銭ゲバ令嬢なまぐさ司祭に溺愛される【R18】

chapter7:become a teacher

古い夢4 その9

ディビッドはディビッドでエステルの犬でしか無いと思うサミュエルに甘ったれと言われて苛立つが、サミュエルはサミュエルでエステルと言う家族を得られ、ハイラント救世主の血族になる誰もが羨むような特権のある立場に不満を持っているディビッドの態度が気に入らない。

しかしどちらも親に捨てられた立場は同じ、同じだからこそサミュエルはディビッドに苛立つのかもしれない、とにかくこの頃あたりからこの2人は犬猿の仲なのだ。

そんな中手のひらをパンパンと叩く音が部屋に響く。

「はーい！ケンカはそこまでよ！」

とエステルが部屋に入ってきて2人の仲裁に入る。

「エステル様早かったっスね！」

サミュエルがさっきとは打って変わってヘラヘラとエステルの方に向かって話す。

「サム、悪かったわね無理言って」

「いいえ～」

「疲れたでしょ？もう休むと良いわ...これからディブと話をしなきゃだから」

「坊ちゃんに説教っスか！あはは」

「そうじゃないわよ、サム」

「ちぇ...なんだかんだでエステル様も坊ちゃんに甘いんスからねぇ...じゃ！帰ってメシ食って風呂入って寝るっス！」

とサミュエルはやや不満そうな顔をしながら部屋から出ていく。

部屋にはディビッドとエステル2人だけになる。

「ディブ」

「...」

ディビッドに優しく呼びかけるエステルだが、ディビッドは無視して黙ったままだ。

「そんなにロストックが恋しかったの？言ってくれれば連れて行く事だって...」

サミュエルが言った事と同じ事をエステルは言い、更に苛立つディビッド。

「それだと駄目なんですよ！私が預言者エステルの弟って事で周囲の目が変わるじゃないですか！そんな風に見られたくないんですよ！」

ただの1人の少年ディビッドとして見てくれるロストックにいる人々がバーレの人々の様になるのをディビッドは恐れていた。

預言者エステルの弟やハイラントの家系と言う立場から『現人神』として盲目的に崇められる事を嫌悪していた。

それこそ教会でしっかり学んだ上で培った信仰心もだがそれ以上にディビッドの本能に嫌悪感の様なものが働くのだ。

ディビッドのその言葉にエステルは声を詰まらせる、普段は不真面目そうだしイタズラ好きな少年だが信仰心は誰よりも高いとエステルはこの2年で実感していた。