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勇者クラフティ編
第11話「今日は何の日?それぞれの悩み事」①
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「あーーーーーーーーーーっ!!!清々しい朝だぜーーーーーー!!!」
久しぶりの我が部屋で一夜を明かし、1週間ぶりに男に戻った一悟は、思いっきり背伸びをする。世間はゴールデンウィークに入ったため、極真会館は開いていない。そして、そんな彼の隣には…
「うるさいなぁ…いちごん…」
藍色のロングヘアーに男性用のLサイズのYシャツ1枚の少女がむくりと起き上がり、一悟の表情は一気に青ざめる。少女はベッド真横の布団、一悟はベッドで寝ていたはずだが、一悟は何故か布団の方に居たのである。
「まったく…いちごんは寂しがり屋だなぁ…そんなに僕の…」
「んなワケねーだろ…誤解を招く言い方すんなよ?」
そう言いながら、一悟は雪斗の両頬を引っ張る。身長153センチの一悟が、身長170センチの雪斗に対して顔を引っ張る行為は、背伸びをしない限り難しい行為ではあるが、現在の雪斗の姿は身長160センチの少女の姿で、尚且つ寝起きのため、今の一悟には容易なことである。
「そうです!一悟は寝相が悪いだけなんですから…」
雪斗の発言を否定する一悟に対し、ラテはさりげなく一悟が傷つくような言葉を述べる。自覚しているとはいえ、寝相の良し悪しを指摘されるのだけは、一悟にとっては悔しい事である。
雪斗の方はカオスが染色体までをも女性に変えてしまった影響もあり、ユキの人格を残した上で、氷見雪斗の姿に戻るまでの間、一悟とみるくと過ごしながら、僧侶アンニンの1日1回の定期治療を受けている。雪斗の失踪事件に関しては、30日にカフェ「ルーヴル」の裏口で衰弱しているのが発見され、そのまま保護と治療を行うという事で処理し、情報公開は「雪斗が医師会で研究中の奇病に罹患したため、これ以上の情報公開は治療に支障が出る」という事で打ち切った。本当の事はアンニンとムッシュ・エクレールが雪斗の祖父にのみ話し、定期的に連絡を取りながら、元の姿に戻るまでの間は、雪斗は氷見家から離れて暮らすことにしたのである。マジパティの事を知っているのが、氷見家の当主である、雪斗の祖父のみだからだ。
一悟と雪斗はそれぞれパジャマに着替え始めた。ラテはYシャツを脱いだ雪斗の胸を水色のブラで覆う。女性であるシュトーレン達から付け方を教えてはもらったものの、未だに雪斗1人ではブラを付けられないようで、その度に一悟を指名してくるからだ。マグカップに身体を入れた姿でありながら、腋肉まできっちり収めるのは、流石としか言えない。
「それにしても、雪斗のおじいちゃんが元からマジパティの事を知っていたなんて…」
「元々「氷見家の敷地内に、スイーツ界へとつながる空間が存在していた」…って、歴代当主にのみ明かされる事だったとは…」
ガレットが笑いながら話すものだから、最初はシュトーレン共々、冗談だと思っていた。だが、アンニンとムッシュ・エクレールが雪斗の祖父に家庭訪問と名目で確認を取ったところ、事実だという事が判明。警察の事情聴取などもあり、雪斗は一悟の家に泊まるまでの2日間は学校に行けず、退屈だったようだ。30日は一悟、ガレットと共にシュトーレンの所へ泊り、翌日は瀬戌警察署で事情聴取のあと、祖父との再会、治療…と、丸1日アンニンと一緒。勿論、その日の宿泊先はアンニンのマンション。そして、昨晩は男に戻って家に帰ってきた一悟の所へ…一悟の家では、初めて一悟がみるく以外の女の子を連れてきたことで大騒ぎ!母は急いで赤飯を炊き、姉の一華は飼い犬と一緒に一悟を問い詰め、父は先日事情聴取に来ていた少女が家に来たことで、何が何だかわからず踊り出してしまったのだった。
「姉ちゃんが「既成事実作ったー」って言いふらす前に、さっさとリビングに行くから、じっとしてろ!!!2人して勇者様の店を手伝いに行かなきゃいけねーんだから…」
