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第一部
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「聖女様。ウィリスタ辺境伯領に着くまで、幾つか通らなければならない領地が存在します。」
出発して暫し馬車の窓から景色を眺めていた枢機卿は畏まったように話し始める。
「はい。お養父様、到着まではいつも通りの呼び方で構いませんよ。」
「分かりました、そうしましょう。本来であれば教えるべきですが、メリシャに必要ないでしょう。我々教会を置くことを許容せず、長年信仰がされていない地域となりますから。」
メリシャに気遣われ、枢機卿は素直に敬称を止めて話を続ける。
「そういった領地があるのですね。知りませんでした。」
『メリシャ様。元々教会を置きたがらない地域はよくあるのです。国によって人々が信仰される存在が違うように、その地域で昔から暮らす者もそういった存在がいるのでしょう。』
「ネリは物知りですね。ありがとうございます。ところでルーは…」
ネリを褒めながら撫でていたメリシャはそれまで静かで気付かなかったルーに話しかけようと目を落とすと、ルーはメリシャの足下で眠りについていた。
ほんの少し、ネリが厳しい視線をだらしなく眠るルーに向けられていた事を除いて。
『………(スヤスヤ)』
「馬車ですから、疲れてしまったのかもしれませんね。」
「ええ、そうですね。これから長旅になるのですから、メリシャも休まれても構いませんよ。私も休むつもりでいますから。」
「はい。けれど、もう少しだけこの景色を眺めたいと思います。」
景色は平原が続き、時々森の入り口が見える他に変わる事のない景色が広がっている。
聖騎士たちは馬車の後方から護衛しているため、幸いメリシャが見る景色を妨げることは無かった。
そして出立して初日は誰に遮られることもなく、大きな街まで向かう事が叶ったのだった。
--------------------
※お知らせ※
次回更新日程:2024年6月10日17:00・予定
出発して暫し馬車の窓から景色を眺めていた枢機卿は畏まったように話し始める。
「はい。お養父様、到着まではいつも通りの呼び方で構いませんよ。」
「分かりました、そうしましょう。本来であれば教えるべきですが、メリシャに必要ないでしょう。我々教会を置くことを許容せず、長年信仰がされていない地域となりますから。」
メリシャに気遣われ、枢機卿は素直に敬称を止めて話を続ける。
「そういった領地があるのですね。知りませんでした。」
『メリシャ様。元々教会を置きたがらない地域はよくあるのです。国によって人々が信仰される存在が違うように、その地域で昔から暮らす者もそういった存在がいるのでしょう。』
「ネリは物知りですね。ありがとうございます。ところでルーは…」
ネリを褒めながら撫でていたメリシャはそれまで静かで気付かなかったルーに話しかけようと目を落とすと、ルーはメリシャの足下で眠りについていた。
ほんの少し、ネリが厳しい視線をだらしなく眠るルーに向けられていた事を除いて。
『………(スヤスヤ)』
「馬車ですから、疲れてしまったのかもしれませんね。」
「ええ、そうですね。これから長旅になるのですから、メリシャも休まれても構いませんよ。私も休むつもりでいますから。」
「はい。けれど、もう少しだけこの景色を眺めたいと思います。」
景色は平原が続き、時々森の入り口が見える他に変わる事のない景色が広がっている。
聖騎士たちは馬車の後方から護衛しているため、幸いメリシャが見る景色を妨げることは無かった。
そして出立して初日は誰に遮られることもなく、大きな街まで向かう事が叶ったのだった。
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