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しおりを挟む城門前で集まった一同は談笑していた。
主に準備が遅れている宰相を待っている間が暇だったからだ。
城門前には、ガエウス王、アスケナ、メノア、クェサリオ、ユキ、国王専属執事、王女専属侍女長メリッサ、影に隠れた暗部だった。
「お父様。なんか新鮮だね。」
「そうだろう?宰しょ…ヴァルシェレスが用意してくれたんだ。豪商というらしい。」
「へぇ。そうなんだ!いつものお父様とはまた変わっているなぁって思ったの。」
ユキの自然な言葉に頬を緩ませるガエウス。
「そうかそうか。だが城下に出たら、"お父様"はダメだろう?好きに呼んでいいが、気をつけるんだぞ?」
「うん。"パパ"!」
普段されないパパ呼びに悶えるガエウス。
「ぐふっ。ゴホッゴホッ。そうだな。それで大丈夫…だよな?」
話しつつ不安になったガエウスは、チラッと背後にいた専属執事に心配そうに尋ねた。
「そうですな。流石に王女殿下は商会主や商会長と言われると、心身的に陛下は危ないでしょう。数日とは言えども、気を付けていただかねば。」
「分かっている。」
胸を張って自信に満ち溢れる王に、専属執事から苦言を言い渡す。
「そういうところですぞ!威張っていると王族の威厳が出るので、堪えてください。」
「はぁ…。分かっている。」
そんな光景を見ていた三人の王子たちは着なれない服装にお互い言いたい放題だった。
お互いがそれほど変わらない服装をしているにも関わらず、どうしても相手の服装を非難してしまう。
ただ宰相から気遣われた結果、豪商という多少の贅沢も許容される枠入れをされただけである。
「アス兄も。サリオも。可笑しい服だな!」
「僕たちはそう変わらないだろう。ノアお前も同じだろう?何を競っているんだ。」
「…アス兄も。…ノア兄も。…うるさい。」
「でも良かったな。名前まで変えるって言われた時は困惑したけど、僕たちが普段から使っている渾名で良いって言ってくれて。」
「「そうだね。」」
「ただ父上のことを別の言い方にしないといけないのは面倒だったけど。」
「「それな。」」
宰相の方針によって、父上呼びは城下で使われることが珍しい部類で、多くは貴族や没落貴族が使っているため避けるように言われていた。
商会や豪商など商いで店を構える者たちの中で家庭を築いている一部は、父親を"親父殿"や"主様"と呼ぶらしい。
呼び慣れるまで反芻を繰り返した結果、"親父殿"一択に決められた。
ーーバンッ
そう会話をしていると、宰相がやってきたのだった。
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