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たろちゃん
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目が覚めると、彼の茶色の髪がまず目に入ってくる。その柔らかな髪を優しく撫でると、彼は眠そうに目を擦りながら「おはよう」と囁くのだ。
甘い響きに耳がくすぐったくて、お返しに彼の頬に唇を寄せる。
まどろみの中私たちはお互いをきつく抱きしめ、そして再び目を閉じる。目覚ましがなるまで、もう少しだけこのままで……と思いながら。
この瞬間が何より一番幸せだった。彼の腕の中に包まれる、この瞬間が……。
※
ルルルルル…………ルルルルル…………
せっかくの休日だといいのに、目覚まし以外の音で目が覚めた。ベッドの傍らには脱いだ衣服が散らばっている。
ガンガンと痛む頭で昨夜のことを思い出し、納得した。
そういえば、京子さんと梨花と三人で焼肉食べに行って、浴びるほどお酒を飲んだんだっけ──。
途中で記憶をなくしたのか、部屋に帰ってきたことは覚えていないが、この様子じゃ洋服を脱いで即ベッドにダイブしたのだろう。
鳴り止まない電話の音にイラつきながらも、ベッドから降りた。これがなければずっと寝ていたのに。
何気なく頬を触ると、濡れていた。たった一筋、まるで涙を流した跡みたい。悲しい夢でも見たのだろうか。残念ながら、夢の内容は覚えていなかった。
「……もしもし」
寝起きのせいかお酒のせいか、ガサガサな声で電話に出た。でも別にどうでもいい。固定電話《こっち》に電話をかけてくるような人は、変な営業か母だからだ。
『もしもし? 千春?』
案の定、かけてきたのは母だった。
「……そうだけど、今度はなに? こんな朝っぱらからいちいち電話してこないでよ」
頭痛が最高潮に達して、母への返答も冷たくなる。
『ごめんね……あんた、メール見てくれないからさぁ……』
メール……。そういえば、ここ何日もスマホを手にしてなかったっけ。心配して電話を寄越した母に対して苛立ちをぶつけたことが、申し訳なくなる。
「いいけど……どうしたの?」
『あのね、この前あんたに言い忘れたことがあったのよ……ほら、あんた急に走り出しちゃったから話せなくって』
「言い忘れたこと?」
『うん……あのね……そのぉ……』
なんだか急に歯切れが悪くなる。でも今度はイラついたりしない。母はたっぷり数秒かけて、やっと次の言葉を発した。
『私ね、あんた……千春が、その……タロウ君と付き合っていること、知ってるのよ』
母の口から出たその名前に、頭のてっぺんからつま先までピシリと固まった。
「な……な……何言って……」
『ごめんね、意味がわからないわよね。あんたにちゃんと言っておくべきだった……』
その声色から、電話の向こうでしょげているのがわかる。
「どういうこと……?」
『あのね……』
母はゆっくりと慎重に、言葉を選びながら語り始めた。事の顛末はこうだった。
始まりは、一通の手紙。これは、私が父の部屋で偶然見た、あの手紙のことだ。
その手紙が母宛てに送られてきたのが、ちょうど一年前のことだという。母はその内容を見て驚いた。それもそのはずだ、母にとっては父の不倫事件は既に過去の出来事であり、まさか女の息子から手紙が届くとは思っていなかったからだ。
しかも、息子は私に近づくとまで書いてある。
はじめは誰かのイタズラだと思った。けれど、少し経って気になってきたので、私に荷物を送るていで、こっそり手紙をダンボールに入れた。
『何か変わったことはありませんか』という手紙だ。
その手紙を見た私から連絡があったので、ひとまずホッとした。と同時に、『なんだ、あの手紙はやっぱりイタズラじゃないか』と思ったそうだ。
『でもね……』
母の声に、一瞬力が入った。
『あの日……一ヶ月ほど前に、家に男の人が来たのよ』
一ヶ月前……──。たしか、おばちゃんもそんなことを言っていたような気がする。あれ? ちょっと待って……?
