に囲まれてしまうが、水色の光が黒い人形達を弾いた刹那、雪斗は再びソルベの姿へと戻る。今度はアホ毛もでているため、人格はユキへと移ったようだ。
「それでも、本音をぶつけ合わなきゃいけない時だってあるんだよ!!!たとえケンカになろーが、どうしよーが…明日香だって、心を持ってるんでしょ!!!勇気を持ってるんでしょっ!!!」
ユキの強い叫びに、黒い人形達は思わず動きを止めてしまった。
「カオスの力を使ってでしか勇気を持てない…心を開けないなら、マジパティなんてやめちゃえばいいじゃんっ!!!思い出してよ!好きなものを見つけた時や、初めて好きなものを好きって言えた時の事をっ!!!!!」
ユキの叫びに、黒い人形達がたじろぎ、電光掲示板の表示が乱れ始める。それは、まるで明日香の心に変化があった事を示す様である。
「好きなものは好きだからこそ、好きなもののために心を開かねばならない…それは家族でもいい、ペットでも、学問でも食べ物でも構わない。」
階段からネロが涼しげな表情で降りて来る。恐らく、途中で明日香の心の中にいる事に気づいた上で変身したのだろう…ユキはそう推測する。
「心を閉ざし続けて深めた溝はすぐには埋まらないが、心を開いたことで、私達は新たな絆を生み出せる…心を持つ者だからこそ…な?」
「最後に来ておきながら、おいしいトコとるなーっ!!!」
ネロの様子に、友菓が怒りを示す。
「すまない…飛ばされたのが駅ビルの中だったから、来るのに時間がかかった。それと…変身の途中で自動改札機とやらが壊れた。」
来るのが遅くなった理由を聞くなり、ユキは呆れた表情を浮かべる。
「ありがとう」
電光掲示板の表示が変わった刹那、5番線に止まっている列車から千葉明日香が3人のソルベの前に出て来て、ソルベの姿の友菓に飛びついてきた。
「友菓っ!!!!!」
友菓は明日香を優しく抱きしめる。
「ごめんなさいっ…本当は、友菓の事が羨ましくて…」
「いいんだよ…寧ろ、トモちん…あすちゃんの事、感謝してるんだ。だって、あすちゃんのお陰でトモちんはマジパティになって、ネロちゃんやゆっきー、ユキたんと出会えたんだから!!!」
そう言いながら、友菓は明日香の前でにかっと笑う。友菓の笑顔を見た明日香は、優しく微笑み、光の粒子となって消えていった。
空は青空に戻り、時計の時刻は「2時44分」と、正しい時刻を示し、電光掲示板は次の列車の案内を示す。平穏な茅ケ崎駅の光景に戻った瞬間だ。
「何はともあれ、あとは一悟達と合流…」
「「ネロ、その列車は…」」
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「ドアが閉まります。ご注意ください。」
ドアがシューという音を立てて閉まり、新宿方面へと動き出す。
「危なかったぁ~」
「もーっ…合流どころか、危うくネロだけ群馬に行く所だったじゃん!」
「えっ…群馬?」
3人のソルベの前を横切る列車の行先表示…そこに書いてあったのは、「前橋」。
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