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しおりを挟む王子Side——
「…二人とも少しは本を読んでみたら?」
「ううん。なんか本を読むと眠くなるんだよなぁ。メノアは?」
「僕もだよ。そもそもなんで、クェサリオは本が好きになったんだ?」
「…僕は。…その。」
「「ん?」」
アスケナとメノアに見つめられ続けたクェサリオは動揺する。
言葉に表したいが、頭の中がグルグル混乱して上手く答えられなかった。
それでも聞き返してくる二人に絞り出すように呟く。
「…えっと。…上手く…言えないんだけど。知りたいことがあって…調べてたら、いつからか好きに…なったんだよ。だから何がって言われても、…今は言えないかな。」
「クェサリオは外に出たがらないからな。食事以外で話すことも、ユキが産まれた前まで皆無だったしな。」
「そうだね。アス兄。」
「まぁ。今度その司書を紹介してくれ。なんとか読んでみるから。」
「僕はまだだけどさ。アス兄もクェサリオも文字読めるの?」
「あ?僕は第一王子だからって、文字や読み方はすぐに教わったぞ。」
「…僕は侍女に頼み込んで、少しずつ習ったからね。ただ文字は苦手だって言われて、練習してるところだよ。」
「そうなんだ。」
納得しているメノアだが、クェサリオは別として本来ならメノアも学び終え、知っていても可笑しくない。
ただ遊び呆けすぎた結果、少ない文字が読めるだけで、大半は読めずに過ごしてきていた。
そのため、あまり危機意識は持ち合わせていなかった。
その後、食堂で待っていても一向に来ないユキに心配になり、侍女に相談し始めていると。
食堂の扉から国王の専属執事が言伝を伝えにやってくる。
「本日より数日は食事を共にできない。との、王女殿下の言伝にございます。」
「何かあったのか?コロシアムで実は怪我でも負ったんじゃないだろうな!?」
「えっ。元気そうだったけど、怪我してたの?」
「心配はご無用でございます。王女殿下は怪我も何も負ってはおりません。ただ陛下と二人で食事会を開きたいとの仰せで、こちらに参られないとのことでございました。」
「だが数日も離れる必要はないんじゃないのか。他に何か言ってなかったのか?」
「そうでございますね。陛下がお疲れの様子なので、介抱してあげたいとも言っておられました。」
「では仕方ないな。ユキの我が儘くらい聞いてあげねば。」
「でもそれまで一緒に居れないのか…。」
「では失礼いたします。」
専属執事が退出すると、アスケナとメノアは相談というより悪巧みを始めた。
クェサリオだけは二人と違い、黙々と給仕が配膳する食事をしているため、会話に混ざることなく耳を傾けている。
侍女たちは王子たちの会話を何も聞かなかったことにして、壁際で空気に徹していた。
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