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第一部

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就寝の時間、メリシャが眠りについたのを見計らって、ネリは再び飛び立っていく。
それを眺めながら、メリシャを起こさないように結果を何重にも張り巡らせ、寝室のみ外部との接触を断つ。
偶に寝返りを打つメリシャへ器用に布団を被せるルーは、その寝顔を静かに眺め続けた。


時を同じくして、女子寮前に佇む教員がいた。
空から音もなく静かに降り立つ鷹のような鳥は、その教員に目を向ける。
教員は手にしていた杖を地面に置き、鳥の目線に合わせるように、地面に座る。

『リーティ講師。此度は何用で参った。』

「はい。私は聖女様の監視者として教会より派遣された一人であり、あなた方に敵対する者でないことをここに宣誓いたします。」

『ふむ。あの狸も一言言えば良いものを、紛らわしい事をするな。…して、それだけではあるまい?』

「はい。今朝方、ある女生徒が中庭にて散策中、日頃は大人しい筈の鳥に攻撃されたと。そして突かれたことに怒り、魔法で攻撃した結果、跳ね返って気絶したと聞いております。彼の方より聞き入っていた私めの見解から、聖女様に何かあったのかと推測しておりました。」

『確かではある。主人に実害がある前に対処するのは従魔の役割だ。それを事前に知ったのであれば、尚のこと。』

「確かにその通りであります。ただ今後、穏便な方法を取ってもらえないでしょうか。此度のように教員が大勢で対処を余儀なくされるため、聖女様の教育に差し支えます故。」

『良いだろう。私も彼の方の今後を奪う気はない。だが敵対行為をされた場合は、その限りでないと知れ。私は彼の方の元へ帰る。』

「御意に。」

その後、飛び立った鳥を見届けたリーティ講師は杖に半身を預けて、ドッと吹き出した汗と倦怠感からその場に伏せた。
どれだけそうしていたか、心の整理がついた彼女は精神安定魔法を自身に掛けて、それでもふらつきながら帰路についた。


窓から帰ってきたネリはスヤスヤと眠るメリシャと、外界を断絶する勢いで張られた結界に苦笑いする。

『帰ったか。』

『ああ。これでメリシャ様に敵意が向くことは減るだろう。また何かあっても我らが対処するだけだ。何か問題はあったか?』

『廊下から何者かが扉へ近付く気配を感じたため、念の為に結界を張った。他にあったとすれば、メリシャ様が寝返りを数度打ったことだろう。』

『そうか。』

お互いに笑みを浮かべ、ネリも加わって、メリシャの寝顔を眺め始めた。
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