627 / 841
chapter6:Be baptized
お前に不名誉な名を与える! その5
しおりを挟む避難所では傷ついた人々を回復させていたミンミや避難していた人々が全員空を見上げていた...それこそ光と共に現れた輝く双翼を生やした天使が降臨し、それが塔が崩れ落ちていく様を見届けてながら。
「天使が...神が天使を使わしてくださった!」
と誰かがその姿を見て声を上げ、周囲はそれで騒ぎだす。
でもミンミは正体を知っている。
「あれは...ディビッド様」
リュシフェルからみんなで逃げた時に一瞬背中に羽根が生えていた姿が見えたし、何より自身が神聖力を持ったが故かそれらを全てわかる様になったからだ。
それこそバレンティナが力を持つ預言者である事や、エステルが命を落とした事も神聖力を感じる力もミンミは回復の奇跡の力と同時に持ったのだ。
エステルの神聖力が消え、それを心の中で悲しむミンミ...でも塔が崩れて見えなくなった瞬間に別の神聖力を感じる。
「え?」
それはエステルに似てエステルではない何か...でも力強い神聖力だ。
「ミンミ!」
ぼーっとしてるミンミにノンナが声をかける。
「あ...ごめん」
「ミンミも疲れたんじゃない?初めてなんだし」
ノンナはミンミがぶっ続けで回復の奇跡を怪我をしている人々に使い続けていた...それこそ初めて発現したばかりなのにだ、流石に心配になる。
「でもまだ怪我をして苦しんでいる人もいるんだもの、頑張るよ」
「ミンミ...」
そんな会話をしている間に空が明るくなり、光の雨が降り注ぐ。
「雨...」
暖かな光の雨は身体中の疲れが癒えて、傷が治っていくのがわかる。
それこそ傷ついて酷い状態の避難者達の傷も全てだ。
「き...奇跡だ!塔のあったところから光の柱が現れたんだ!塔を打ち壊した天使様が奇跡を起こして下さったんだ」
「ああ...神は我らをお救い下さった...」
驚きと天使や神に感謝の声が響く中、ミンミは手を組み祈りを捧げる。
「創造者にして忠誠なる神よ...この時代に奇跡を目の当たりにした祝福に感謝します」
神に対して感謝を捧げながらミンミは祈るのだった。
ーー
ー
「ピィ...」
ピッピちゃんを通して司祭や神殿騎士のみんなが地面に敷いてくれたローブやマントの上で眠っている自分の姿を見るのもなんか変な感じね。
肩付近で降り立っておでこをちょん、とつけると一瞬にして自身の意識が自分の身体に戻る。
「ピィ!」
「ピッピちゃんありがとうね!」
ピッピちゃんにお礼を言うと頬をすりすりしてくるわ。
「ティナ!」
身を起こすとディビッドが抱きついてくる。
いつのまにか天使みたいな光り輝く姿からいつもの姿に戻ってるわね。
「ティナが無事でよかった...」
「やぁねさっきまでピッピちゃんを通して無事なのはよく知ってるじゃない...」
「姉上も失って...ティナも目を覚まさなくなったらと思ってしまったら...ううっ...」
ディビッドは泣いている。
さっきまで気丈にしていたけれど、エステルお姉様が亡くなった事...それこそ生贄にされてしまったが故にたとえ慈愛の雨の奇跡を起こしたとしても遺体もない状態のエステルお姉様の復活は無い...そしてエステルお姉様を亡くして最も悲しんでいるのは唯一の姉弟であるディビッドの筈だもの。
ディビッドの背中を撫でながら、慰めの言葉を考える。
そうしていると塔があった場所がなんだか騒がしくなるわ。
「おーい!地下墓地の跡地から死んで吊るされてた司祭達が出てきたぞ!」
マキシムさんが走ってこちらにやってくるわ。
「もしかしたらって事があるかもだから...ディビッド、行きましょう!」
「...はい...」
ディビッドの涙を指で拭って声をかけ立ち上がる。
マキシムさんとディビッドと私で塔の跡地へと向かうと丘にある洞窟みたいなぽっかり開いた穴からぼろぼろの姿だけど元気そうな司祭や神殿騎士の人達が出てくるわ。
みんな良かった良かった!と泣きながら助かった事を喜んでる。
そんな中で1人の初老の司祭の男性が見覚えのある白いローブを身につけた小さな女の子を抱えて出てくるわ。
「ああ...ディビッド様!」
その人物はディビッドに駆け寄ってくるわ...それにしてもこの子って!
0
お気に入りに追加
343
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる