銭ゲバ令嬢なまぐさ司祭に溺愛される【R18】

chapter7:become a teacher

鋳物の牛 その2

そしてマキシムにはもう一つ悩む事がある。

以前エステルがウルム王宮内でマキシムの相手の話の事だ。

『マキシム、貴方には特別に教えてあげる、貴方は紫色の瞳で黒髪で私みたいに肩まで伸ばしたすごい若い女の子と結ばれる可能性があるわ』

その指摘した紫色の瞳と肩まで伸ばした黒髪といった特徴がどうにも幼くなったエステルと同じなのだ。

幼くなったエステルの姿を見てその件を思い出して以降、どうもマキシムの心はモヤモヤした気持ちでいっぱいである。

何せ本人は12歳と言ってるがどう見ても10歳未満だし見た目で判断すれば15、6歳は離れている。

いくら精神年齢がそのままだとしても、そんな状態で恋慕なんて犯罪臭しかしない。

それなりな年齢に...最低でも見た目が18歳くらいにまでならないと告白すらできないよなぁ...と思っているのだ。

ただそのくらいになったら自身も30代過ぎのおっさんになってしまうし...と頭を悩ませているのだ。

『でも気を付けなさいね、その女の子の姿がどうにも虚ろだから...その子を狙うライバルは沢山いるって証拠ね、選択を間違えたら別の人のものになるわよ』

そんな話もしていたから何気に焦る、間違いなくライバルは多い、直近のライバルはパーヴェルだ。

彼は実の父サヴェリオに好みが似ているのかエステルに最初から惹かれており、しかも現在は年齢が一番近いし一緒に生活している。

そして今後もっとライバルが増えると予測される為その辺が気になってどうしようもないのだ。

「今まで年齢は気にしてはいなかったけど...流石にまずいもんなぁ...はぁ...」

マキシムは更にため息を吐く、最近1人でいる時ため息を吐くのが本当に多くなった...と思う。

テーブルの上に目をやる。

以前にエステルにプレゼントするつもりで買った青いサファイアで作られたイヤリングをラッピングしてもらった箱が目に入る。

バレンティナにプレゼントするなら年齢に合わせたきちんとしたものがいい、とのアドバイスを覚えてて購入したものだ。

それこそよくエステルが変装して黒髪に変えた時にも合いそうだと思って買ったものだ。

心のどこかで自分の瞳...サファイアブルーのものを身につけて欲しい、とやや下心もあった。

まぁエステルとサヴェリオ国王の婚姻の件やらなんやらで渡せずにそのままにしてしまい、宙ぶらりんな状況のプレゼントにマキシムは笑う。

「...むしろ可能性があるだけでも良いじゃないか、無理だと思っていたんだから」

そう、結婚もしないでずっとそばにいるだけでも、と思っていたのがここに来て自身がエステルの横に立てる可能性が出たのだ。

婚姻までこぎつけたサヴェリオ国王は今回の件でまず除外されたし、最大のライバルとも言えるサミュエルは過去へと旅立ってしまった。

ずるい考えかもしれないが、期待を持つことができただけでも大きい。

「いつか渡せる日が来る様にしないとな...」

そう言ってラッピングした箱を机の引き出しに仕舞い込む、それこそつけるに相応しい年齢になった時に渡そうと思いながら。

そんな時に部屋をノックする音が聞こえる、マキシムはどうぞ、と言って部屋に招き入れる。

やって来たのは異端審問官の1人で、今は実業家風のスーツ姿をしている男だ。

「どうした、何か動きでも？」

「ディビッド様の件で」

男の顔はどこか暗い。

「何かあったのか！？」

話を聞いてマキシムは上着を持って外へ駆け出していくのだった。

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