一悟はそう言いながら、着替えを済ませた雪斗の髪を整える。雪斗は親権が母親に戻るまでは今の姿とほぼ同じ長さだったのだが、雪斗は自分で櫛を通す事をした事がない。ユキの人格ではマカロンに教わった事があるのか、髪を結ぶことができるのだが、マジパティとして復帰した翌日以降、雪斗と入れ替わっていない。雪斗も練習する気はないらしく、仕方なく一悟がやることになったのである。
一悟は雪斗とは逆で、昔から男子にぐちゃぐちゃにされたみるくの髪や、事故で両手が使えない極真会館の館長の娘の髪を結うことが多い。その事実にシュトーレンには驚かれてしまったのだが、一悟本人は気にしていない。まぁ…その事で立場を悪用する者が、一悟の家族に1人いるのだが…
「いーちーごーくーん♪さっき、一華様の話をしてなかったかな~?」
「噂をすれば影」…とは、まさにこの事である。丁度、雪斗の髪をまとめ終えたこともあり、一悟は姉の言葉を聞こえぬフリをしながら、雪斗と一緒に部屋を出る。
「いいの?いちごん…」
「俺がやったら、ますます態度がゴリラになるからヤダ!」
「誰がゴリラだっ!!!」
「あー、聞こえねぇ!聞こえねぇ!!ユキも、自分から髪をまとめようとしねぇでいると、あぁいう風な「自分で髪を結えない高校生」になるからな?」
一悟が雪斗に忠告した刹那、一華は弟に掴みかかった。一悟はなんとかガードするが、身長も体格も姉の方が大きいため、どうにも分が悪い。その光景を目の当たりにした雪斗は、つい最近まで言い争っていた相手の家での様子に戸惑う。そんな姉弟ゲンカが2階で行われているのもつゆ知らず、千葉家の玄関のドアが開いた。
「ガチャッ…」
玄関のドアを開けたのは、みるくだった。みるくの気配に気づいたのか、リビングから1匹の小型犬が飛び出す。
「おはよー…マレンゴ♪」
みるくの声がした事に気づいた雪斗は、咄嗟に玄関へと逃げる。
「みるく…い…い…い…いちごん…が…」
怯える雪斗と、2階から響く物音に何かを察したみるくは、マレンゴを抱いたまま黙って靴を脱ぎ、玄関から上がり込む。そして、そのまま階段を上る。その後ろ姿を見た雪斗は、みるくの背中に不動明王がいるように見えた。
「いっくん…ちかちゃん…」
そう2人を呼ぶみるくの表情はにこやかではあるが、いかにも「怒ってます」と言わんばかりのオーラが漂っている。みるくが抱いているマレンゴも、歯茎をむき出しにして、「ウー」と唸る。
「いい加減にしなさーーーーーーーーーーーーーいっ!!!!!」
「ワンワンワンワンワン!!!!!」
突然の幼馴染の怒鳴り声と飼い犬の声に、ケンカ中の姉弟は咄嗟にケンカを中断し、颯爽と廊下に正座をする。
「どうしてケンカを始めたの?」
姉弟はそろってお互いを指さして物言いをしようとするが、みるくが抱いている小型犬の唸り声がそれを妨害する。
「いちごんのお姉ちゃんが…いちごんの部屋に来て…多分、髪の事で…」
「そうそう…まーた、一悟に髪を結んでもらおうとしてたんだろ?一華…」
雪斗の説明に、寝室から出てきた一悟の父が加わる。子供たちのケンカで起こされたらしく、パジャマ姿だ。父親に確信を突かれた一華は、がっくりと項垂れる。
「お察しの通りでございます…」
「ちかちゃん…ちかちゃんにとって、弟はちかちゃんの専属スタイリスト?それとも下僕?」
「女子高生が、プロスタイリストや美容師目指しているワケでもない中学生に髪整えてもらうとか…コレ、結婚したら毎朝未来の旦那に髪整えてもらうレベルー!世間様にお出しできなーい!」
幼馴染と父親の言葉に、一華は身体を縮めた。そんな姉の様子に、一悟はほっと胸をなでおろそうとするが…
「いっくんもいっくんだよ!!!不用意にお姉ちゃんを煽るなんて…さては、本人が一番気にしている事をユキちゃんにもバラしたんでしょ?」
「うぐっ…」
図星である。幼馴染と父親と飼い犬に窘められた2人はお互いに謝り、既に仕事で出かけた母親が用意した朝食を食べる。バタバタしていたのか、一悟の母は夫の食事を忘れていたようで、一悟の父の食事は代わりにみるくがハムエッグトーストを作った。カオスソルベだった頃のユキがパンを食べることに文句を言っていた雪斗も、流石にこの3日間でパンのある食事も受け入れたようだ。
食事と身支度を済ませた一悟達は、急いでシュトーレンのいるカフェ「ルーヴル」へと向かう。店には集合時間ギリギリでの到着だったため、シュトーレンは…
