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しおりを挟む保護者Side——
例の詐欺紛いが起きた翌日、何をする気も起きないと籠ってしまったユキを心配して、アスケナたちも別邸で待機することにした。
昨晩のうちに認めた手紙を送り届けたガエウスは安心させるように声を掛けたが、反応がなかったため、護衛数人を連れて城下を視察することにした。
多くの国民がすれ違って、行き交う道中も護衛と談話しつつ、商店区画を歩き進む。
商店区画は市場と違い、商業ギルドへ加入して、専門店や支店を持てるまでに成長した商人が加盟した者だけ店を開ける。
市場は加入後、農園や村々の商品を売るための場であり、商業ギルドの職員監修のもと、商人としての土台を築く場でもある。
商業ギルドに加盟すると、商業ギルドの傘下に入っていることと同義であるため、安全性や信用ができるというメリットがある。
加盟していると新しい事業や商品を立ち上げる際、試供品をギルドに送ることが義務付けられている。
評価次第だが、宣伝などを請け負ってもらえる。
その分、新商品などの思想や価値観を共有することに繋がり、独占販売できなくなる。
「この区画は変わらんな。商業ギルドが幅を利かせ過ぎてるんじゃねえか?商店が詰まり過ぎて、一歩外れたら別の店ってなる気しかしねぇ。」
「仕方ないでしょう。王都で店を持てるということ自体が商人にとってのステータスとなるのです。当時はどうか分かりませんが、把握できていなさそうですね。」
「いや。ここは儂が城下を冷やかしていた頃と、何も変わらないぞ。多少は店名が変わったかもしれんが、商業ギルドに加盟はしているが、お互いを敵と認識して足の引っ張り合いをしているだけだ。」
「…そうなのですか?」
「例えば、あそこの店がミスを冒すとなったら、近隣の商店がミスを宣伝して店の信用を失墜させるんだ。そして"そこの店よりウチの方が良い商品を扱ってますよ。"って顧客を奪っていくんだ。そうすると宣伝した商店に、立場の弱い商人たちが便乗して、その宣伝と原因を商業ギルドへ密告する。すると、どうなる?」
「どうなるんでしょうか?」
「ミスを冒した商店も、それを宣伝した商店も、王都から追放される。罪が重いと判断されたら、ギルドから除籍して"我々は何も知りませんよ。"という体裁を持つんだ。ここからが嫌なところでな。密告した商人に褒美として、追い出した商店を手付かずで渡すんだ。商品も店の情報も何もかもを、な。」
「本当に、足の引っ張り合いですね。」
護衛はガエウス同様、呆れ顔だった。
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