「ね、ねぇ! それ、いつなの?」
『え?』
「何月何日のこと?」
『そうねぇ……二月……十日だったかしら……』
やっぱり──。
その日は私がマリコさんの所へ行った日だ。つまり、たろちゃんが『大事な用がある』と言って出かけた先は、家だったということか……。
「それで、どうしたの?」
私は先をせがんだ。たろちゃんの『大事な用』が何か気になったのだ。
『すごく、綺麗な男の人でね。うちになんの用ですか? って聞いたら、いきなり頭を下げて『すみませんでした』って……』
謝罪? 何に対して……?
『ビックリしたわよ。何も言えなかった。そしたら彼『手紙を送ったのは僕です』って。よく見たら、たしかにあの女によく似てるじゃない。だから私、あの手紙に書いてあったことは本当だったんだって思ったの……。急に怖くなってね、あの人……お父さんを呼んだのよ』
二人の間に沈黙が流れる。
父を呼んだってことは……まさか、父の骨折って……。
『お父さんね、彼を一目見てあの女の息子だってわかったみたい。『おまえ……』そう呟いた後、わなわな震えだして、その場にうずくまったわ。それで一言『すまなかった……』って』
「謝ったんだ……」
『そう。あんなに震えるあの人、初めて見たわ。私に不倫がバレた時だって、開き直ってあっけらかんとしていたのにね』
電話の向こうで、乾いた笑いが聞こえた。もしかしたら、父にとって『たろちゃん』は脅威の存在だったのかもしれない。いつか復讐に来るのではないかと、ずっと考えていたのだろう。そのくらい、父は、向こうの家族に酷いことをしたんだ。
『震えるお父さんの元へ、彼はゆっくり近づいていったの。そしたらお父さん、『許してくれなんて言わない。だけど、妻と娘は助けてやってくれ! 俺は好きなようにしていいから! ほら、殴れ! 気が済むまで殴ってくれ!』そう叫んだわ』
「まさか、たろちゃん……お父さんを殴って……それで……」
そんな恐ろしい予想を払拭するかのように、母がふふふと笑った。
『それがねぇ……彼、なんて言ったと思う?』
「え……わかんないよ……なに?」
ドキドキしながら母の返答を待った。母の息を吸う音が、電話口から聞こえてきた。
『そんなことしても誰も幸せになんかなれない。僕はわかったんです。彼女と過ごすうちに、復讐なんかしても仕方ないって』
「たろちゃん…………」
『そしてこう付け加えたわ。『千春さんを傷つけることは、もうしたくないんです。彼女を、愛しているから……』って』
「は……──」
何を、言っているんだろう。目の前が急にチカチカしてきた。
『なんでもタロウ君、確執があると千春と向き合えないからって、わざわざ復讐を企てたことを謝りに来たらしいのよ。だから私ね、なんだかよくわからないけど上手くいったんだわーと思って、ふふ。昔のことならお母さん気にしないから、ね? あんたが好きなら結婚でもなんでもしてちょうだい……って千春? 聞いてる?』
母のお喋りがどんどん遠くなる。
激しい耳鳴りで何も聞こえない。『愛している』? 嘘だよ、嘘ばっかり。じゃあなんで、あの時弁解しなかったの? なんであの時、私を置いて出ていったの?
わかんないよ。どのたろちゃんが本当なの?
『ねぇ、千春?』
母の低い声でハッと我に返った。
『あの手紙、あそこに置いておくように言ったのは、タロウ君なのよ?』
え……──?
「どういうこと……? なんで……?」
『なんでかはわからないけど……』
「じゃあ、そっちに行くことになったのも……」
『タロウ君が言ったのよ。呼び寄せてくれって』
なんなの。何が起こってるの──。
『それでね、もしあんたがあの手紙を読んだようなら伝えて欲しいことがあるって、伝言を預かってるのよ』
「なに……それ……」
どういうこと? つまり、あの手紙を私が読むことを、たろちゃんは予測していたということ? なにそれ……なんで、責められるように自ら誘導するの?
