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 グレハラ子爵夫妻は味方になってくれる貴族家を探すために招待された茶会やパーティーに積極的に参列していた。

 話を聞いても味方と言える方は見つからなかったが、その分情報を仕入れることだけはできていた。

 中にはホルム辺境侯爵家との婚約を祝う貴族家も存在しており、話を弾ませて情報を頭に詰めていった。

 グレハラ子爵夫人ララも何も分からない風を装って、多くの夫人に近付いて少しでもティリアの助けになるかもしれない貴族家を探し回ったが、クリフとは違って口論での情報戦が多いことから成果は上がることはなかった。

 時折、屋敷に残した執事から報告書が来るが、大半は"屋敷に帰ってくれ"という嘆願書に似た書類が多かったが、一人でも味方を見つけるために奔走した。


 そんな時、会場の外から喧騒が鳴り響いたことに会場の貴族は驚き、演奏も止まり、ダンスを踊っていた貴族家も一点の扉を凝視した。

 突然開かれた扉にはボロボロになりながらも、執事服を着た男が息も絶え絶えで立っていた。

「こちらにグレハラ子爵家夫妻はいらっしゃいませんでしょうか!急用でして、どなたか存じませんでしょうか!」

 男の発言でグレハラ子爵夫妻は他の貴族家から離され、関わっていなかった貴族家はグレハラ子爵夫妻に視線を集めた。

 あまりの居心地の悪さを感じながら、会場を後にしたグレハラ子爵夫妻だったが、馬車に乗り込むなり目の前の執事に怒鳴り散らした。

「なぜお前がここにいる!?」

「あなたはティリアの側に居なくてはならないでしょう?どうして」

「どうして?それはあなた方に問い質したい。どうして私が送った嘆願書を見ていながら、戻ってこなかったのですか!」

「まさか。ティリアの身に何かあったのか?」

「えっ!」

 この執事は本来ティリアの専属執事である。

 通常、貴族令嬢が従えるのは侍女だけであるのが通例である。

 執事を従えられるのは逆に男子のみという決まりも当然存在する。

 この執事はある事でティリアの専属となったため、覆ることはないのだが。

「ティリアお嬢様が、お倒れになりました。」

『は!?』

 あまりに唐突なことに両者とも間抜けな声を発する。

 予知できていなかった両者を気にせず、慎重に言葉を絞り出す。

「落ち着いてお聞きください。以前の茶会以降は安定しておられました。しかしクリフ様とララ様が屋敷を空けるようになった頃から、以前から報告を送っていた出来事によってお嬢様は極限状態に置かれておりました。ですが先週、遂に耐えきれなくなったティリアお嬢様はお倒れになりました。」

「ーー」

 あまりの情報量過多により、ララはクリフの肩に寄りかかるように気絶した。

 急に気絶したララ夫人の安否を確かめるのに真っ青になって声掛けするクリフを執事は静かに冷めた目で眺めるのだった。
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