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sequence:52『辺境』

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 涼はとりあえず7時半になるまで買ってきたRPGの続きをすることにした。

「武器は……青銅の剣と木の盾ですね」

 主人公の国は辺境で、あまり余裕がない。

 一応家の人がタンスやツボに入れたまま忘れていた物は冒険者が好きに持ち出していいという法律がある。

 タンスの物は一応家の人に断っておく必要があるのだが。

 これはよくRPGで勇者がタンスやツボを漁ったりしてアイテムを拾ったりすることの回答であり、
要は『家の人が使わずに放置した物なんだし持ってっていいよね?』ということである。

 いささか乱暴なようではあるが、実際冒険者は厄介な魔物を退治してくれるので文句をいわれたりしないのだ。

 ちなみに、初期の所持金は50Gだがそれも国王から渡された物である。

「まあ、初期の持ち物がこんな感じなのもRPGのお約束だよね」

 涼がそういうと、彼にクレアが話しかける。

「リョウ兄ちゃん!」

 すると彼女は家に締まっていた青銅の鎧と青銅の兜を渡してくる。

「ありがとう」

 正直、これも初期装備なのだが好意は素直に嬉しかった。

「さて、まずは外を歩いてみよう」

 涼がそういうと、モンスターが現れる。

 彼が旅立ちの時に持たされた魔物図鑑によると、それはグリーンリザードと呼ばれるトカゲの類だ。

 魔物というよりは動物に近く、魔物の動きが活発でない時も人里に現れることがある。

 人にはあまり危害が及ばないが、作物を食い荒らす害虫であるため退治の対象である。

「悪いけど、みんなに迷惑をかけさせることはさせられません!」

 まあ、これはゲームなので何匹魔物を殺そうが咎められることなんてない。

 むしろ人に危害を及ぼす存在を退治したと感謝さえされるのだが、RPGのモンスターだって生きているんだと考える人も居るのだ。

 現実で考えても熊の類が人里に現れたら退治されるので、RPGのモンスター退治もそういう物だと割り切っていいと思うのだが。

 ともかく、涼は武器を構えてグリーンリザードに向き直る。

「でえい!」

 グリーンリザードはその身のこなしを活かして避けようとするが、剣から斬撃が飛んできてそれに当たってしまう。

「ソードストライクだよ!」

 ソードストライク。所謂真空波であり、それが素早いモンスターを切り裂くのだ。

 まあグリーンリザードは素早いといってもチュートリアルに出てくるくらいなので、あっさり倒れるのも無理はないのだが。

 ただ、グリーンリザードは尻尾を切られたので退散していく。

 涼は戦利品としてグリーンリザードの尻尾を取り、経験値も得るのであった。
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