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未開の森④
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「ね、寝れねぇ……」
「ねね様……、これは……」
「うん。由々しき事態だ」
翌朝、すぐに行動を始めるため、ここで移動で疲れた体力をしっかりと癒やしておこう。そういうことでいつもより早く眠りにつこうとしたのだが……。
カサカサカサカサとアリの音。寝ようにも寝られない。
もしこれが川のせせらぎや、木々のざわめきならば自然音ASMRとしてぐっすり眠れたのかもしれないが、アリの歩く音はASMRにはならない。
いや、もしかしたらなる人もいるかもしれない。少なくとも、私はこれはASMRにはならないのだ。
まさかここまでとは思わなかった。多少うるさいかなぁと思っていた程度だ。まさかここまでうるさいとは思わなかった。
テントを使って寝ていた。だからこのテントの遮音性が低いだけかと思い、周りを一面壁で囲ってみた。
たしかに音は聞こえなくなった。だが暑い。蒸し暑いのだ。今度は暑くて寝苦しい。
だからといって上を開ければカサカサカサカサが始まるわけ。終わりだよ。
「寝られない!」
「そうだね……」
幸い、今日は満月に近いらしい。比較的明るい夜だし、魔法を使えば辺りを照らせる。
眠気も魔法でなんとかなる。と、思う。
「さっさと片付けよっか」
「うん!」
ということで、徹 夜 確 定。
「うわぁ、気持ち悪いね……」
「そうだね。さすがにここまでアリが居ると……」
こちらから刺激をしない限り噛んでくることはないようだ。だから今のところは不快害虫。直接的な被害はない。
できるだけ距離を置きながら進む。大きいからなんとか居場所が分かると思っていたけど、落ち葉に埋もれていたり、この微妙な黒茶色が夜の落ち葉と同化して分かりにくかったり。案外やっかいな虫らしい。
アリのことを除けば、この森は豊かで良い森だと思う。風が気持ちいいし、害獣も居ない。所々小さな川が流れていて、これは最終的に地面に埋まっていくらしい。地下洞窟の水源だとか。
これは神様からの情報だ。
魔法で位置情報を把握する。順調に巣がある地点に近づいていって居るみたい。アリのうじゃうじゃ居るところに行くと言うだけで鳥肌が立つのだが、この森は上手く開発して観光地化したい。
私のバカンス先候補。
出来ることなら、小さな湖の近くに別荘みたいな木造の小屋を建てて、そこでのんびりと過ごしたいかなぁ……。あぁ、もう王様やめたい……。
いかんいかん! この国は私がちゃんと運営していかなければ! 今は目先のことに集中!
「ねね様!」
「分かってる」
しばらく歩いていると、前方から猛スピードでこちらへ向かってくる大きな魔力を確認した。おそらく魔物がいるのだろう。
少ないとは言っても、魔物がいないわけではない。あくまで少ないだけ。だからもちろん魔物には遭遇するわけ。これは分かっていた。
探知魔法で見てみると、こちらに向かって突進してくる大型の魔物の姿がある。
……ただ。
「すぐ来るよ。あの藪の奥」
「あい!」
そう言って剣を引き抜くレイナ。私も一応準備だけはしておく。
多分大丈夫だと思う。
てこてこと足音を立てて近づいてくる大型の魔物。探知魔法で見ていると、徐々に失速してきている。
そして、目の前の藪がガサガサと揺れ出した。
「くる!」
そうレイナが構えるが、現れた大型の魔物は、黒茶色に染め上げられていた。
「……え?」
「なんか、アリにやられてるみたい」
おそらくイノシシ型の魔物。ただ、周りにびっしりと付いたアリによって既に瀕死の状態らしい。
アリは軍隊になってイノシシの周りにくっ付き、かみついて毒を注入。魔物を倒してしまったらしい。
バタリと横になったイノシシ型の魔物。それを大量のアリたちが下から持ち上げる。そして、私たちが向かって居る方向に一直線。そこそこの速度を出して歩き始めた。
それをポカリと口を開けながら目で追う私たち。この森の生態系の頂点は、クロチャオオアリらしい。
