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第一部

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「愛し子様は知らないようだ。御両親の居場所を何としてでも突き止めよ。」

「はっ。しかし愛し子様の一家を襲うとは到底許せませんな。」

「愛し子様は大変怯えていらっしゃる。遠く離れた地で、調査するのだぞ。」

「心得ております。」

枢機卿は聖騎士に命じると、再びメリシャのいる天幕の前へ赴いた。
入り口を捲ろうとした時、足下から緑色の羽根を持つ小鳥が現れる。

『メリシャ様はお眠りになられた。お目覚めになられるまで、静かにせよ。』

「はっ!」

小鳥のままメリシャの元へ飛んでいく背を眺めることなく、入り口を閉ざした枢機卿は背後に控えていた聖騎士と神官を伴い、会議を開くことにした。


会議の結果、教会の上層部である教会本山へ伝令を送る事が決められた。
独自に調査をしていた聖騎士の報告によれば、一家を妬んだある農園の者が、その農園と懇意にしていた貴族を抱き込んで襲撃を図ったらしい。
文書に事細かに記載した文を持たせて、本山へ向けて急使を走らせた。
何度聞いてもメリシャの両親の行方を知らぬ存ぜぬと叫ぶ賊を懲らしめた聖騎士は教会で身柄を拘束し、メリシャが目覚めるのを静かに待った。

メリシャが目を覚ました後、これからの行動を軽く説明してメリシャを連れた一行は本山への文に記載した領都へ向けて出発する。
先に賊を詰め込んだ荷車を向かわせていたため、メリシャに無理を強いる事なく、一行は進む事ができていた。
本来であれば道中を立ち寄った街や村の宿屋を頼るのだが、今回に限って言えばメリシャを他の教会関係者に知られる事を避けるため、野営を繰り返して目的地へと走った。
目的の領都へ辿り着いた一行は平民のメリシャを気遣って、領都内にある高めの宿屋に泊まり、翌日に領主と会う事になった。
事前に知らされていた領主は柔らかい笑みを浮かべてお互いの情報を交換し、話し合いの結果、使節団が来るまで自由に住むことが決まった。

枢機卿が話している間、メリシャは他の聖騎士と神官に付き添ってもらい、領主の庭で弾んだ会話をしていた。
その時、少年が近寄ってきたのを察した聖騎士が立ち上がるが、メリシャを少年の視界に入れてしまった。
この領都の主人である領主は貴族や国に顔が効き、教会出身の貴族でもある。

「何で、こんな所に平民のガキがいるんだ!」

少年はメリシャだけを視界に捉えて、聖騎士が止める暇もなく、指を刺しながら叫んでいた。
神官は急いで驚くメリシャの耳を塞いだが、守護者たる神獣の耳に入ってしまっていた。
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