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第一部

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ウィリスタ伯領へ辿り着くまで、あと一つ街を越えればというとき、メリシャを含む神官一行の馬車は急停止を余儀なくされた。

それは突然現れた魔物によって引き起こされた。
通常の動物より体躯が倍は大きく、角が鋭利な刃物のように伸ばす牛の魔物だった。

聖騎士たちが盾を構えるが、弾かれ続けて負傷する者も出てくる。

魔物が盾を標的にしている間に、詠唱を済ませた神官から聖魔法を繰り出す。

「——ッ」

ふと歪な気配を感じたメリシャは横へ目を向けてみた。
そこには枢機卿が杖を握りしめて、何だか恐ろしい気配を漏らしている。
そっと耳を傾けると、パシパシと足下から小さな音も聞こえてくる。
そちらではルーが前足で煙のように近寄る何かを退け、霧散させる光景が広がっていた。

『メリシャ様。心配ありませんよ、もう少しで退治できる筈ですから。』

ネリからメリシャにだけ聞こえるように語りかけ、牛の魔物が暴れている方へ視線を向けると、既に疲労が溜まって弱っているところまで進展していた。

「(今回のことが終わったら鍛錬し直してみましょうか。護衛の肩書きが意味を成さないではないか。)」
『(ルーめ。メリシャ様に不安がらせるとは何たることか。後で説教の一つでもしておこうか。)』

枢機卿とネリは違う場所を眺めながら、そう思案していた。
同時刻、魔物の討伐を終えていた聖騎士とメリシャの足下で座り込むルーは冷気を感じて飛び上がっていた。

倒した筈の魔物がのっそりと起き上がったからだ。
咄嗟に避けたお陰でルーは怪我を負わなかったが、先程まで立っていた場所は黒くくすんでいた。

聖騎士は再び身体を震わせ、戦闘態勢に移る。
枢機卿も杖を魔物に向けて臨戦態勢に入る。

しかし先に動いたのはメリシャだった。

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※お知らせ※

次回更新日程:2024年7月29日17:00・予定

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