『『二十二日の八時に、八チャンを見て』って』
「全然……意味がわからないんだけど……」
『いい? 伝えたからね? タロウ君と早く仲直りするのよ?』
「……もう、遅いよ……」
ぼそりと呟いた言葉は、母に届いただろうか。『喧嘩』なんて、そんな可愛いものじゃない。たとえ今聞いたことが本当だとしても、私たちはもう終わったんだ。
「……ねぇ、それより、お父さんの骨折ってなんだったの?」
『ああ! あれねー、ふふふっ……お父さん、土下座したあと体が固まって動かなくなっちゃって……それをタロウ君が引っ張って立たせてあげたら……グキっとやっちゃったのよ』
「はぁ?」
『ギックリ腰よ。でも手術もして一ヶ月も入院してたんだから、結構ひどかったのよー?』
急に体から力が抜けていく。
喧嘩で骨折は嘘だったというわけだ。どうりであのおばちゃんが、一番のスキャンダルであろうこの話を口にしなかったわけだ。
母が考えそうなことだ。概ね、たろちゃんから家に呼び寄せるように言われて、咄嗟に思いついたのだろう。馬鹿らしくてため息も出ない。
いつの間にか切れていた電話を、元に戻す。
心にひっかかるのは、たろちゃんのその行動だ。なんで私に手紙を見つけさせたんだろう。見なかったら、なんの問題もなく関係を続けられたかもしれないのに。
それに、問い詰めた時の反応も不可解だった。わざと挑発するような……まるで私を怒らせたかったとでもいうような……。
わからない。これ以上考えるだけ、無駄だ。
思えば、たろちゃんの行動にはいつも悩まされたっけ。わかりにくくって、おまけにすぐはぐらかして……。いつもいつも、ハラハラしっぱなしだった。でも大概、考えなしの行動だったりするんだよね。
……でも、『愛してる』なんて嘘は、ついてほしくなかったな……。
久しぶりにスマホを持つと、真っ先にカレンダーをタップした。
『二十二日の八時、八ちゃんねる』
指が勝手に、そう入力していた。
甘い響きに耳がくすぐったくて、お返しに彼の頬に唇を寄せる。
まどろみの中私たちはお互いをきつく抱きしめ、そして再び目を閉じる。目覚ましがなるまで、もう少しだけこのままで……と思いながら。
この瞬間が何より一番幸せだった。彼の腕の中に包まれる、この瞬間が……。
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ルルルルル…………ルルルルル…………
せっかくの休日だといいのに、目覚まし以外の音で目が覚めた。ベッドの傍らには脱いだ衣服が散らばっている。
ガンガンと痛む頭で昨夜のことを思い出し、納得した。
そういえば、京子さんと梨花と三人で焼肉食べに行って、浴びるほどお酒を飲んだんだっけ──。
途中で記憶をなくしたのか、部屋に帰ってきたことは覚えていないが、この様子じゃ洋服を脱いで即ベッドにダイブしたのだろう。
鳴り止まない電話の音にイラつきながらも、ベッドから降りた。これがなければずっと寝ていたのに。
何気なく頬を触ると、濡れていた。たった一筋、まるで涙を流した跡みたい。悲しい夢でも見たのだろうか。残念ながら、夢の内容は覚えていなかった。
「……もしもし」
寝起きのせいかお酒のせいか、ガサガサな声で電話に出た。でも別にどうでもいい。固定電話《こっち》に電話をかけてくるような人は、変な営業か母だからだ。
『もしもし? 千春?』
案の定、かけてきたのは母だった。
「……そうだけど、今度はなに? こんな朝っぱらからいちいち電話してこないでよ」
頭痛が最高潮に達して、母への返答も冷たくなる。
『ごめんね……あんた、メール見てくれないからさぁ……』
メール……。そういえば、ここ何日もスマホを手にしてなかったっけ。心配して電話を寄越した母に対して苛立ちをぶつけたことが、申し訳なくなる。
「いいけど……どうしたの?」
