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3:旅人と子供たち
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案内された部屋に荷物とマントを脱いで置いた後、レイは薪割りを手伝うファラルとは別れて子供達の所へ向かった。
「さきほど出てきたのが宿泊棟です。今向かっている山側が託児棟で、街に面しているのが診療棟、海に面しているのが交流棟です」
子供達がいるという部屋に入る前に、セシルが、
「まず、子供達にあなたの事を紹介しますね。興奮して、騒がしいもしれませけど……」
と言い添えた。
彼女が部屋に入ったのに続いてレイも部屋に足を踏み入れる。その途端、20人弱の子供達が全員、その目を丸くしてレイを見た。
手を叩いて、子供たちの注目を集めたセシルは、レイのことを軽く紹介した後、レイ自身に話をするよう振ってきた。
レイはにっこりと笑い、
「こんにちは、私の名前はレイです。これから少しの間ここでお世話になる旅人です。短い時間ですが、みなさんとお話しできれば嬉しいです」
と、挨拶をした。
「おねえちゃん、たびびとさんなの?」
と言った一人の男の子を幕切りに、次々と子供達が何かを言い出した。
「どんなとこ旅してたの?」
「おはなしきかせて」
「たいへんなことってなにかあった?」
レイはこれ以上、子供が騒がしくなって収集がつかなくなる前に、
「それなら、私の旅してきた所で聞いたお話、聞いてくれるかな?」
というと、
「「「うん!」」」
と声をそろえて、子供達は言った。
「じゃあ、皆に聞こえる様に私の周りに集まって座ってね」
皆がレイの周りに集まって全員が座ったのを確認し、
「私は旅の途中で寄った村で、こんな話を聞きました」
と、前置して話し始めた物語に、子供たちは目を輝かせて聞き入っていた。
院長を含めた施設の職員や子供たち皆が集まって食べる騒がしい夕食が済み、女性用の浴場に案内される間に、セシルはレイにこう言った。
「ありがとうございます。レイさんのおかげで子供達が楽しそうで」
本当に感嘆した様に言うセシルにレイは微笑とともに、
「話を楽しんでもらえたなら、私も嬉しいです」
と答えた。
入浴を終え、セシルにレイたちが泊まる部屋の近くまで送ってもらった。
浴場を出で左の廊下を進んみ、行き突き当たりの階段を登って二階に辿り着く。
「昼間に案内した部屋は、この階段側から4つ目です。朝は7時に声をかけますので、それまでゆっくりしていてください。何か困ったことが起きましたら交流所へ来てください。常に誰かが居るはずですから」
「分りました。何から何までありがとうございます」
レイはその場でお礼を言って頭を下げる。
「では、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
そんなやりとりを交わし、階段を下りていくセシルの姿が見えなくなったとき、レイは一瞬だけ窓の外に視線をやり感情の見えない目で遠くを見つめた。
しかし、すぐに視線を逸らすと、レイに割り当てられた部屋へと向かった。
「さきほど出てきたのが宿泊棟です。今向かっている山側が託児棟で、街に面しているのが診療棟、海に面しているのが交流棟です」
子供達がいるという部屋に入る前に、セシルが、
「まず、子供達にあなたの事を紹介しますね。興奮して、騒がしいもしれませけど……」
と言い添えた。
彼女が部屋に入ったのに続いてレイも部屋に足を踏み入れる。その途端、20人弱の子供達が全員、その目を丸くしてレイを見た。
手を叩いて、子供たちの注目を集めたセシルは、レイのことを軽く紹介した後、レイ自身に話をするよう振ってきた。
レイはにっこりと笑い、
「こんにちは、私の名前はレイです。これから少しの間ここでお世話になる旅人です。短い時間ですが、みなさんとお話しできれば嬉しいです」
と、挨拶をした。
「おねえちゃん、たびびとさんなの?」
と言った一人の男の子を幕切りに、次々と子供達が何かを言い出した。
「どんなとこ旅してたの?」
「おはなしきかせて」
「たいへんなことってなにかあった?」
レイはこれ以上、子供が騒がしくなって収集がつかなくなる前に、
「それなら、私の旅してきた所で聞いたお話、聞いてくれるかな?」
というと、
「「「うん!」」」
と声をそろえて、子供達は言った。
「じゃあ、皆に聞こえる様に私の周りに集まって座ってね」
皆がレイの周りに集まって全員が座ったのを確認し、
「私は旅の途中で寄った村で、こんな話を聞きました」
と、前置して話し始めた物語に、子供たちは目を輝かせて聞き入っていた。
院長を含めた施設の職員や子供たち皆が集まって食べる騒がしい夕食が済み、女性用の浴場に案内される間に、セシルはレイにこう言った。
「ありがとうございます。レイさんのおかげで子供達が楽しそうで」
本当に感嘆した様に言うセシルにレイは微笑とともに、
「話を楽しんでもらえたなら、私も嬉しいです」
と答えた。
入浴を終え、セシルにレイたちが泊まる部屋の近くまで送ってもらった。
浴場を出で左の廊下を進んみ、行き突き当たりの階段を登って二階に辿り着く。
「昼間に案内した部屋は、この階段側から4つ目です。朝は7時に声をかけますので、それまでゆっくりしていてください。何か困ったことが起きましたら交流所へ来てください。常に誰かが居るはずですから」
「分りました。何から何までありがとうございます」
レイはその場でお礼を言って頭を下げる。
「では、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
そんなやりとりを交わし、階段を下りていくセシルの姿が見えなくなったとき、レイは一瞬だけ窓の外に視線をやり感情の見えない目で遠くを見つめた。
しかし、すぐに視線を逸らすと、レイに割り当てられた部屋へと向かった。
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