「遅刻確定の時くらい、連絡入れとかないと…後々が大変よ?」
この時点で「まだ男に変身せずにいるお前が言うな」と言わんばかりの状態ではあるが、今日はメインでガレットが厨房に入る事になったので、今日のシュトーレンはトルテと共にホールで仕事をするようだ。雪斗共々恰好がメイド服なので、端から見ればメイド喫茶ではあるが、実際はごくごく一般的な喫茶店である。
「それにしても、娘のメイド服姿はいいなぁ…まぁ、変な虫が来たら始末するけど。」
「みるく…親父が変な事したら、麺棒で尻たたきしていいからね?(男声)」
みるくは本来の趣味を生かし、今回はガレットと共に厨房に入ることになっている。
「セーラ…ちべたい…それじゃ、一悟は…っと。」
ガレットは一悟の前に、1本のピンクを基調としたブレスレットを差し出した。ブレスレットの真ん中には、ミルフィーユの時と同じような水色の宝石と白い羽の飾りがついたモチーフが付いている。
「そのブレイブレットを左腕につけて、その飾りにブレイブスプーンをかざすんだ。」
一悟はガレットに言われるがまま、ピンクのブレイブレットを装着し、エンジェルスプーンを飾りの前にかざす。すると、みるみるうちに一悟の身体はみるみるうちに髪は色はそのままのポニーテールに代わり、身長と体格はミルフィーユと同じメイド服の少女に変化した。
「このカフェを手伝うなら、その姿の方がやりやすいだろ。親が警察官なら、尚更だ。雪斗も、元の氷見雪斗の姿に戻り次第、ブレイブレットを渡す。ライス以外のファンクラブの連中が居座ったら厄介だからな。」
雪斗はメイド服、みるくは黄色いスカーフのパティシエ服にそれぞれ着替えが終わり、開店準備を始める。みるくの髪型はツーサイドアップではなく、ツインシニヨンになっている。テーブル、カウンターをダスターで拭き、床はモップ掛け。トイレの掃除は、勿論怠らない。メニューボードに今日のメニューを書き、コーヒーマシンの準備を始める。その間に、厨房にいるみるくとガレットは材料の下ごしらえをする。家族や一悟、一悟の父以外の男の人が苦手なみるくではあるが、今日は厨房にお目付け役としてラテがいるため、平気なようだ。一方、ココアはシュトーレンがメイド服に着替えているところを覗いた罰として、冷蔵庫に閉じ込められている。
久しぶりの我が部屋で一夜を明かし、1週間ぶりに男に戻った一悟は、思いっきり背伸びをする。世間はゴールデンウィークに入ったため、極真会館は開いていない。そして、そんな彼の隣には…
「うるさいなぁ…いちごん…」
藍色のロングヘアーに男性用のLサイズのYシャツ1枚の少女がむくりと起き上がり、一悟の表情は一気に青ざめる。少女はベッド真横の布団、一悟はベッドで寝ていたはずだが、一悟は何故か布団の方に居たのである。
「まったく…いちごんは寂しがり屋だなぁ…そんなに僕の…」
「んなワケねーだろ…誤解を招く言い方すんなよ?」
そう言いながら、一悟は雪斗の両頬を引っ張る。身長153センチの一悟が、身長170センチの雪斗に対して顔を引っ張る行為は、背伸びをしない限り難しい行為ではあるが、現在の雪斗の姿は身長160センチの少女の姿で、尚且つ寝起きのため、今の一悟には容易なことである。
「そうです!一悟は寝相が悪いだけなんですから…」
雪斗の発言を否定する一悟に対し、ラテはさりげなく一悟が傷つくような言葉を述べる。自覚しているとはいえ、寝相の良し悪しを指摘されるのだけは、一悟にとっては悔しい事である。
雪斗の方はカオスが染色体までをも女性に変えてしまった影響もあり、ユキの人格を残した上で、氷見雪斗の姿に戻るまでの間、一悟とみるくと過ごしながら、僧侶アンニンの1日1回の定期治療を受けている。雪斗の失踪事件に関しては、30日にカフェ「ルーヴル」の裏口で衰弱しているのが発見され、そのまま保護と治療を行うという事で処理し、情報公開は「雪斗が医師会で研究中の奇病に罹患したため、これ以上の情報公開は治療に支障が出る」という事で打ち切った。本当の事はアンニンとムッシュ・エクレールが雪斗の祖父にのみ話し、定期的に連絡を取りながら、元の姿に戻るまでの間は、雪斗は氷見家から離れて暮らすことにしたのである。マジパティの事を知っているのが、氷見家の当主である、雪斗の祖父のみだからだ。
