私のレンタル魔王様!

珊瑚

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本編

日常・木漏れ日亭にて

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「ミカ、1番テーブルにアイス、9番テーブルにホット、それぞれ1つ!」
「ふあぁーい!」
「返事は短く!はい!復唱して」
「はい!というかアイスってコーヒー?!」
「いや紅茶!ほら行け!」
「ふあぁーい!」
「返事は…」
お母さんに何かを言われる前にカウンターの上のコップを持ち、中の液体が溢れないように注意しつつ運ぶ。
「お待たせいたしましたー!」
「おうおう、ありがとねぇ」
「えっ、アイス頼んだのおじいちゃん?!」
どう見てもあったかい抹茶をずずずとすすっていそうなおじいちゃんだった。
「あぁ、そうだよ?どうかしたのかい?」
「いえいえー」
偏見ってよく無いよね。
「ミカー!こっちの料理は11番テーブル!運んで!」
「はいただいま!」
しっかり返事をして早歩きで戻ると、お皿がカウンターを占拠している。どの料理も湯気を立てて、とても熱そうだ。うーん、火傷するな。
(よし、使っちゃえ)
スッと目を閉じ、お皿が浮かぶ様をイメージ。
「ほいっ!」
 を使ってお皿を動かした。
ふわりと浮かべ、細心の注意を払って水平を保つ。うまく安定させられた。
「おお、魔法か?」
「えぇまぁ?」
お客さんの質問を躱し、浮かせたお皿たちを持っていく。この世界では魔法や魔力が存在するが、完全に使いこなせる人は3割ほど、しかもこんな手伝いに使わない。疑問は当然であろう。
「お待たせいたしました」
「えっ?!」
浮いている皿を見て、白目を剥いたお姉さんたち。なんかすいません。
「魔法ですか?」
「まぁそんな感じです」
曖昧に誤魔化し、お皿を「ちょっと失礼しますね」とテーブルの上に移動。
寸前まで下げてから、力を解く。割れたら困るしね。
「ご注文はこれらでよろしいでしょうか?」
「は、はい…」
驚きが抜けきらないお姉さんたちを敢えてスルー。酷い?いや、こんぐらい逞しく無いと、混雑時のお客さんたちの多さに対応は出来ないのである。
経験上の効率アップ法だ。
「これも?」
「あぁ、頼んだよ」
まだお昼なのに鎮座する、冷えたビールの重そうなジョッキ。これも力を使っちゃえ。
「っと、うわわっ!」
お皿よりバランスが取りづらく、ジョッキの中身をこぼすところだった。と思いきや、今度は取り落すところだった。
「まったく、ミカはおっちょこちょいだねぇ」
「お母さん!酷くない?!」
バシャバシャとお皿洗いをしながら、ため息とともに吐き出された言葉に反論する。
「あぁ、よそ見してると…」
ガッシャン!ドガシャン!
「あぁぁ!」
棚に仕舞おうとしていたお皿が落ちた。幸いなれか割れなかったけれど、ヒビが入ってしまう。
「ほら見たことか…言わんこっちゃない」
「ぐぬぬ…覚えてろー!」
「どこの悪役の捨て台詞よ。まったく、負けん気が強いんだから」
今日も木漏れ日亭は騒がしい。
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