『あのね、この前あんたに言い忘れたことがあったのよ……ほら、あんた急に走り出しちゃったから話せなくって』
「言い忘れたこと?」
『うん……あのね……そのぉ……』
なんだか急に歯切れが悪くなる。でも今度はイラついたりしない。母はたっぷり数秒かけて、やっと次の言葉を発した。
『私ね、あんた……千春が、その……タロウ君と付き合っていること、知ってるのよ』
母の口から出たその名前に、頭のてっぺんからつま先までピシリと固まった。
「な……な……何言って……」
『ごめんね、意味がわからないわよね。あんたにちゃんと言っておくべきだった……』
その声色から、電話の向こうでしょげているのがわかる。
「どういうこと……?」
『あのね……』
母はゆっくりと慎重に、言葉を選びながら語り始めた。事の顛末はこうだった。
始まりは、一通の手紙。これは、私が父の部屋で偶然見た、あの手紙のことだ。
その手紙が母宛てに送られてきたのが、ちょうど一年前のことだという。母はその内容を見て驚いた。それもそのはずだ、母にとっては父の不倫事件は既に過去の出来事であり、まさか女の息子から手紙が届くとは思っていなかったからだ。
しかも、息子は私に近づくとまで書いてある。
はじめは誰かのイタズラだと思った。けれど、少し経って気になってきたので、私に荷物を送るていで、こっそり手紙をダンボールに入れた。
『何か変わったことはありませんか』という手紙だ。
その手紙を見た私から連絡があったので、ひとまずホッとした。と同時に、『なんだ、あの手紙はやっぱりイタズラじゃないか』と思ったそうだ。
『でもね……』
母の声に、一瞬力が入った。
『あの日……一ヶ月ほど前に、家に男の人が来たのよ』
一ヶ月前……──。たしか、おばちゃんもそんなことを言っていたような気がする。あれ? ちょっと待って……?
「ね、ねぇ! それ、いつなの?」
『え?』
「何月何日のこと?」
『そうねぇ……二月……十日だったかしら……』
やっぱり──。
その日は私がマリコさんの所へ行った日だ。つまり、たろちゃんが『大事な用がある』と言って出かけた先は、家だったということか……。
「それで、どうしたの?」
私は先をせがんだ。たろちゃんの『大事な用』が何か気になったのだ。
『すごく、綺麗な男の人でね。うちになんの用ですか? って聞いたら、いきなり頭を下げて『すみませんでした』って……』
謝罪? 何に対して……?
『ビックリしたわよ。何も言えなかった。そしたら彼『手紙を送ったのは僕です』って。よく見たら、たしかにあの女によく似てるじゃない。だから私、あの手紙に書いてあったことは本当だったんだって思ったの……。急に怖くなってね、あの人……お父さんを呼んだのよ』
二人の間に沈黙が流れる。
父を呼んだってことは……まさか、父の骨折って……。
『お父さんね、彼を一目見てあの女の息子だってわかったみたい。『おまえ……』そう呟いた後、わなわな震えだして、その場にうずくまったわ。それで一言『すまなかった……』って』
「謝ったんだ……」
『そう。あんなに震えるあの人、初めて見たわ。私に不倫がバレた時だって、開き直ってあっけらかんとしていたのにね』
電話の向こうで、乾いた笑いが聞こえた。もしかしたら、父にとって『たろちゃん』は脅威の存在だったのかもしれない。いつか復讐に来るのではないかと、ずっと考えていたのだろう。そのくらい、父は、向こうの家族に酷いことをしたんだ。
『震えるお父さんの元へ、彼はゆっくり近づいていったの。そしたらお父さん、『許してくれなんて言わない。だけど、妻と娘は助けてやってくれ! 俺は好きなようにしていいから! ほら、殴れ! 気が済むまで殴ってくれ!』そう叫んだわ』
「まさか、たろちゃん……お父さんを殴って……それで……」
そんな恐ろしい予想を払拭するかのように、母がふふふと笑った。