一悟と雪斗はそれぞれパジャマに着替え始めた。ラテはYシャツを脱いだ雪斗の胸を水色のブラで覆う。女性であるシュトーレン達から付け方を教えてはもらったものの、未だに雪斗1人ではブラを付けられないようで、その度に一悟を指名してくるからだ。マグカップに身体を入れた姿でありながら、腋肉まできっちり収めるのは、流石としか言えない。
「それにしても、雪斗のおじいちゃんが元からマジパティの事を知っていたなんて…」
「元々「氷見家の敷地内に、スイーツ界へとつながる空間が存在していた」…って、歴代当主にのみ明かされる事だったとは…」
ガレットが笑いながら話すものだから、最初はシュトーレン共々、冗談だと思っていた。だが、アンニンとムッシュ・エクレールが雪斗の祖父に家庭訪問と名目で確認を取ったところ、事実だという事が判明。警察の事情聴取などもあり、雪斗は一悟の家に泊まるまでの2日間は学校に行けず、退屈だったようだ。30日は一悟、ガレットと共にシュトーレンの所へ泊り、翌日は瀬戌警察署で事情聴取のあと、祖父との再会、治療…と、丸1日アンニンと一緒。勿論、その日の宿泊先はアンニンのマンション。そして、昨晩は男に戻って家に帰ってきた一悟の所へ…一悟の家では、初めて一悟がみるく以外の女の子を連れてきたことで大騒ぎ!母は急いで赤飯を炊き、姉の一華は飼い犬と一緒に一悟を問い詰め、父は先日事情聴取に来ていた少女が家に来たことで、何が何だかわからず踊り出してしまったのだった。
「姉ちゃんが「既成事実作ったー」って言いふらす前に、さっさとリビングに行くから、じっとしてろ!!!2人して勇者様の店を手伝いに行かなきゃいけねーんだから…」
一悟はそう言いながら、着替えを済ませた雪斗の髪を整える。雪斗は親権が母親に戻るまでは今の姿とほぼ同じ長さだったのだが、雪斗は自分で櫛を通す事をした事がない。ユキの人格ではマカロンに教わった事があるのか、髪を結ぶことができるのだが、マジパティとして復帰した翌日以降、雪斗と入れ替わっていない。雪斗も練習する気はないらしく、仕方なく一悟がやることになったのである。
一悟は雪斗とは逆で、昔から男子にぐちゃぐちゃにされたみるくの髪や、事故で両手が使えない極真会館の館長の娘の髪を結うことが多い。その事実にシュトーレンには驚かれてしまったのだが、一悟本人は気にしていない。まぁ…その事で立場を悪用する者が、一悟の家族に1人いるのだが…
「いーちーごーくーん♪さっき、一華様の話をしてなかったかな~?」
「噂をすれば影」…とは、まさにこの事である。丁度、雪斗の髪をまとめ終えたこともあり、一悟は姉の言葉を聞こえぬフリをしながら、雪斗と一緒に部屋を出る。
「いいの?いちごん…」
「俺がやったら、ますます態度がゴリラになるからヤダ!」
「誰がゴリラだっ!!!」
「あー、聞こえねぇ!聞こえねぇ!!ユキも、自分から髪をまとめようとしねぇでいると、あぁいう風な「自分で髪を結えない高校生」になるからな?」
一悟が雪斗に忠告した刹那、一華は弟に掴みかかった。一悟はなんとかガードするが、身長も体格も姉の方が大きいため、どうにも分が悪い。その光景を目の当たりにした雪斗は、つい最近まで言い争っていた相手の家での様子に戸惑う。そんな姉弟ゲンカが2階で行われているのもつゆ知らず、千葉家の玄関のドアが開いた。
「ガチャッ…」
玄関のドアを開けたのは、みるくだった。みるくの気配に気づいたのか、リビングから1匹の小型犬が飛び出す。
「おはよー…マレンゴ♪」
みるくの声がした事に気づいた雪斗は、咄嗟に玄関へと逃げる。
「みるく…い…い…い…いちごん…が…」
怯える雪斗と、2階から響く物音に何かを察したみるくは、マレンゴを抱いたまま黙って靴を脱ぎ、玄関から上がり込む。そして、そのまま階段を上る。その後ろ姿を見た雪斗は、みるくの背中に不動明王がいるように見えた。
「いっくん…ちかちゃん…」
そう2人を呼ぶみるくの表情はにこやかではあるが、いかにも「怒ってます」と言わんばかりのオーラが漂っている。みるくが抱いているマレンゴも、歯茎をむき出しにして、「ウー」と唸る。
「いい加減にしなさーーーーーーーーーーーーーいっ!!!!!」
「ワンワンワンワンワン!!!!!」
