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生き残るために。
まっててね。
しおりを挟むヨルと一緒にケルビムさん救出に向かうことにしたのだけれど、早速壁にぶち当たっていた。
「で、どうやって助けよっか……ヨル……。」
そう。言い出したは言いけれど案が全く思いつかないのだ。強行突破?いやそれだときっと二の舞になるはず。隠れながら行く?でもどうやって?
私の思考は足りないが故にこんがらがっている。
「で。言い出したからには、なにか案はある訳?また衝動的とかじゃないよね?」
うっ、考えてました……一瞬だけど。ちゃんと考えてはいたよ!……全部投げ出してなるようになれ!って一瞬やりそうになったけど………?
ていうか、疑問形なのに、なぜか文脈が完結している。完全に予想されてた。そして当たってた。
どうやら、衝動で動いてもろくな事がないと分かっているのに、言ったそばから同じ事を繰り返そうとしていたという事はお見通しだったらしい。よるこわい。
でもそうか、一緒に戦うのだから、相談してもいいのか。どこか、ほんわかした気持ちで希望を感じた私はヨルへ問いかけた。
「ヨルは…、どうした方がいいと思う…?」
「どうしたもこうしたも、見つかったら終わりなことは知ってるでしょ?」
「そ、そうだけど…!ほら、見つからないようにケルビムさんのところに行けるルートがあるとか…!!鉢合わせちゃった時、せめて対抗出来るように何か用意するとか…!」
「なんだ、考え無しに突っ込む気かと思ってた。見つかったら危ない認識はあるんだね」
わたしのことなんだと思ってるのだこの猫は。しかし、彼がいないと私が何も出来ないどころか火に着の身着のままで突っ込むことも防げなかったわけで。
短い過去を振り返りながら反省を思い浮かべていると、
まあ、でもそういう事なら僕の得意分野だよ。とヨルはこちらを妖しげに流し見た。
…………
……
「ここだよ。」
「わ……、凄い……なにここ……!」
数分ヨルと向かったそこは、元々私達が隠れていたところからそう遠くない場所にある武器庫だった。
とても年期が入っているのか、あちこち埃まみれだ。
「大昔にまだ争いが起きてすぐ、対抗した獣達が隠し持ってた……らしい」
「……らしい……?」
「いや、僕が知ってるわけないでしょ。見たんだよ。結構前に。」
そう言いながら指し示した先、何やら書籍らしいものが積まれていた。
「けど途中から読めなくて、ある程度しか読んでないんだ。それも前だったからさっきまで忘れてたよ。」
読めない……?
そう思って私は本のようなそれを手に取った。
空けてみると物語のように綴った歴史書のようなもので、大昔、人間と獣が共存していたこと。住処を追われたまたまここに行き着いたこと。あの歪みと呼ばれる空間のことが書いてあった。
そこまで読み進めているとヨルがこちらに食いついてきた。
「まって!それ、読めるの?」
「えっ、うん。読める、……よ?」
どうしたんだろうと、もう一度何の気なしに読んでいると、文字が違うことに気がついた。
「私なんで読めたんだろう……。」
「それ、もしかして君の世界の言葉?」
なにをいってるんだこの猫(2回目)
「私の世界って?」
「あー……、そうだったそこからだった…。」
思わず遠い目になったヨルをジト見て、先を促す。
「えーと……、キミはさ、ここじゃないところから来たんだっていうのは話したよね。巻き込まれたっていうのも……。」
するとヨルは何かを思い出したのか
ごめん。と私に謝る。
そういえば以前聞いた時は異界というだけでどういうとこなのかも聞いてなかった。
馴れ初めやら、聞いたことはあるのだけれど、なんとなくピンとこない上に、その世界とやらの私の記憶は未然、一欠片も戻らないままだ。
(なんだか私の事じゃない話してるみたい…。)
けれど彼は、澄んだ夜色は暗くにごって何処かもの悲しげだ。嘘を言ってる訳ではないらしい。
「っと、こんな場合じゃない!早くしないと!」
確かに……、と煮え切らない頭を振って、手が止まっていた物色を再開した。
「こ、これは……??」
それは青色の宝飾のついたナイフのようなもので。
「ナイフ?間合い短くない??大丈夫?」
「た、多分…。」
武器って重いのか……。と感心、慄いてる私にヨルは「そんなんで大丈夫?」と訝しげに見てきた。震えるのは仕方ないじゃないか。怖いものは怖い。なにしろ初めて触るのに、これからこれで命を奪ってしまうかもしれないのだ。
ヨルはどうやら爪型の武器を手に取ってた。
めちゃくちゃ様になってるんだけど何なの?慣れてるの??あ、ちがうの?そう…。
チェーンみたいなベストもあったからそれも付けてみる。それなりに様になってるといいな。ワンピースの下だから分からないけど。
「いくよ。心の準備は出来た?」
とヨルは真剣な顔で言う。
待ってと言おうとして気づく。
ヨルの首元にある布を持つ手は微かに震えてた。
そうだ。そうだった。
ここから先は命のやり取りをするんだ。
ヨルだって怖くないはずないよね。
一歩間違えたら死が待っている。
私も。ヨルも。
私はようやく気持ちに頭が追いつき、再び怖くなった。
今更ここに来て私は、頭の中がまだ お花畑だった事を思い知った。
やらなきゃ。
深呼吸して、震える身体を無理やり押さえつける。こうでもしないと頭が身体に持ってかれそうだ。
虚空に相手を思い浮かべて睨みつける。その眼差しには、勢いこそないけれど、威勢を表に出すには充分だった。
武器も、防具も、作戦も作った。
素人みたいなそんな拙いものだけど縋れるものはこれしかない
(ケルビムさん、待っててね)
大切な人を助けるために。私達は作戦を開始した。
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