上 下
15 / 31

14

しおりを挟む

王子Side——

「…二人とも少しは本を読んでみたら?」

「ううん。なんか本を読むと眠くなるんだよなぁ。メノアは?」

「僕もだよ。そもそもなんで、クェサリオは本が好きになったんだ?」

「…僕は。…その。」

「「ん?」」

アスケナとメノアに見つめられ続けたクェサリオは動揺する。
言葉に表したいが、頭の中がグルグル混乱して上手く答えられなかった。
それでも聞き返してくる二人に絞り出すように呟く。

「…えっと。…上手く…言えないんだけど。知りたいことがあって…調べてたら、いつからか好きに…なったんだよ。だから何がって言われても、…今は言えないかな。」

「クェサリオは外に出たがらないからな。食事以外で話すことも、ユキが産まれた前まで皆無だったしな。」

「そうだね。アス兄。」

「まぁ。今度その司書を紹介してくれ。なんとか読んでみるから。」

「僕はまだだけどさ。アス兄もクェサリオも文字読めるの?」

「あ?僕は第一王子だからって、文字や読み方はすぐに教わったぞ。」

「…僕は侍女に頼み込んで、少しずつ習ったからね。ただ文字は苦手だって言われて、練習してるところだよ。」

「そうなんだ。」

納得しているメノアだが、クェサリオは別として本来ならメノアも学び終え、知っていても可笑しくない。
ただ遊び呆けすぎた結果、少ない文字が読めるだけで、大半は読めずに過ごしてきていた。
そのため、あまり危機意識は持ち合わせていなかった。
その後、食堂で待っていても一向に来ないユキに心配になり、侍女に相談し始めていると。
食堂の扉から国王の専属執事が言伝を伝えにやってくる。

「本日より数日は食事を共にできない。との、王女殿下の言伝にございます。」

「何かあったのか?コロシアムで実は怪我でも負ったんじゃないだろうな!?」

「えっ。元気そうだったけど、怪我してたの?」

「心配はご無用でございます。王女殿下は怪我も何も負ってはおりません。ただ陛下と二人で食事会を開きたいとの仰せで、こちらに参られないとのことでございました。」

「だが数日も離れる必要はないんじゃないのか。他に何か言ってなかったのか?」

「そうでございますね。陛下がお疲れの様子なので、介抱してあげたいとも言っておられました。」

「では仕方ないな。ユキの我が儘くらい聞いてあげねば。」

「でもそれまで一緒に居れないのか…。」

「では失礼いたします。」

専属執事が退出すると、アスケナとメノアは相談というより悪巧みを始めた。
クェサリオだけは二人と違い、黙々と給仕が配膳する食事をしているため、会話に混ざることなく耳を傾けている。
侍女たちは王子たちの会話を何も聞かなかったことにして、壁際で空気に徹していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

夫を愛することはやめました。

杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

砕けた愛は、戻らない。

豆狸
恋愛
「殿下からお前に伝言がある。もう殿下のことを見るな、とのことだ」 なろう様でも公開中です。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

【完結】27王女様の護衛は、私の彼だった。

華蓮
恋愛
ラビートは、アリエンスのことが好きで、結婚したら少しでも贅沢できるように出世いいしたかった。 王女の護衛になる事になり、出世できたことを喜んだ。 王女は、ラビートのことを気に入り、休みの日も呼び出すようになり、ラビートは、休みも王女の護衛になり、アリエンスといる時間が少なくなっていった。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

処理中です...