突然の幼馴染の怒鳴り声と飼い犬の声に、ケンカ中の姉弟は咄嗟にケンカを中断し、颯爽と廊下に正座をする。
「どうしてケンカを始めたの?」
姉弟はそろってお互いを指さして物言いをしようとするが、みるくが抱いている小型犬の唸り声がそれを妨害する。
「いちごんのお姉ちゃんが…いちごんの部屋に来て…多分、髪の事で…」
「そうそう…まーた、一悟に髪を結んでもらおうとしてたんだろ?一華…」
雪斗の説明に、寝室から出てきた一悟の父が加わる。子供たちのケンカで起こされたらしく、パジャマ姿だ。父親に確信を突かれた一華は、がっくりと項垂れる。
「お察しの通りでございます…」
「ちかちゃん…ちかちゃんにとって、弟はちかちゃんの専属スタイリスト?それとも下僕?」
「女子高生が、プロスタイリストや美容師目指しているワケでもない中学生に髪整えてもらうとか…コレ、結婚したら毎朝未来の旦那に髪整えてもらうレベルー!世間様にお出しできなーい!」
幼馴染と父親の言葉に、一華は身体を縮めた。そんな姉の様子に、一悟はほっと胸をなでおろそうとするが…
「いっくんもいっくんだよ!!!不用意にお姉ちゃんを煽るなんて…さては、本人が一番気にしている事をユキちゃんにもバラしたんでしょ?」
「うぐっ…」
図星である。幼馴染と父親と飼い犬に窘められた2人はお互いに謝り、既に仕事で出かけた母親が用意した朝食を食べる。バタバタしていたのか、一悟の母は夫の食事を忘れていたようで、一悟の父の食事は代わりにみるくがハムエッグトーストを作った。カオスソルベだった頃のユキがパンを食べることに文句を言っていた雪斗も、流石にこの3日間でパンのある食事も受け入れたようだ。
食事と身支度を済ませた一悟達は、急いでシュトーレンのいるカフェ「ルーヴル」へと向かう。店には集合時間ギリギリでの到着だったため、シュトーレンは…
「遅刻確定の時くらい、連絡入れとかないと…後々が大変よ?」
この時点で「まだ男に変身せずにいるお前が言うな」と言わんばかりの状態ではあるが、今日はメインでガレットが厨房に入る事になったので、今日のシュトーレンはトルテと共にホールで仕事をするようだ。雪斗共々恰好がメイド服なので、端から見ればメイド喫茶ではあるが、実際はごくごく一般的な喫茶店である。
「それにしても、娘のメイド服姿はいいなぁ…まぁ、変な虫が来たら始末するけど。」
「みるく…親父が変な事したら、麺棒で尻たたきしていいからね?(男声)」
みるくは本来の趣味を生かし、今回はガレットと共に厨房に入ることになっている。
「セーラ…ちべたい…それじゃ、一悟は…っと。」
ガレットは一悟の前に、1本のピンクを基調としたブレスレットを差し出した。ブレスレットの真ん中には、ミルフィーユの時と同じような水色の宝石と白い羽の飾りがついたモチーフが付いている。
「そのブレイブレットを左腕につけて、その飾りにブレイブスプーンをかざすんだ。」
一悟はガレットに言われるがまま、ピンクのブレイブレットを装着し、エンジェルスプーンを飾りの前にかざす。すると、みるみるうちに一悟の身体はみるみるうちに髪は色はそのままのポニーテールに代わり、身長と体格はミルフィーユと同じメイド服の少女に変化した。
「このカフェを手伝うなら、その姿の方がやりやすいだろ。親が警察官なら、尚更だ。雪斗も、元の氷見雪斗の姿に戻り次第、ブレイブレットを渡す。ライス以外のファンクラブの連中が居座ったら厄介だからな。」
雪斗はメイド服、みるくは黄色いスカーフのパティシエ服にそれぞれ着替えが終わり、開店準備を始める。みるくの髪型はツーサイドアップではなく、ツインシニヨンになっている。テーブル、カウンターをダスターで拭き、床はモップ掛け。トイレの掃除は、勿論怠らない。メニューボードに今日のメニューを書き、コーヒーマシンの準備を始める。その間に、厨房にいるみるくとガレットは材料の下ごしらえをする。家族や一悟、一悟の父以外の男の人が苦手なみるくではあるが、今日は厨房にお目付け役としてラテがいるため、平気なようだ。一方、ココアはシュトーレンがメイド服に着替えているところを覗いた罰として、冷蔵庫に閉じ込められている。
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