『それがねぇ……彼、なんて言ったと思う?』
「え……わかんないよ……なに?」
ドキドキしながら母の返答を待った。母の息を吸う音が、電話口から聞こえてきた。
『そんなことしても誰も幸せになんかなれない。僕はわかったんです。彼女と過ごすうちに、復讐なんかしても仕方ないって』
「たろちゃん…………」
『そしてこう付け加えたわ。『千春さんを傷つけることは、もうしたくないんです。彼女を、愛しているから……』って』
「は……──」
何を、言っているんだろう。目の前が急にチカチカしてきた。
『なんでもタロウ君、確執があると千春と向き合えないからって、わざわざ復讐を企てたことを謝りに来たらしいのよ。だから私ね、なんだかよくわからないけど上手くいったんだわーと思って、ふふ。昔のことならお母さん気にしないから、ね? あんたが好きなら結婚でもなんでもしてちょうだい……って千春? 聞いてる?』
母のお喋りがどんどん遠くなる。
激しい耳鳴りで何も聞こえない。『愛している』? 嘘だよ、嘘ばっかり。じゃあなんで、あの時弁解しなかったの? なんであの時、私を置いて出ていったの?
わかんないよ。どのたろちゃんが本当なの?
『ねぇ、千春?』
母の低い声でハッと我に返った。
『あの手紙、あそこに置いておくように言ったのは、タロウ君なのよ?』
え……──?
「どういうこと……? なんで……?」
『なんでかはわからないけど……』
「じゃあ、そっちに行くことになったのも……」
『タロウ君が言ったのよ。呼び寄せてくれって』
なんなの。何が起こってるの──。
『それでね、もしあんたがあの手紙を読んだようなら伝えて欲しいことがあるって、伝言を預かってるのよ』
「なに……それ……」
どういうこと? つまり、あの手紙を私が読むことを、たろちゃんは予測していたということ? なにそれ……なんで、責められるように自ら誘導するの?
『『二十二日の八時に、八チャンを見て』って』
「全然……意味がわからないんだけど……」
『いい? 伝えたからね? タロウ君と早く仲直りするのよ?』
「……もう、遅いよ……」
ぼそりと呟いた言葉は、母に届いただろうか。『喧嘩』なんて、そんな可愛いものじゃない。たとえ今聞いたことが本当だとしても、私たちはもう終わったんだ。
「……ねぇ、それより、お父さんの骨折ってなんだったの?」
『ああ! あれねー、ふふふっ……お父さん、土下座したあと体が固まって動かなくなっちゃって……それをタロウ君が引っ張って立たせてあげたら……グキっとやっちゃったのよ』
「はぁ?」
『ギックリ腰よ。でも手術もして一ヶ月も入院してたんだから、結構ひどかったのよー?』
急に体から力が抜けていく。
喧嘩で骨折は嘘だったというわけだ。どうりであのおばちゃんが、一番のスキャンダルであろうこの話を口にしなかったわけだ。
母が考えそうなことだ。概ね、たろちゃんから家に呼び寄せるように言われて、咄嗟に思いついたのだろう。馬鹿らしくてため息も出ない。
いつの間にか切れていた電話を、元に戻す。
心にひっかかるのは、たろちゃんのその行動だ。なんで私に手紙を見つけさせたんだろう。見なかったら、なんの問題もなく関係を続けられたかもしれないのに。
それに、問い詰めた時の反応も不可解だった。わざと挑発するような……まるで私を怒らせたかったとでもいうような……。
わからない。これ以上考えるだけ、無駄だ。
思えば、たろちゃんの行動にはいつも悩まされたっけ。わかりにくくって、おまけにすぐはぐらかして……。いつもいつも、ハラハラしっぱなしだった。でも大概、考えなしの行動だったりするんだよね。
……でも、『愛してる』なんて嘘は、ついてほしくなかったな……。
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