上 下
2 / 21
1章 私が彼に出会うまで。

え?

しおりを挟む

東京に上京じょうきょうしてまもなく、私に一通の着信が届いた。

予想もしてない内容だったけれど、私は何の気なしにそれをとってしまったんだよね。

「……え?祖母が?」

それは、あまりにも突然の知らせで、東京の住居じゅうきょを飛び出して、田舎へトンボ帰りするきっかけにもなった出来事である。









私には物心着いた頃に両親など居なくて、その頃から、祖母が私にとっての母だった。



女手1つで私を成人まで育ててくれて、本当に感謝をしてるんだ。東京に来た今回だって、大手を振って見送ってくれて。

そんな祖母が、空へ旅立ってしまったという報せしらせだった

どうしてなんて言葉なんて出なかった。何も考えられないモヤのかかった頭で。
私は戻った。祖母と暮らした家へ。

もともと親類などはなく、祖母と私だけだったので、亡くなってすぐ見つけられなかったそうで、短くても、1日後の発見になったらしい。

布団で静かに横たわっていたんだそうだ。

一日とは言えど、たった一人でいたのはどんなに寂しかったことだろう。

幸い、腐敗などはしていなくて、きれいなままだったのが救いと思えばいいのか。

なんにせよ。私は天涯孤独てんがいこどくとなってしまった。

眠った祖母を見て、なんだか今更ながら怖くなって泣いてしまった。

だって親類など居なくて、両親もいないのだ。

唯一見た祖母の白い顔は、胸が握り潰される気分だった。

(祖母は昔から地元の人たちとは必要以上は距離を取っていて、私はそれが不思議だった。)

遺書は例外なくあって

要約すると、家を譲ることと、遺産は少しだけど使ってねと書いてあった。

10日ほどして通夜が終わり、譲り受けた我が家で暮らすべく、住んでわずかの東京の賃貸ちんたいを引き払った。





数時刻後。

1面緑と茶色の景色を見て私は故郷へ戻ったのだと実感したのだった。、


テクテクという軽快な足取りで、辺りを練り歩く。

歩いている時、よく昔祖母に手を引かれ、散歩をしていたなと思い出しながら。




田舎なこともあってかなかなかに自然界が強い地域で、よく野良の猪や、熊、はたまた人馴れしていない野犬などが注意されている。

とはいっても、林に近づかなければほとんどの危険は回避かいひされるのだけれど、子供等は、念の為 親と一緒にいる、という事がこの村では風習になりつつあった。

それだったので村中あちこちに私と祖母の記憶が落ちている。

(あそこの沢で魚を覗き込んでは夢中になりすぎて落ちそうになったな)

とか

(あの辺のシロツメクサのなる原っぱで花かんむりを祖母にプレゼントしたっけ、)

とか。



まだまだ四十九日は続いているし、やることも沢山ある。


それでも、今だけは、とセンチになりながらも、思い出の中の祖母と語り合いながら私は家に向かったのだった。






✩°。⋆⸜(*˙꒳˙*  )⸝✩.*˚✩.*˚✩.*˚

段々とこの村の背景が見えてきたなぁー。

ちなみに思い出の中で大半が祖母に怒られているヒロインちゃんでした。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

処理中です...