転生者は常識外れなのだが…

9章 フリーダム王国

建国①

 残党兵の勢力はアルファ＝インスペクターの力もあってかそれから1日も立たぬ合間に根絶やしにされた。しかしそれらの勢力によって王国のほぼ全ての能力が低迷してしまった。つまり、いつ国が倒れてもおかしくないと言うことだ。幸いにも陛下の弟であるレミオド＝フランクによって新体制の王国を建国することができた。それこそがフリーダム王国である。新国王は軍部総監督官インスペクター兼魔道分野総合監督長官魔導王の役職をアルファ＝インスペクターに与え、新たなるスタートをしたと国民に知らしめた。
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実のところ、この話には誤りがある。それはこの国の最高権力者は国王ではなく魔導王だということである。もちろん、表向きは国王で合っているのだが、本来のところは異なっている。しかしながら、魔導王自身に野心がないこともあってかすんなりとこの事実は通されたのである。

「陛下、ラインハルト王国より使者が参りました。どうやら、我が国とのこれからの関係を模索したいようです」
たゆやかなお腹を持つ大臣の一人がそう言ったが、後ろから何やら言われているようだ。

「…失礼、新国・ラインハルト王国の使者であります」
気まずそうに陛下に言う姿はさながら怒られる前の子供のようだった。

「わかった、応じよう。インスペクター、護衛を頼めるか」

「わかりました」
俺はそう言って、彼の歩む姿を背中を通して見た。

「レミオド＝フランク陛下、此度は新体制であるフリーダム王国を建国されたことを心より感嘆しております。この出来事は今から3500年前の先の大戦以来のものでして～」
歯止めの効かぬ壊れた人形のように饒舌に話す使者に対して呆気にとられた。それに気づいたのか、いや思い出したのか急に口を閉ざし、青ざめた顔を見せる。

「ありがとう。実に興味深い話であったな」
陛下がそう機転を効かせて言っていなければこの凍りついた空気はどうすることもできなかったのだろう。

「そ、そう言っていただければ幸いです。…さて、本題に参りましょうか」
急に自信を取り戻した顔でこちらを真っ直ぐに目で捉えている、澄んだ瞳だ。

「ああ、大方、国交の有無についてでしょう？それについては今までの態度を見ていただければわかるかと」
俺は一応軍部総監督官インスペクターなので少しなら外交に関して意見を言える。というか先日までの大戦の影響で優秀な人材を失った王国は一人一人の権力を強めたのだ。無論、国王と魔導王は別格だが。

「そうでありましたら、肩の荷が下りて落ち着いて話せそうです。実は、もう１つお話があるのです。近頃、南の方に旧王国の後継を名乗るアストラル王国なるものが建国されたようなのです。現在、調査を進めていますが、未だに調査団が一人たりとも帰ってきていないのです。そこで、フリーダム王国に協力を要請したい、と陛下がお考えです」
そう言うと、正式なラインハルトと署名された文書を見せる。

「なるほど。我が国の資源も活用したい、という事であっているか？」
陛下も相当頭が切れる男だ。今、我々に戦力を期待してはならないはずだから彼らは軍事的な通行権を求めているという事だ。

「その通りです。此方としてもあなた方の支援がしたい。これを受けてくださればこちらから黒金貨10枚を差し上げましょう」
これはかなり好条件だ。黒金貨1枚で1000万円相当なのだから1億円という事だ。この国の国家予算の2倍ほどある。

「願っても見ない好条件ですな。して、何をお考えなのか教えてくれないか」
陛下は今更駆け引きをせずとも動くと思ったのだろうか直球で聞く。

「全て、善意ですよ。強いて言うならば関係をより強固なものにしたいといったところでしょうか」
彼はにこやかに笑う。その裏にある表情を俺は予想することはできなかった。

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「陛下、最後にアレが厄介ですね」
ラインハルトに向けて使者は独り言のように言う。その場にいないものと会話する技術があるのだろう。

「たしかに、あいつは相当切れる。この俺を満身創痍になったとは言え、仕留めたのはあいつしかいなかった。でも。
彼らはもっと強いと、俺は確信している」
最後に通話を切った後、ラインハルトは独り言で言った。

「I want you to have …だったか。巻き込んで悪いとは思っているんだよ。真」
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申し訳ありません。本当に投稿が遅れてしまいました！いつのまにかお気に入り登録していただいている方も一層増えていて感無量です。如何でしょうか。久しぶりに執筆したからか書き方が変わっていたり英語が出たりしていますけれど気にしないで頂いて…。さて、ここで次回の予告を…と言いたいところなんですが今月中としか言えなくて…。投稿を止めることはないので気長に待っていただいてくれると助かります！最後の英語はアルとラインハルトの過去の話で説明しますので楽しみにしておいてください！
3月25日 改稿済み