上 下
607 / 841
chapter6:Be baptized

全員守ってあげるから! その1

しおりを挟む
屋敷を出てから避難の為にと使用人の人たちに誘導されながらパーヴェル君と一緒に歩き続けるわ。

私の髪は目立つから髪色だけ前にジョナサンから貰った色の変わる髪留め用の紐で縛って茶色くして、一般の巡礼者の人に紛れながら避難する。

「何故このバーレで地震が...」

「地震なんて過去起こらなかったのに...」

「それに地震の影響で遺跡みたいなのが見えるけど不気味だわ」

とあちこちで不安な声が聞こえる。

確かに地震の後にあの不気味な塔が出てくればそう思うわよね。

「あれは教会が不正を行った証拠なのでは無いのか!!!」

と大声で避難を誘導している修道士の女の子に詰め寄る中年の男の人がいるわ、大人げ無いけどこんな状況ではそう思われても仕方ないのかも...でもあんな若い子に詰め寄るのは違うわ...避難の邪魔になるだろうし。

「あの人のせいじゃ無いのに...」

パーヴェル君がその光景を不安げに見つめる。

「辞めさせないと」

ついその子を助けようとかと思ったら使用人の人に止められる。

「バレンティナ様いけません...今は安全な場所へ移動する事が最優先です...それに彼女らはそんなに弱い者達ではないので」

「...でも」

気がかりだけどそう言われ、そのまま先へと進んでいこうとした時背後から雷が落ちたかのような大きな音が響きわたる。

「え???」

後ろを振り向くと塔から勢いよくこっちへ真っ黒い霧の固まりのようなものがやってくる...あれは悪霊だわ!

悪霊の固まりがまるで巨人のように大きくてよく見ると苦悶したさまざまな顔が見えるもの!

「結界が破られた???」

使用人の人達は焦り出す。

「うわぁぁ!!!」

「きゃーっ!」

沢山の人達がその情景を見てあまりの恐ろしさに叫びながら一斉に走り出す。

確かにあの量がやってくるのはまずいわ!なんとかしなきゃ!

そうしていると手に持つセプター オブ バーレが布越しで光っているのが分かる。

きっと助けになるのかもとその巻いている布を取払う。

セプター オブ バーレに嵌め込まれている赤から青へと色が変わる石の中にある星が光っているわ。

『さぁ神により君に与えられた力を発揮する時が来た!私がやってきたようにすれば大丈夫だから!』

とあの子の声が聞こえる...いいえ、あの子だけじゃ無い沢山の声が頭に響く。

一番大きく聞こえる声は創世の時代に現人神と巨人達を滅ぼす姿を見てきたルーエンの声。

その声に従い、聖句を述べる。

『神は言う』

洗礼式の時に流れ込んだ記憶が蘇る、大地が火で覆われる状況、そこに滅ぶべき邪悪な者が焼かれる姿。

『人々を惑わす邪悪な者よ』

自分達の欲の故に世界を混沌とさせた邪悪な存在は目の前で人を襲い掛かろうとしている。

『その身を焼き尽くす火と硫黄の海に投げ込まれよ!』

火と硫黄の海の一節を読み上げると空から無数の炎に包まれた硫黄の球が悪霊達に降り注ぎ、悪霊達のいる一帯が火と硫黄の海となって焼き尽くされるわ!

悪霊達は身を焼かれて断末魔が響く。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約を破棄したいと言うのなら、私は愛することをやめます

天宮有
恋愛
 婚約者のザオードは「婚約を破棄したい」と言うと、私マリーがどんなことでもすると考えている。  家族も命令に従えとしか言わないから、私は愛することをやめて自由に生きることにした。

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南
ファンタジー
魔法が衰退し、魔導具の補助なしに扱うことが出来なくなった世界。 公爵家の第二子として生まれたフィルズは、幼い頃から断片的に前世の記憶を夢で見ていた。 そのため、精神的にも早熟で、正妻とフィルズの母である第二夫人との折り合いの悪さに辟易する毎日。 ストレス解消のため、趣味だったパズル、プラモなどなど、細かい工作がしたいと、密かな不満が募っていく。 そこで、変身セットで身分を隠して活動開始。 自立心が高く、早々に冒険者の身分を手に入れ、コソコソと独自の魔導具を開発して、日々の暮らしに便利さを追加していく。 そんな中、この世界の神々から使命を与えられてーーー? 口は悪いが、見た目は母親似の美少女!? ハイスペックな少年が世界を変えていく! 異世界改革ファンタジー! 息抜きに始めた作品です。 みなさんも息抜きにどうぞ◎ 肩肘張らずに気楽に楽しんでほしい作品です!

ショートショート集 ファイナリストの決戦は一秒で終わる。

沼津平成
大衆娯楽
沼津平成の珠玉のショートショート集をアルファポリスで特別公開! ジャンル不明。大衆娯楽の作品も純文学ぅな作品も!

自衛官、異世界に墜落する

フレカレディカ
ファンタジー
ある日、航空自衛隊特殊任務部隊所属の元陸上自衛隊特殊作戦部隊所属の『暁神楽(あかつきかぐら)』が、乗っていた輸送機にどこからか飛んできたミサイルが当たり墜落してしまった。だが、墜落した先は異世界だった!暁はそこから新しくできた仲間と共に生活していくこととなった・・・ 現代軍隊×異世界ファンタジー!!! ※この作品は、長年デスクワークの私が現役の頃の記憶をひねり、思い出して趣味で制作しております。至らない点などがございましたら、教えて頂ければ嬉しいです。

私を侮辱するだけの婚約者はもういりません!

杉本凪咲
恋愛
聖女に選ばれた男爵令嬢の私。 しかし一向に力は目覚めず、婚約者の王子にも侮辱される日々を送っていた。 やがて王子は私の素性を疑いはじめ……

私の愛する人は、私ではない人を愛しています

ハナミズキ
恋愛
代々王宮医師を輩出しているオルディアン伯爵家の双子の妹として生まれたヴィオラ。 物心ついた頃から病弱の双子の兄を溺愛する母に冷遇されていた。王族の専属侍医である父は王宮に常駐し、領地の邸には不在がちなため、誰も夫人によるヴィオラへの仕打ちを諫められる者はいなかった。 母に拒絶され続け、冷たい日々の中でヴィオラを支えたのは幼き頃の初恋の相手であり、婚約者であるフォルスター侯爵家嫡男ルカディオとの約束だった。 『俺が騎士になったらすぐにヴィオを迎えに行くから待っていて。ヴィオの事は俺が一生守るから』 だが、その約束は守られる事はなかった。 15歳の時、愛するルカディオと再会したヴィオラは残酷な現実を知り、心が壊れていく。 そんなヴィオラに、1人の青年が近づき、やがて国を巻き込む運命が廻り出す。 『約束する。お前の心も身体も、俺が守るから。だからもう頑張らなくていい』 それは誰の声だったか。 でもヴィオラの壊れた心にその声は届かない。 もうヴィオラは約束なんてしない。 信じたって最後には裏切られるのだ。 だってこれは既に決まっているシナリオだから。 そう。『悪役令嬢』の私は、破滅する為だけに生まれてきた、ただの当て馬なのだから。

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。 これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。 しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。 それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。 事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。 妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。 故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

処理中です...