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2章 婚約破棄のちプロポーズ! 婚約破棄編
力が欲しい sideミユ・ユズ
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「・・・?」
私たちが異変に気付いたのは、会場の全体がざわめきつつあった時だ。
男爵家という家格上、最初の方に会場入りした為、出入り口から正反対の位置にいた。そのため、最初は微かな違和感を覚えただけだった。そう、いつもより少し雑音が大きいな、それぐらいの変化。
けれどそれはやがて、異変への確信へと変わる。
ぐるりと周囲を見渡し、パッと見た限りでより多くの人が向いている方角を向く…が、生憎と私たちの身長は平均的。背が高いわけではないので見えなかった。
本当ならそこでまぁいいや…となるところだが、あまりにも長くざわめいているのと、ヒソヒソという周囲の噂話の中に「第2王子殿下」「クレス伯爵家の…」と言った単語が聞こえてきたため、僅かに鼓動が跳ねた。
嫌な予感がする。その予感が取り越し苦労であることを祈りつつ、人が注目している出入り口…正確には出入り口のすぐ隣にある、噴水付きの庭園(豪華!)へ通じている白いアーチの元を早歩きで目指す。
果たして、嫌な予感は的中した。いや、あのワードが出た時点で嫌な推測、もはや確信めいたものではあったが、目の前にあると衝撃の度合いは違う。
そこには半泣きの親友…ティアと、そんな彼女の肩を抱く第2王子の姿があった。
「つっ…!」
「リンティア様?!」
一応は王子がいるということも忘れ、ティアの元へ駆け寄る。かろうじて敬称を付けて名前を呼ぶ。
「なんだ貴様らは?」
「…失礼いたしました、第2王子殿下。わたくしは、ファリカ男爵令嬢のミユ・ファリカと申します。」
「同じく妹のユズ・ファリカと申します。恐れ多くもリンティア様の友人とさせていただいております」
彼女に声をかけようとしたが、不機嫌そうな声が飛んできたため挨拶を行う。
「ふん。本当かリンティア?」
「っはいっ!わたくしの大切な友人たちでございます」
蒼褪めていても気丈に受け答えるティア。
「そうか…」
ニヤニヤと卑しい笑みを浮かべている第2王子。思わず眉を顰めそうになるが、鋼の精神でそれを跳ね除ける。
何がおかしいのだろうか。
「感謝しろよ、リンティアはフローシアたちにいじめられていた、そこを助けてやったんだ」
高圧的にいい放ち、まるで自らが英雄かのように語る。
ああ…イライラする。
「「ありがとうございます」」
「ふん、当たり前だな。まぁいい、俺はこれから少し場を離れる。リンティアと共にいて、他の男を寄せ付けるなよ」
幸いにもこちらの苛立ちを悟られることなく去っていった。
ああ、本当にイライラする。
フローシア様が、あの方が、そんなことをするはずはないのに。
それにいじめから助け出されたなら、ティアはもっと安心した様子を見せているはずだ。なのに、第2王子が離れるまで全身は固く強張っていた。
やはり何かあるのだろうか?
ティアはあの王子に強引に恋人にされてから、いつもどこか緊張している。
いや…、本当は知っている。
それは、
私たちのせいなのだ。
でも私たちは、それに気付いてはならない。
気付いたら最後、
ティアを追い詰める結果になってしまう。
力が欲しい。
強い力さえあれば…
私たちが異変に気付いたのは、会場の全体がざわめきつつあった時だ。
男爵家という家格上、最初の方に会場入りした為、出入り口から正反対の位置にいた。そのため、最初は微かな違和感を覚えただけだった。そう、いつもより少し雑音が大きいな、それぐらいの変化。
けれどそれはやがて、異変への確信へと変わる。
ぐるりと周囲を見渡し、パッと見た限りでより多くの人が向いている方角を向く…が、生憎と私たちの身長は平均的。背が高いわけではないので見えなかった。
本当ならそこでまぁいいや…となるところだが、あまりにも長くざわめいているのと、ヒソヒソという周囲の噂話の中に「第2王子殿下」「クレス伯爵家の…」と言った単語が聞こえてきたため、僅かに鼓動が跳ねた。
嫌な予感がする。その予感が取り越し苦労であることを祈りつつ、人が注目している出入り口…正確には出入り口のすぐ隣にある、噴水付きの庭園(豪華!)へ通じている白いアーチの元を早歩きで目指す。
果たして、嫌な予感は的中した。いや、あのワードが出た時点で嫌な推測、もはや確信めいたものではあったが、目の前にあると衝撃の度合いは違う。
そこには半泣きの親友…ティアと、そんな彼女の肩を抱く第2王子の姿があった。
「つっ…!」
「リンティア様?!」
一応は王子がいるということも忘れ、ティアの元へ駆け寄る。かろうじて敬称を付けて名前を呼ぶ。
「なんだ貴様らは?」
「…失礼いたしました、第2王子殿下。わたくしは、ファリカ男爵令嬢のミユ・ファリカと申します。」
「同じく妹のユズ・ファリカと申します。恐れ多くもリンティア様の友人とさせていただいております」
彼女に声をかけようとしたが、不機嫌そうな声が飛んできたため挨拶を行う。
「ふん。本当かリンティア?」
「っはいっ!わたくしの大切な友人たちでございます」
蒼褪めていても気丈に受け答えるティア。
「そうか…」
ニヤニヤと卑しい笑みを浮かべている第2王子。思わず眉を顰めそうになるが、鋼の精神でそれを跳ね除ける。
何がおかしいのだろうか。
「感謝しろよ、リンティアはフローシアたちにいじめられていた、そこを助けてやったんだ」
高圧的にいい放ち、まるで自らが英雄かのように語る。
ああ…イライラする。
「「ありがとうございます」」
「ふん、当たり前だな。まぁいい、俺はこれから少し場を離れる。リンティアと共にいて、他の男を寄せ付けるなよ」
幸いにもこちらの苛立ちを悟られることなく去っていった。
ああ、本当にイライラする。
フローシア様が、あの方が、そんなことをするはずはないのに。
それにいじめから助け出されたなら、ティアはもっと安心した様子を見せているはずだ。なのに、第2王子が離れるまで全身は固く強張っていた。
やはり何かあるのだろうか?
ティアはあの王子に強引に恋人にされてから、いつもどこか緊張している。
いや…、本当は知っている。
それは、
私たちのせいなのだ。
でも私たちは、それに気付いてはならない。
気付いたら最後、
ティアを追い詰める結果になってしまう。
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強い力さえあれば…
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