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第一部

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ある侯爵令嬢が開いた茶会にて。

そこには数多くの貴族令嬢が参列していた。
学園内に在籍している上級生から下級生までの大半がその場に集まっている。
一部声が掛けられていない者はグループに入っていなかったり、弱小貴族や新興貴族だ。
中には貴族令嬢に当てはまっていても、支持している相手次第で敵対する派閥なども含まれていない。
主催者である侯爵令嬢に連なる令嬢や、そのグループに入会している令嬢、同じ派閥に与する者だけがこの場にはいた。

「皆さま。本日はお集まりいただき、感謝を申し上げますわ。今宵はどうぞ、我が侯爵家で語らい合いましょう。ーー乾杯!」
「「「乾杯」」」

主催者による第一声を合図に演奏が始まり、様々な料理を立食しながら語らいという名の情報共有が始まる。
語らいは社交界での話題から、自身の婚約者についての情報収集や、派閥内で両親が治める領地に対する話など学園内に留まらず、広い話題をテーマに話し合う光景がちらほらと見える。

その中で最も異様な集団では、ある令嬢についての議論が為されていた。
話題の令嬢の名を明かしはしないが、既に学園中で噂となって広がっているため、聞く者によっては分からない話題も、この集団の中では知らない者はいなかった。
何故ならある日下級生を訪ねる際に同行した女子生徒が彼女たちだからだ。

「…あの御令嬢、失礼にも程があると思いませんか。いくら新興貴族だからとはいえ。」

「しかし、あの令嬢が言った通り男爵家がより上位の階級を持つ婚約者に解消を要求しても通らないかと思われます。これが同格の家柄であったり、両家による合意さえ取れていれば、問題はないかもしれませんが。」

「そういえば、貴女もそれで一時期苦労をなさっていましたわね?」

「ええ。然る高貴な方のお陰で解消に漕ぎ着けましたが、本当に大変でした。」

「兎に角、例の御令嬢には警告しましたし、今後我々が目を光らせておきましょう。」

「「「賛成!」」」

それからも遅い時間になるまで茶会は続き、主催者の閉幕を機に解散することとなった。
それを天窓から覗いていた小鳥に気付く者は一人も居なかった。
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