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しおりを挟む王子Side——
父王ガエウスから送られた護衛を連れて、アスケナが先導をしながら歩む。
その後ろをメノア、クェサリオ、ユキが続き、真新しく感じる城下を興味津々に眺める。
買って出たものの自身の行動を不安に思いつつ、表情に出ないように工夫して先導するアスケナ。
テーブル越しに果物などを売る商売人を眺め、思案顔になるメノア。
誰から見ても分かるほどに、書店がないかキョロキョロと見回すクェサリオ。
そんな兄たちの後ろから護衛に囲まれて安全に移動するユキ。
周囲に目を光らせて近付く者を警戒し続ける護衛に扮した暗部。
そんな光景を建物の裏や陰から、こっそり様子を窺う男たちは怪しいが平民に扮している騎士たちである。
彼らはユキから城下に行きたいという願いを叶えるために、城下の平民に紛れて今日この日まで生活していた。
ただし騎士舎などのように衛生面が最小限なため、仲間である暗部でも豪商に扮する国王にも、己の不衛生さに近付かない。
過剰にも思える護衛が今、城下を覆っていた。
「ユキ。ちゃんと付いてきているか?」
「はい。アス兄様、いますよ。」
「良かった。」
「そこの坊ちゃん!」
「ん。僕のことか?」
布を売る店を横切っていると、妙齢な女性が声を掛けてきた。
「そうだよ。アンタに声掛けてるんだ。見るからにどこかの商人の連れ子かい?金持ってんなら、何か買っておいき。」
「ううん。勝手が分からないから、おすすめを見繕ってくれないか。最近来たばかりで、慣れていないんだ。」
思っていた言葉と違ったのか、声が裏返るも繕ってみせる女店主。
「そうなのかい!? じゃあ、これでも買いな。そっちの兄ちゃんが払ってくれるのかい?」
「ええ。」
護衛の一人が頷いて返答する。
「そんじゃ、この辺りかね。銅貨八枚ってとこさね。」
「これで良いか…。」
「ああ。また会ったら、何か買っておくれ。」
女店主に愛想笑いを浮かべた護衛は足早にアスケナたちを抱き上げて店舗から離れると、道から離れた先で腰を下ろした。
アスケナたち男組は急に抱き上げられて、逃げるように移動したことに困惑する。
ユキだけは先程買った布地を護衛からくすねて、触り続けている。
護衛たちは急いだせいもあるが、別の意味で汗をかいていた。
「一体どうしたんだ。市場から離れてしまったぞ?」
「申し訳ありません。先程の店舗ですが、ぼったくりに会ったようです。立ち止まった挙句、何も買わないと周囲から目立つため、買わせていただきました。」
「どういうことだ?」
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