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しおりを挟むある日、食堂で一同が会して食事をしていると、ユキが行きたいと願い出た場所があった。
それは城下だった。
二つ返事で許可を出されたユキはウキウキ気分で侍女を伴って退出すると、王と王子との相談会で平民のフリをさせて騎士を送り込むことにした。
この場に王妃はいなかった。
以前の出来事がショックだったのか、離宮から一切外に出ることもなくなり、忘れ去ったかのようにユキの周辺どころか、王の側にも近寄らなくなっていた。
全てのことを離宮で過ごしているらしい。
離宮は男性禁制であるため、執事も王子も入れず、本来は許可の必要がない王も門前で拒否されているため状況が分からないままだった。
城下へ向かう準備を終えたユキだったが、城下を知る専属執事によって服装を改善することが決定された。
ただ姿見を城下で知れ渡っているため、服装や装飾を改善してもあまり意味はないのだが。
王子も基本的に王城内で過ごしてきたため、城下を見聞でしか知らず、徹底的にランク下げを矯正されることとなった。
得気だった王は何年も城下に下りなかったせいもあって城下の流行が一層変わっているため、王に合う服装で現在の流行へシフトされることになった。
その結果、ユキが願い出てから数十日の準備期間が必要となり、城下へ行く日にはかなりの日数が必要と判断された。
更に数少ない友好的な他国の商隊や使節団が来訪したため、安全のために延期が続いたことも含まれている。
完全には無理だが、言葉遣いや思想の違いを専属執事が教鞭を奮って教え込んだ。
王城内の侍女や執事、護衛騎士や、それ以外の役人や職人は大半が貴族に連なるので、城下の知識にはめっぽう弱かった。
城下にある商会や職人は基本的に王城へ招待した上で、侍女たちが購入していたり、宰相が行なっているため、生活などへの関心があまりに低いこともあった。
最終的に、全てを終わらせた頃には王城内の生活に戻れるかどうか分からない程に退化したような、王族たちが出来上がった。
肩書きは急造で作られた豪商の権利書となった。
身元保証人は、王城に勤める騎士団員の名前になっているが、実際は宰相自身である。
問題が起きても王家が保証しているため問題はないが、城下の平民にと違う価値観がここに存在していた。
王族の保証人…宰相にとっては簡単なことで最上の人選のつもりであったが、城下の平民にとっては王家が保証するイコール問題が起きれば豪商優位で劣勢となる平民が処罰されるという意味合いとなる。
ここは専属執事がチェックしなかったことが問題でもあった。
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