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sequence:35『物干』

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「ともかく、メイクの落とし方とかは自分で何とかできるかしら?」

「まあ、一応ね。その間着替えを用意しといて」

 涼はそういって洗面所へと向かい、メイクを入念に落とす。

 メイク落としで肌を傷つけないよう、気を遣わないといけない。

 なので少しばかり時間が掛かったため、涼がメイクを落とし終える時にもう着替えは用意されていた。

 無論男物の服だが、涼は少し気になった点があった。

「男物の服とかってどこに干せばいいのかな?」

「問題ないわ。ここのベランダは横から見えないもの」

 生徒たちのプライベートを確保する目的としてそういう配慮がされているのだが、
それが涼の助けになるとは律も思っていなかっただろう。

 ちなみに、遠目からは男物を干してるかどうかなんて判断しずらいため外からは見えても問題ないのだ。

 仮に男物を干していることが見えても、外からなら友達のを干してると思われるだけだろうし。

「そう、ならいいけど」

 そういいつつ、涼は服を脱いでいく。

 彼はパットや補正下着でガチガチに女装しているので、自分で見ても女の子みたいだと思ってしまう。

 だが意を決してそれを脱ぐと、涼は男物の下着と服に着替える。

「ふう、やっぱりこっちの方が落ち着くよ」

「まあ、ここから外に出る時は着替えなきゃだけどね」

 そんな律に、涼はこう返した。

「それは分かってるけど、気持ちの問題だからね」

「まあ、異性の服を着ているって感覚はぬぐえないと思うわ」

「女の人が男の恰好するよりも難しいかな。僕は性別を隠しているんだから尚更だよ」

 そう返した涼に、律はこういった。

「そういう話をした後で悪いんだけど、今日はどうだったかしら?」

「色々あった一日だったけど、いい経験にはなったと思う」

 律の質問に答えた涼に、彼女は頷いた。

「まあ、何事もまずは経験してみないと始まらないものね。そこには同意するわ」

「女子に交じって女子として過ごす、なんて経験はしたくなかったけどね」

 そう苦笑交じりにいう涼を見て律はこういった。

「まあ、笑い飛ばせるならいいわ」

「そうなのかな……?」

 そんな涼に、律はこういった。

「まあ、これから毎日女装して出ることにはなるから。慣れていかないとダメよ」

「ここは女子校の学生寮だしね」

 涼は律の言葉に頷くと、部屋が綺麗なこともあり掃除はせずすぐゲームを始めるのだった。

 涼は律に荷物を持って行ってもらう際、ゲームも一緒に持って行ってもらったのだ。

「ゲームはほどほどに切り上げて、早く寝ないとね」

 涼は自分にそう言い聞かせ、ゲームを少しした後に寝る準備をしてから眠りにつくのだった。
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