小咄小話ちょいと詰めて

せんたくもの

姉ちゃん！　その手に持ってんの何！？（息子）
何って、パンツ（娘）
やめてよ！　俺のパンツを姉ちゃんが触らないで！（息子）
はあ？　面倒なこと言い出さないでよ。脱ぎたてでもないのに（娘）
姉ちゃんには、デリカシーが無い！　姉にパンツ畳まれる弟の気持ちにもなってよ！　パンツだけは母さんが畳んでると思ってたのにっ（息子）
私に畳まれるのが嫌なんだったら、全部、凌が自分で畳みなさいよ！（娘）
いつもは畳んでるよ！（息子）
うるさいから、喧嘩はやめなさい（母）
だって、母さん！　年頃の弟が姉にパンツ畳まれるんだよ！？　姉が自分のパンツ触ってる光景を見るんだよ！？（息子）
使用済みでも、洗いたてならいいじゃない。お母さんが触るのと佳南が触るのとで何が違うの？　お母さんは、佳南が畳むの手伝ってくれて嬉しいけど（母）
ほら。凌が無駄に気にし過ぎなのよ（娘）
じゃあ、姉ちゃんは父さんのパンツや靴下も畳めるの！？　姉ちゃんのパンツを俺や父さんに畳まれても気にしないわけ！？（息子）
あら。お父さんがショックな顔してこっちを見てるわ（母）
そこにあるお父さんのパンツも靴下も、私が畳んだ。あと、お父さんが私のパンツやブラ畳んでるの見たことあるけど、別に何も思わない。そんなこと言ってたら、お風呂や洗濯物干す時とかどうするのよ（娘）
あら。お父さんが笑顔でガッツポーズしてるわ（母）
だから、凌も気にし……ん？（娘）
ね……ちゃん、な……て（息子）
どうしたの？　凌（母）
姉ちゃんなんて、もう知らない！　デリカシーないずぼら人間！（息子）

なーんて、ことがあったわね。むかし（母）
……その話、もうやめてくれない？　母さん（息子）
ああ。凌が無駄に繊細だった反抗期の頃の話ね。覚えてる覚えてる（娘）
凌は佳南の手からパンツを奪って部屋に引きこもって泣いてるし、凌の言葉で佳南は洗濯物の上で泣き出すし。大変だったよね（父）
お父さん。デリカシーない（娘）
父さん。俺らの気持ち、もうちょっと考えてよ（息子）
昭さん。自業自得の凌はともかく、佳南のことは言い過ぎよ（母）
ご……ごめんなさい（父）