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第一部

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リーティ講師から休校が告げられ、エイサはシムリーを連れて伯爵家へと馬車で帰っていく。
それを見送り、メリシャはルーと、何時の間にか帰ってきていたネリを連れて帰る。

辺りは急な休校で帰省する生徒を迎えに来た馬車が行き交い、遠くからは喧騒も聞こえてくる。
幸い、ネリとルーが周囲の騒音から魔法で守っているため、聞こえてくる音も小さく抑えられている。

道中、教会の関係者と思われる人々に目礼されながら、屋敷へ帰り着く。
毎日教会から神官が訪れる関係で、屋敷は常に清潔を保ち、庭には自家菜園が何時からか作られていた。


執務室へと向かうと、神官が複数人廊下で順番を待つ姿が伺えた。
メリシャはその背を曲げるように前屈みの神官たちが来た目的を察して挨拶回りが終わる時を静かに待つ事にした。
それを察したネリが気配を薄くさせるように彼らから隠す。

『——そんな事が出来るわけなかろう!』

彼らが執務室へ入って時間も置かず、案の定という風に枢機卿の怒声が廊下にまで響く。
念のためにネリが音を遮断していたお陰で、メリシャは特に影響を受けることなく佇んでいた。
その足下にいたルーは微妙にネリが張った遮断の範囲の外に食み出ていた耳に枢機卿の怒声が響き、その場に蹲っていた。

ネリが張った範囲がメリシャだけを指定したことも起因して、ルーはその場から動けず、メリシャが声を掛けようと視線を向けるまで僅かに震えていた。
グッタリとするルーを抱え上げたメリシャはじっと執務室が開くのを待ち続けたのだった。

「メリシャ様?如何なさりましたか。」

そこへ以前から屋敷に居候している神官が語りかけてきた。
彼女は屋敷の手入れ人員という名目で、教会から屋敷の食客として枢機卿に雇われているのだが、庭の自家菜園を彼女が作っていたと知ったのは偶然であった。
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