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しおりを挟む「そろそろ指示を撤回して良いわ。やり過ぎない程度が良いから、ここからが危ないけれど頑張りましょう。」
「はい。ところで情報によれば、近いうちに高位貴族が来訪する可能性があります。下町に隠れるのが良いかと思われます。護衛を遠くから複数就かせます。」
「ええ。では数日の間、管理をお願いします。それと使者が来ても追い払うように。」
「はっ!分かりました。」
その日も変わることのない子爵家を裏門から出たセリアは口元を隠しながら、街道を歩き続ける。街道沿いを歩くと、商店の多くが内側から戸締りされていた。
その一角で路地に入る手前で貴族の馬車が止まっているのが見えた。馬車の付近には騎士が数名徘徊していて、住民らは避けるように街道を往来していた。セリアもそれに倣って民衆に紛れ込んでいく。
そんな中、馬車から離れた場所から喧騒が聴こえてくる。その場所に視線を向けると、騎士が商店の前で主人と思われる貴族と共に、店主に怒鳴りつけていた。
「なぜ商品が並んでいないのだ!これまでは何も言わずに買えただろ、なぜ急に並ばなくなった。原因はなんだ?」
「どうもすみません。提携していた取引先からの納品が止まっていまして。あちらも仕事が手に付かないようです。商売が全くできない商店は閉まってますが、うちは多少なりとも商品があるので…」
「ちっ。もう良いから、買えるものだけ買ってやる!そちらも生活があるだろう。今後も頼むぞ」
「はい!」
その貴族は騎士が荷物をまとめるのを見ながら馬車へ戻ろうとしていたが、セリアの方へ目が向いた。セリアの護衛が察知し、すぐさまセリアを目的地に案内する。
貴族は数名の騎士を連れて追ってくるが、セリアの護衛は裏路地に入る。路地に入る際、貴族は大急ぎで向かってくる。セリアを路地に招いたと同時に護衛が立てかけていた材木を倒して、貴族の足止めに使う。
そのまま入り組んだ路地を通り抜けていくと、1つの宿が見えて来た。宿に入ると数人の男がカウンター前の席に座っていた。護衛が騎士の礼をすると、男達は席から立ち上がり、カウンターへ道を空けていく。
カウンターの老婆に護衛が声を掛けると、セリアへ視線を向けた。老婆は目を見開いて近づいてきたが、護衛は無言で行く手を阻んだ。老婆は護衛の手を離そうとするなか、セリアは一言呟いた。
「お久しぶりです。ジーナ叔母様、セリアでございます。ローナにはいつも助かっています。」
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