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しおりを挟む久しく兄弟で集まった食事後、予定がない三人兄弟はユキと散策に乗り出した。
未だに修繕し終わらない食堂は、職人が忙しく作業をしているため、立ち入り禁止とされている。
食事を共に摂れない王と王妃は宰相の監視のもと、泣く泣く仕事をこなす毎日を過ごしている。
「今日はどこに行きたい?城内ならどこでも良いぞ。ただ一部は僕らでも入れない場所があるけどな。」
「じゃあ、あそこ!」
「「「えっ。」」」
ユキが指差した先には巨大なコロシアムが存在していた。
そこは騎士団が特訓する訓練場である。
許可の必要性はないが、三人兄弟が驚いたのは担当していた騎士団が実践訓練中だったためだ。
まだ文字が読めないユキには看板にしか見えないが、そこには注意喚起が書かれていた。
"此度は貸切での訓練である。参加者以外は立ち入り禁止である。騒音がなるため、離れるべし。"
「まあ何かあれば、ユキくらいは守ってあげよう。」
「「賛成!」」
首を傾げるユキの手をアスケナが繋ぎながら、メノアとクェサリオの選ぶ道を追いかける。
メノアは怪我をしないように障害物へ目を凝らし、クェサリオはユキが疲れない道を模索する。
そもそも向かう道は多いが、コロシアムに続く道はそれほど多くない。
ある種の遊びのように歩き回る三人の王子と、一生懸命に歩く王女を見守るように眺めていることも知らず、四人は慎重にコロシアムへと近付いた。
◇ ◇ ◇
保護者Side——
「さあ、本日はこちらの決済をお願いします。」
荒らした食堂の修繕が滞りなく終えたものの、未だに執務室から出られない王と王妃はため息を吐きつつ、仕事に取り掛かっていた。
朝から晩まで執務室に束縛され、宰相が嬉々として書類を増やし、それの決済に追われている。
"疲れた"と言えば些細な休憩を挟まれ、"空腹だ"と言えば料理が届けられるため、至れり尽くせりな筈だが、二人は執務室から外へ出れなかった。
宰相が居なくなった就寝の時間、こっそりと監視される寝室を抜け出して王女へ会いに行こうとした王妃が見つかった日から連帯責任として王も執務室からほぼ出れなくなってしまった。
食堂の一件で宰相が手を緩めようとした途端の行動だったため、行動範囲の監視を増やされてしまう。
「(今日も元気そうだなぁ。)」
遠い目をしながらも、王妃と違って行動を起こさないのは執務室に設置された窓から王子や王女たちが一日に一度は眺められるため極めて大人しかった。
当初は王妃が暴走したことで腹が立っていたが、この小さな出来事で幸せを感じ始めていた。
ある意味、王は閉鎖空間に居過ぎて精神が病んでいた。
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