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勇者クラフティ編

第14話「大勇者様激白!!!先代マジパティ敗北の理由」③

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 僧侶の話を聞いた2人は着替えを済ませ、2階のリビングへと降りる。そこにはアンニンとガレットの他に、みるく、ラテ、ココア、グラッセ、ボネ、ネロも一緒だ。

「一悟と雪斗は?」

「いっくんは修学旅行実行委員会の集まりで、ユキくんは生徒会に…」

「2人にはあとで私が話しておくわ。それで、大勇者様!勇者・クラフティと先代のマジパティ達が負けた経緯は?」

 僧侶アンニンの言葉に、大勇者は重い口を開く。



「先代のマジパティ達のうち、ミルフィーユ、ソルベ、プディングの3人は、ニコラス…勇者クラフティに恋愛感情を持っていたんだ。そのうちの1人は…クラフティと一線を越えていた。…それを当時のカオスは目を付け、彼らに襲い掛かった…それが、敗北に至った理由だ。」



 衝撃の言葉に、みるく達は息をのむ。

「勇者クラフティに恋愛感情を持っていたってことは…3人は勇者クラフティを取り合っていたライバル関係って…こと?」

「そう言うことになるわね…それに、勇者クラフティは元々勇者としての心が弱かったって、エレナさんから聞いたことがあるわ。」

「ご名答…心の弱い勇者と、その勇者を取り合うマジパティ…心を一つにするどころか…」

「3人が干渉し合う者同士なら、心はバラバラ…確かに、カオスがその弱みに付け込むのは納得がいきますね。」

 ガレットの話に、ネロはカオスが目を付けた理由に納得をする。



 また、ガレットはマジパティ達のパティブレードについても説明する。パティブレードはマジパティ達の心が一つである事、そして、勇者の心が強い事が条件となっており、心の弱い勇者の前には出ない。それはまさしく、先代マジパティ達の心がバラバラであったこと、勇者クラフティの心が弱かった事の2つが重なり、パティブレードが出なかったのである。



「それじゃあ…恋愛禁止って…おにぃがカオスに負けたから?」

「それもある。お前までもがカオスに奪われるのがイヤだったから…そもそもセーラが勇者になる事自体、全力で阻止したかったし…1人の女の子として、幸せになってほしかったのに…」

 娘の質問に、大勇者は体育座りをしながらそっぽを向いて答える。やはり、父親として照れ臭くなるようだ。

「でも、「恋愛禁止」はやりすぎだと思いますがね?カオスに奪われるのが嫌なのに、あなたは娘から笑顔を奪った…幸せになってほしいなら、なぜそんなことをなさるんですか?」

「そもそも…勇者になる前からトルテの事が好きだった勇者様が、いっくんやユキくんに恋愛感情を抱くとは思えません!!!」

「みるみると同じー!異性に免疫のない中学生と、顔がいいだけのメンヘラ坊と娘ちゃんが釣り合うワケないっしょ!!!ナイナイナイ…」

 ネロの言葉に、みるくとボネが賛同する。

「そもそも、娘さんとトルテくんの場合、禁止したら禁止したで、カオスがしゃしゃり出て来て危ないと思います!!!」

「それもそうね…最も、一番気を付けるべきなのが…「当時、パリのホテルでバイト中だったセーラにボンボンショコラ与えて酔わせた上、自身のVIPルームに連れ込んでベッドに寝かせたら、これまた酩酊状態のトルテが上がり込んで、そのままトルテがセーラと一夜の関係築いたのを目撃しつつ、彼が帰った後にセーラに向かって「ご馳走様」言って、そのまま関係を要求し続けてくるイタリア人の捜査官」1人くらいしかいないけどね?」

 淡々とした表情で生々しい話をする僧侶に、全員がドン引きする。そして、ふてくされる大勇者のポケットから1枚の紙きれを取り出し…



「それに…市役所でこういうものをもらって来ておきながら、恋愛禁止とか矛盾してません?」



 アンニンが取り出したものは、瀬戌せいぬ市の婚姻届だった。そして、ガレットが抱えている包みをチラ見する。

「結婚情報誌まで…娘や一悟達に言った事と、自分がやっている事…辻褄つじつまが合わないんですけど!!!」

「そもそも、恋愛禁止ってどこまでがボーダーラインなのかハッキリしてないです。そこがハッキリしていない限り、恋愛禁止は納得いきません!!!」

「それに勇者クラフティの敗北は、勇者とマジパティが恋愛関係に発展したことで起きた悲劇…それが発生しない限りは、2人なら大丈夫かと思います。」

「親父…ホントにアタシの幸せを願っているのなら、答えて!!!本当はどうしたいのか…」

 娘達ににじり寄られる大勇者は、とうとう観念したのか…



「本当は調査が終わったら、トルテを結婚相手として紹介したかったのー!!!でも…悔しいんだもん…調査が終わって戻って来たら、セーラは既に勇者になってたし…消息不明だったし…やっと再会したら、距離取られてるし…挙句の果てには、しれっとトルテの事が好きだってバラすし…面白くねぇ…」



