10 / 21
何とかを探して三千里とはよく言ったものだ
もう既に終わったこと。だと思ってた
しおりを挟む
重々しくなってしまった雰囲気の中、ライオンの人はゆっくりと語り出した。
……。
「奴はどこだ!!」
探し出せ!!等との怒号が轟くその空間。
何故こんなことになったのか。私は1人の人物を思い描いていた。
猫族の中唯一黒の毛皮を持つ女人、その者は凪と言った。
この世界はひとつの大陸しかなく、昔は弱肉強食等という概念もあったそうだが、
魔法というものが生まれてしばし、この大陸全体がなにかの影響なのか一定を過ぎると歳を取らなくなるという不思議な空間へと変貌を遂げたのだが。
そのつまらない空間へ迷い込んだ花と言うべきか。気さくでどんな動物からも好まれていた。その見た目の安らぎに私も惹かれかけたものだ。
その凪が禁忌である空間を通り抜け別世界へ渡るまでは。
「何故だ…!凪…!」
「クレオール隊長!こちらには居りません!!……やはり既に遅かったのでは……?」
「なんとしてでも探し出すように。誤ってそんなことになりでもしたら余計な火種も着けられかねん……!!」
「し、しかし!あと残るは禁忌の扉のみ……!!いくら隊長と言えど、長老の許可無く開ければ最悪死刑…「黙れ!!」……!…かしこまりました。緊急事態につき、急ぎ編成致します…!」
立場上直ぐに指示できるよう持ち場を離れられぬ己を恨む。
まずい。まずいまずいまずい。
非常に不味い。
この世界の生物は歳をとらぬ他厄介なことがもうひとつ。
それは、“魔素で足りるが為に腹が空かない”事だ。
生き物というものは腹が減ることで生存本能へつながり、同じくそれを感じ
ることで強くなり、警戒心も蓄える。
だがどうだろう。
この大陸の中ではそれが必要もなく、知性のみが必要になる。もちろん犯罪などはあるが比較的統治出来ている方だと思う。
そんな者が仮にほかの大陸に向かうとしよう。
当然魔素はこの大陸にしか無い為、とてつもなく不利な状況に陥るだけにはとどまらず、
温厚に育ったその喉元に牙を立てられるのは想像に難くない。
つまりそういうことなのだ。
この国は闘争心については弱小である。
戦争になど一度なってしまえば弱者になど簡単に成り下がる。
凪がしたのは、その火種にもなり得る、何処ともしれぬ世界への接続なのだ。
どうしてそんなことが成し得るのか全ては分かりえない。しかし、時として出来てしまうことがあるのだ。
禁忌の空間とされている由縁にもなる。
……。
…。
「これが、あの忌まわしい1日。魔女の夜と呼ばれた出来事でもあり、黒を持つ者が忌み嫌われる理由だ。」
そんな…、事で。
それだけの事だった。
(けれど確かに、平和であったところに争い事が起きるのを忌み嫌うのはわかる。)
平和で平凡だった私の日常は瞬く間、ほんのつかの間の出来事で崩れ去った。
(それと、同じ事なの…かな。)
けれど、腑に落ちない事はある。
「何故、私にそれを言おうと思ったのですか。」
「匂いが…。近い匂いが貴殿からしたからだ。完全なる私の私情だな。」
私の問いに、ライオン、基クレオールはそう答えた。
「あの忌まわしい出来事は、あれで終わりだと思ったのだがな。そこに貴殿が現れた。」
……。
「奴はどこだ!!」
探し出せ!!等との怒号が轟くその空間。
何故こんなことになったのか。私は1人の人物を思い描いていた。
猫族の中唯一黒の毛皮を持つ女人、その者は凪と言った。
この世界はひとつの大陸しかなく、昔は弱肉強食等という概念もあったそうだが、
魔法というものが生まれてしばし、この大陸全体がなにかの影響なのか一定を過ぎると歳を取らなくなるという不思議な空間へと変貌を遂げたのだが。
そのつまらない空間へ迷い込んだ花と言うべきか。気さくでどんな動物からも好まれていた。その見た目の安らぎに私も惹かれかけたものだ。
その凪が禁忌である空間を通り抜け別世界へ渡るまでは。
「何故だ…!凪…!」
「クレオール隊長!こちらには居りません!!……やはり既に遅かったのでは……?」
「なんとしてでも探し出すように。誤ってそんなことになりでもしたら余計な火種も着けられかねん……!!」
「し、しかし!あと残るは禁忌の扉のみ……!!いくら隊長と言えど、長老の許可無く開ければ最悪死刑…「黙れ!!」……!…かしこまりました。緊急事態につき、急ぎ編成致します…!」
立場上直ぐに指示できるよう持ち場を離れられぬ己を恨む。
まずい。まずいまずいまずい。
非常に不味い。
この世界の生物は歳をとらぬ他厄介なことがもうひとつ。
それは、“魔素で足りるが為に腹が空かない”事だ。
生き物というものは腹が減ることで生存本能へつながり、同じくそれを感じ
ることで強くなり、警戒心も蓄える。
だがどうだろう。
この大陸の中ではそれが必要もなく、知性のみが必要になる。もちろん犯罪などはあるが比較的統治出来ている方だと思う。
そんな者が仮にほかの大陸に向かうとしよう。
当然魔素はこの大陸にしか無い為、とてつもなく不利な状況に陥るだけにはとどまらず、
温厚に育ったその喉元に牙を立てられるのは想像に難くない。
つまりそういうことなのだ。
この国は闘争心については弱小である。
戦争になど一度なってしまえば弱者になど簡単に成り下がる。
凪がしたのは、その火種にもなり得る、何処ともしれぬ世界への接続なのだ。
どうしてそんなことが成し得るのか全ては分かりえない。しかし、時として出来てしまうことがあるのだ。
禁忌の空間とされている由縁にもなる。
……。
…。
「これが、あの忌まわしい1日。魔女の夜と呼ばれた出来事でもあり、黒を持つ者が忌み嫌われる理由だ。」
そんな…、事で。
それだけの事だった。
(けれど確かに、平和であったところに争い事が起きるのを忌み嫌うのはわかる。)
平和で平凡だった私の日常は瞬く間、ほんのつかの間の出来事で崩れ去った。
(それと、同じ事なの…かな。)
けれど、腑に落ちない事はある。
「何故、私にそれを言おうと思ったのですか。」
「匂いが…。近い匂いが貴殿からしたからだ。完全なる私の私情だな。」
私の問いに、ライオン、基クレオールはそう答えた。
「あの忌まわしい出来事は、あれで終わりだと思ったのだがな。そこに貴殿が現れた。」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
俺と幼女とエクスカリバー
鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。
見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。
最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!?
しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!?
剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる