上 下
4 / 21
1章 私が彼に出会うまで。

私の好物がチョコなので。

しおりを挟む
薄ら寒く感じる空気の中、雑木林ぞうきばやし近くのうちの庭に子猫が転がっていた。



足をやってしまっていた様で上手く立てないみたいだ。体も酷くやせ細っている。
目は開かずのままだが、かろうじてたまに鳴いている。……けれど。



「どうしよう……。こんな時間に診療所やってない……!!」


私は動物が好きでふわふわでありながら知的な猫は特に気に入っていた。
……犬派に喧嘩けんかは売ってませんよ……??


ゲフンゲフン。話を戻して。

そう。田舎は出張しゅっちょう動物病院なんて便利な物など存在しない。そして経営者がご老体ろうたいな為に、いんを閉める時間ですら早い。

放置して何もせずにいれば死んでしまう子猫を見て、どうして見捨てられようか。

動物なんて憧れはあれども扱ったことなど無い。迷いは多少あったけれど命の前では無意味だと自分を一喝いっかつして、必要なものを用意した。

幸い、救急道具は揃っているし、ネットで調べれば推奨すいしょうこそされないが、牛乳を薄めれば与えていいと書いてあったのでそれを参考にする。

栄養はどうしたらいいか、とりあえず昔に習ってをあげてみることにする。推定すいてい生後2ヶ月ほどで誤飲も気になるからすり潰さなければならないが。

ああ、どうか死なないで……。
そんな思いで数日を過ごした。

院に見せたら幸いなことに感染症にはかかっておらず、栄養失調と前足の怪我けがさえどうにかなれば元気になる。との事。

私は人知れず緊張していたらしい。
それを聞いてほっと胸を撫で下ろしたのだから。

そこから、子猫が私に懐いてしまった。

すりすりと私の足に擦り寄る姿はとても小さく踏んでしまわないか不安になるほどはかなくて、なんとなく。

ふと何となくだったけれど。
その子猫は居場所を探し彷徨っさまよ ているように見えたのだ。

「……おまえ、家にこのまま居るかい?」



……いや、猫に何言ってるんだとは思っているよ。むしろ何様だとかさ。

話していると、あまりにもその猫の瞳が真剣なんだ。
通じているように見えても仕方ないと思うの。

結果はどうか分からないが、猫は小さくポテッとお座りをしてにゃあ。と一声鳴いた。

そこから自分とその1匹の短くも長いの関係は始まった。


「名前……名前どうするか……」

チョコっぽい色だし……。

「うーん……チョコ……、トリュフ……ゴマだんご……いや、しっくり来ない……。」

名付けを考えている最中に疲れたのか眠りこけた子猫を見ながら、その顔を観察する。

……なんか凛々しいな。うん。

「お前の名前は、今日からカカオだよ。私は仁海ひとみ!宜しくね。」

そう言って軽くあごをくすぐった。


……名付けてすぐ、呼ぶ機会なんて早々に無くなってしまったのだけれど……。


彼の名前はになった。


꙳★*゚꙳★*゚꙳★*゚。。°°。。ヘ(。`・з・)_。。


さてさてさて!
やっっと本編序盤に入ります!!

主人公食いしん坊なのかな……名前が全部食べ物……。

短編では描かれていない描写やドシリアス爆弾!そしてちゃっかり考えていたもうひとつのルート等など、たっっくさん盛り込んでいきますよぅ!!(。=`ω´=)ふん!♬︎
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...