 まるで小学生に戻ったかのような言い回しで白状する父親の姿に、シュトーレンは後ろめたい気持ちになる。そんな親子を見かねた僧侶は、リビングに勇者親子とトルテを残し、住居スペースから出てしまった。

「8年近くも家族ほったらかしして、今更父親ヅラされるのがイヤなのはわかってる…それでも、何度も何度も俺が魔界からスイーツ界に…いや、セーラが生まれた日の事が甦って…」

「親父…アタシは、親父がアタシを見つけてくれて、ホントは嬉しかった…でも今、親父の目の前にいるのは15歳のセーラじゃない…23の女だよ…」

「それでも…いくつになっても…お前は…セーラは…俺とセレーネの娘なんだよ。例え重荷だって思われようが、嫌われようが…」

「でも…アタシはトルテがいないとダメなの!!!他の人の前では強がっていられても…トルテの前では、どうしても本当の自分を出したくなるの…ずっと出さないようにしていたけど、もう我慢の限界っ!!!」

 父親の言葉を遮るかのように、シュトーレンは自身の好きな相手を告白する。

「アタシ…もう「勇者」って身分を盾に、自分の気持ちに嘘なんてつきたくないの!!!自分の気持ちに嘘を重ねて、一悟達に迷惑かけるなんてしたくないっ!!!!!」

「おやっさん…俺っちからもお願いします!アンニン姉さん並みの力も金も知識もはないっスけど、それでも姉御には「セーラ」としての自分を受け入れる存在が必要なんです!!!」

 シュトーレンの言葉に続いて、今度はガレットの前でトルテが土下座をする。



「ホント…セーラってば、そういう意地っ張りな所がセレーネそっくり!!でも…考えてみれば、俺もセレーネが支えてくれたおかげで、何度も救われたんだよな…」



 大勇者は2人の言動に呆れながらも、とうとう観念したようだ。

「2人のことは認めるけど、あくまで「セーラ」として結婚を前提に付き合うこと!それからセーラ…父親としても、先輩勇者としても…昨日と今朝の態度は流石に腹がたったからな?突然男の姿で俺に殴りかかったり、俺が用意した食事食べないで、トルテが作った食事食べたり…」

「親父も親父で、娘に卑猥な言葉ぶつけんじゃねぇっ!!!!!(男声)」

 トルテは再びケンカに発展しようとする2人を宥めるが、やっと2人が本音をさらけ出した事で、安心したようだ。







 一方、一悟と雪斗は中間テストの話をしながらカフェ「ルーヴル」に向かっている。

「最悪だ…勇者様と大勇者様のケンカが心配で…数学の解答欄、途中から…ズレた…」

「いちごんの方はまだ可愛いものさ。僕なんか、英語の時にユキが…」

「お前はユキに頼らないで、英語のテストを受けろよ…」

 一悟の言葉に、ユキが「そうだ、そうだ!」と罵ったのは言うまでもない。

「やだー…単語覚えるのめんどいー…ムッシュ・エクレールの教え方とは基本的に合わないのー!!!」

「どんだけ仲悪いんだよ…お前ら…あれっ…」

 雪斗の言い分に呆れる一悟は、僧侶たちがステップワゴンに乗る様子を目の当たりにする。



「あら…やっと来たのね。お疲れ様…ってなワケで、買い物に行きましょ。乗りなさい。」



 なりゆきで一悟と雪斗はアンニンの運転するミニバンに乗る事となった。ミニバンには既にみるく、グラッセ、ボネ、ネロの4人が乗っている。

「修学旅行の買い物もあるし、特に2人は夏用の私服も追加しておかないとね。」

 僧侶の言葉に、一悟と雪斗はブレイブレットで女の子の姿に変身する。そして、アンニンから「恋愛禁止」命令に至った経緯、そして途中で変身が解かれた事を聞かされる。先代のミルフィーユ達が勇者クラフティと恋愛関係にあった事については、一悟も少々引っかかるところがあるようだ。



「そう言えば、あすちゃん…「ニコラス」って男と付き合ってたんだよな…」
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