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chapter6:Be baptized

地下墓地 その9

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地下墓地の69階を訪れて半日を過ぎたあたり、封印式の構築もほぼ終わりが見えた辺り。

階層の真ん中に位置する床には当初の封印の三倍くらいの大きさの白っぽいガラス質の球体が半分ほど埋まったような状態までになっており、その表面にはディビッドが書いていた封印式の構築図と同じものがびっしりと赤い文字で描かれている。

ちなみにこの赤い文字自体がディビッドの血を媒介して書かれており、今も指から血を流し続けそれを媒介して描き続けている。

流石にずっと集中し続けている為かディビッドとジョナサン2人は疲れを見せている様ではある。

「あんだけ血を使ってるし後で坊ちゃんにコレ飲ませておいた方がいいっすね」

と以前ジョナサンがディビッドの為に作った増血剤の余り(思いっきり不味い鎮静剤成分配合)をポケットから取り出すサミュエル。

サミュエルはジョナサンの作った薬を時折失敬するちゃっかり者でもある。

「なんとも毒々しいなぁ」

と緑から蛍光ピンクに色が変わる謎の液体X増血剤の入った瓶を見て苦笑いをするマキシム。

「あのくらいの出血量なら無理に飲ませなくても良いわよ」

「えー面白いのにー」

とエステルに咎められサミュエルはぶつぶつ言いながらポケットに仕舞い込む。

「さて終わりそうよ」

と封印式構築の終盤を見届ける3人。

全て描き終わると封印式が大きく光って文字が完全に定着する。

「...終わりました...」

気を張っていたのが一気に緩んで上を向きながらその場に座り込むディビッド。

「あ~疲れた~」

ジョナサンはそのまま大の字になって倒れ込む、ある意味ずっと弱い出力の術式を展開し続けているのと同じで精神的にすり減るのだ。

ディビッドは血が滴る指の傷を回復の奇跡ヒールで治すと深く切った場所が綺麗に治ってしまう。

「はいはーい、お疲れ様っすー」

とサミュエルがポーションの瓶の蓋を開けてディビッドとジョナサンそれぞれの口に突っ込む。

「うぇぇぇ...」

「うげっ!」

「あ!うっかり間違ってこっちの封あけちゃったっすね!」

ディビッドとジョナサンは咽せる、しかもポーションではなくさっき出した増血剤を飲ませたのだ。

それこそ疲労困憊なのに、とんでもなく不味い薬を飲まされ悶絶する2人を見てケラケラと笑うサミュエル。

「おいおい...大丈夫かよ...」

とマキシムが一緒に来ていた神殿騎士に声をかけて持ってきた水を受け取り、それぞれに渡すと2人は一気に飲み干す。

「何するんですかぁ!」

とサミュエルに対して声を荒げるディビッド、まぁ怒るのは当然である。

「でも元気になったみたいっすね!」

「すっげぇ不味いけど、これが1番効き目はあるからなぁ...ううう」

と自分で作った薬の不味さにまだ苦しむジョナサンは口直しにとポケットから飴玉を取り出して包み紙を開けて口に放り込む。

「ほら、お前もこれ」

とジョナサンはディビッドに飴玉を渡すとそれを口にすると、甘みの中のどことなくポーションの風味を感じる。

「あのジャリジャリポーションのジャリジャリを飴玉にしてみたんだよ」

「あーだからなんとなくそれっぽい味が」

ジョナサンがバーレに向かう道中飲んだ特製ポーションだが溶け残ったジャリジャリの砂糖っぽくなって飲みづらいと思って戻った後すぐに加工して飴玉にしたのだ。

飴が溶ける事に徐々に回復していくのが実感する。

「飴玉としては文句ないけど、飴が溶けなきゃ体力回復しないし失敗作だな...」

そんな事を呟きながら、ポーションの改良に頭を回し始めるジョナサン。

「全く騒々しいわねぇ、ほら貴方達食事でもしなさい...私達は先に済ませているから」

とエステルは司祭の1人に声をかけてディビッドとジョナサンの食事を準備をさせる。

鉄製のカップに入った暖かいスープと固いパン、干し肉が用意されそれぞれが受け取り、祈りを捧げた後、空腹だったのか2人はそれをガツガツと食べ始める。

その姿を見ながらエステルは懐に入れた懐中時計を見る、現時点で夜の10時を回ったあたりだ、大体始めたのが昼過ぎだ。

まぁ元々このくらいの封印式を構築するのには3人以上で場合によっては2、3日かかっていた為このくらいなら早い内だろう。

「今日はここで一泊したらそのまま下の階へ進むわよ、何かあったらいけないからしっかり休むようにね」

とエステルが全員に声をかけるのだった。
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