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しおりを挟む商業ギルドSide——
ここフォルスカース王国の王都に構える商人を束ねる商人ギルドでは、旅商人や屋台を出す商売人、市場で一時的にでも商品として誰かに売るものはギルドに加入しなければならない決まりが存在する。
加入手続きに費用は掛からず、売れた金額から一部を差し引かれることを了承するだけで良い。
孤島ともいえる閉鎖的な小さな大陸ではあるが、販路を多く持つ商人ギルドはどこでも重宝されている。
それは貴賤関係なく、王族にも認められるほどに信が厚い。
そんな商人ギルドに数ヶ月前、王家から打診された件はギルドにとって衝撃的なことだった。
王族が商人として、城下に下りてみたいというのだから。
それも発案者は城下で陰ながら有名な王女殿下の意向だというから、疑いたく思うのは必至だった。
宰相閣下の直印と、国王の玉璽と、国指定の特殊な書類により、半強制的に豪商という肩書きを与えた。
そして月日は流れ、王家の暗部から別邸に向かう日程を教えられ、早急に緊急会議が開かれた。
「近日中に王族が来られる。予定通り、王妃様を除く御一家が来られる予定だ。職員を総動員して、不況を買わないようにせよ。懸念事項はあるが、第一に王女殿下へ接触しないようにしろ。」
副ギルド長と書かれた木板の置かれた席の薄茶髪の女性が答える。
「了解です。あちらから声を掛けられるまでは静観すれば良いのですね?応対する分には構わないと。」
「ああ。王子様方は王女殿下を溺愛されていらっしゃるらしいからな。逆鱗に触れないに越したことはない。市場は混雑するだろうが、一応目を光らせてほしい。」
「それは例の護衛が居ても、なのね?」
現役の騎士たちである。
宰相の指示のもと、本人たちは平民に紛れている、と思い込んでいる。
実際はその洗練された動きから、周囲の平民が遠巻きにしているだけである。
「そうだ。彼らは王女殿下に内密で行動しているから、表立って行動はできない。そこをサポートするのが我々の仕事だ。」
「分かったわ。あなた方も、宜しいですね?」
『大丈夫であります!』
会議室にいた全員が席から立ち上がって、一斉に返事をする。
だが、ある情報屋から届いた急報は商業ギルドに激震を齎した。
隣から覗き見た副ギルド長も目を剥くほど驚いて思考が停止した。
"市場で内の息子に詐欺をした商人がいる。対象者を直ちに突き出せ。さすれば、何も起きないだろう。だが反故にするようであれば、こちらも考えを改める必要があるだろう。賢明な判断を求む。
ガエウス・フォルスカース"
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