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しおりを挟む「お待たせしました。通行証や身分証、他にもありますが、必要なものは準備できました。ホルカー魔導師長が随行されますので、道中に説明をお聞きしてください。」
宰相の言葉によって、宰相の背後からヌッと出てきたホルカーはどこにでも居そうで居ない格好をしていた。
後から聞けば、肩書きは詩人だが柄ではないらしい。
「紹介に預かりましたホルカーです。城下にはよく行くんで、よろしくお願いします。最近暇すぎて、遊び呆けてたら、宰相にお願いされたので来ました。」
「一言余計ですよ。ホルカー?」
「なんか大変だからって、酒に酔ったアンタから誓約書まで貰ってますから、ココは認めてくださいね。それから一応はユキ様の専属家庭教師もしているんで、皆様よりは城下について学があることを言っておきます。」
「それは売っているということで良いよな?」
「解釈はご自由に。ですが、王女殿下の目の前で、やりたいなら相手になりますよ?陛下。」
「ふん。分かっておるわ。」
「皆さん。くれぐれも騒動を起こさないでくださいね。貴重品は暗部が責任を持って保管しますから、スリには気をつけてください。」
「うん?スリってなぁに?」
「あぁ。なんでもないぞ、ユキ。手持ちの物を無くすなって話だ。」
「うん。わかった。」
「では行ってらっしゃいませ。」
質素な見た目の馬車に乗り込んだ一同は、気が遠くなった。
ガエウス王は数日後に溜まった仕事に。
アスケナとメノアは城下での生活に。
クェサリオは城門を見ながら、数日とは言えど読めない本に想いを込めて。
ユキは当分会えない侍女などに。
ホルカーは小言が聞かずに済む一方で、お守りをすることに。
各々、思っていることや方向性は別でも数日の生活に不安を抱えていた。
その間も本来は行動外だが、王女のために馬車が進む道の先にある障害物を物理的に排除する暗部が忙しかった。
小石などは魔法で吹き飛ばし、凸凹した地面を魔法で均し、揺れを軽減するべく小まめに馬車を引く馬を回復させ、と意外と過保護な状況となっていた。
暗部なりに気を遣っているのだろうが、派遣された人数が多いことから半数がこの行動に参加していた。
残りの半数は情報収集や城下に紛れている騎士と意思疎通などに向かっている。
暗部の本来の仕事は王族の身辺警護だが、今回は王女も乗っていることもあって、気合いを入れて多くの事をこなしている。
王城内での侍女たちによる支持率が王族の中でダントツで人気なこともあり、その影響もあって暗部でも王族の中での支持率はユキが強い。
ほとんど王城内でも隠れて仕事をしているのに、何故か王女にバレることも一因だろう。
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