「……私たちも行こっか」
「う、うん……」
「ねね様……、これは……」
「うん。由々しき事態だ」
翌朝、すぐに行動を始めるため、ここで移動で疲れた体力をしっかりと癒やしておこう。そういうことでいつもより早く眠りにつこうとしたのだが……。
カサカサカサカサとアリの音。寝ようにも寝られない。
もしこれが川のせせらぎや、木々のざわめきならば自然音ASMRとしてぐっすり眠れたのかもしれないが、アリの歩く音はASMRにはならない。
いや、もしかしたらなる人もいるかもしれない。少なくとも、私はこれはASMRにはならないのだ。
まさかここまでとは思わなかった。多少うるさいかなぁと思っていた程度だ。まさかここまでうるさいとは思わなかった。
テントを使って寝ていた。だからこのテントの遮音性が低いだけかと思い、周りを一面壁で囲ってみた。
たしかに音は聞こえなくなった。だが暑い。蒸し暑いのだ。今度は暑くて寝苦しい。
だからといって上を開ければカサカサカサカサが始まるわけ。終わりだよ。
「寝られない!」
「そうだね……」
幸い、今日は満月に近いらしい。比較的明るい夜だし、魔法を使えば辺りを照らせる。
眠気も魔法でなんとかなる。と、思う。
「さっさと片付けよっか」
「うん!」
ということで、徹 夜 確 定。
「うわぁ、気持ち悪いね……」
「そうだね。さすがにここまでアリが居ると……」
こちらから刺激をしない限り噛んでくることはないようだ。だから今のところは不快害虫。直接的な被害はない。
できるだけ距離を置きながら進む。大きいからなんとか居場所が分かると思っていたけど、落ち葉に埋もれていたり、この微妙な黒茶色が夜の落ち葉と同化して分かりにくかったり。案外やっかいな虫らしい。
アリのことを除けば、この森は豊かで良い森だと思う。風が気持ちいいし、害獣も居ない。所々小さな川が流れていて、これは最終的に地面に埋まっていくらしい。地下洞窟の水源だとか。
これは神様からの情報だ。
魔法で位置情報を把握する。順調に巣がある地点に近づいていって居るみたい。アリのうじゃうじゃ居るところに行くと言うだけで鳥肌が立つのだが、この森は上手く開発して観光地化したい。
私のバカンス先候補。
出来ることなら、小さな湖の近くに別荘みたいな木造の小屋を建てて、そこでのんびりと過ごしたいかなぁ……。あぁ、もう王様やめたい……。
いかんいかん! この国は私がちゃんと運営していかなければ! 今は目先のことに集中!
「ねね様!」
「分かってる」
しばらく歩いていると、前方から猛スピードでこちらへ向かってくる大きな魔力を確認した。おそらく魔物がいるのだろう。
少ないとは言っても、魔物がいないわけではない。あくまで少ないだけ。だからもちろん魔物には遭遇するわけ。これは分かっていた。
探知魔法で見てみると、こちらに向かって突進してくる大型の魔物の姿がある。
……ただ。
「すぐ来るよ。あの藪の奥」
「あい!」
そう言って剣を引き抜くレイナ。私も一応準備だけはしておく。
多分大丈夫だと思う。
てこてこと足音を立てて近づいてくる大型の魔物。探知魔法で見ていると、徐々に失速してきている。
そして、目の前の藪がガサガサと揺れ出した。
「くる!」
そうレイナが構えるが、現れた大型の魔物は、黒茶色に染め上げられていた。
「……え?」
「なんか、アリにやられてるみたい」
おそらくイノシシ型の魔物。ただ、周りにびっしりと付いたアリによって既に瀕死の状態らしい。
アリは軍隊になってイノシシの周りにくっ付き、かみついて毒を注入。魔物を倒してしまったらしい。
バタリと横になったイノシシ型の魔物。それを大量のアリたちが下から持ち上げる。そして、私たちが向かって居る方向に一直線。そこそこの速度を出して歩き始めた。
それをポカリと口を開けながら目で追う私たち。この森の生態系の頂点は、クロチャオオアリらしい。
「……私たちも行こっか」
「う、うん……」
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