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第一部

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前日にメリシャと眠ったルーは背中の毛をボサボサにして起き上がった。メリシャがあまりに強く抱き締めて眠るので、毛を整えるため、朝から水浴びする事となった。
因みにネリは毎朝水浴びを欠かさないため苦にならず、メリシャと眠ることに至福を感じているため、あまり問題視していなかった。

一晩経つと落ち込んでいたメリシャは何処に行ったのか、朝から元気に枢機卿と食事を楽しむ光景に神獣も神官達も安堵していた。
その足元では、ルーが乾き切れていない体毛に不満を抱えて伏せている。昨晩のフォローの恩返しに、ネリが微風を当てる事によって乾いていくと、ルーはネリに感謝の念を抱く。

そこへ静かに入室してきた一人の神官が枢機卿の耳に何かを聞かせると、枢機卿は慌てた様子でメリシャの顔を振り返る。
正しくはメリシャの顔の肩に留まる神獣たるネリを見ていた。ネリは一度だけ瞳を細く開くと、数瞬だけ枢機卿の方を睨んで、再び瞳を閉じた。その数瞬だけでも威圧を感じ取った枢機卿は顔をせ、神官は誰でも分かるくらいに顔を青褪めさせて震えていた。
唯一メリシャにだけは見られないよう配慮して、袖で顔を必死に隠そうとしている。

「我々には関係ない事だと伝えておけ。神官は関係者の末端まで伝え、近付かないよう気を付けよ。」

「はっ…はい…!すぐに伝令を出します。あの近隣に近付かぬよう徹底いたします。では!」

「メリシャは神獣様らと居てくれ。私は少し席を外すから、彼らとも居てくれると助かる。」

「ん、行って来て良いよ。ルーとネリが居れば、安全だもん。神官の皆さんと待ってるね。」

『我らが居れば問題など起こらん。』

胸を張って言い張るルーの傍らで、ネリは不適な笑みを浮かべて目を光らせる。

『問題が起きようものなら、排除してくれる。』

「…程々にしていただきたい。」

枢機卿は額に脂汗を浮かべて、物騒な言動を吐くネリへ失礼にならない程度の視線で釘を刺す。分かっているとでも言いたげに首を下げたネリを見て、不安に駆られて見当違いにも女神に不在中の安全を祈った。
少なくない不安を抱えた枢機卿はその場を神官達に託して、後にした。
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