565 / 841
chapter6:Be baptized
洗礼式 その14
しおりを挟む
「...シャウルには『罰』が下ったんですよ...本来ならディビッドのその髪と瞳の色は悪魔の呪いが消えた証であり本来の姿なのですから、それを嫉妬深さの為に姉の不貞を疑いディビッドをすて...いや遠くへやってしまったのですから」
ヘルムートは顔を上げてディビッドの顔を見る。
基本ベースはシャウルに良く似ている顔立ちだが、所々にドロレスの面影が重なる顔。
ただ性格は違ってニコニコと笑顔を見せてばかりで、どこか不真面目でいたずら好きで無茶苦茶な事ををしでかしてもやるべき事はさらっとやってのけるも、聖職者として公の場に出るには難があり、正直壊滅的な所はあるがどこか憎めず甘やかしてしまうような性格のディビッド。
孤児としての生活を12歳まで送る事になって気の毒だと思う反面、むしろ12年間の孤児院での生活はディビッドにとっていろいろ悪い影響から守られる結果となったのかもしれない。
ロストックのフラウエン教会の孤児院を運営していた司祭ナサニエルの元での生活は良いものだったらしく、エステルがはしゃいで無理にバーレに連れて帰った時には暫く寂しくてこっそり泣いている事を知っていた。
ちなみにそれに対する反発やエステルやハイラント信者とも言える家の者達など周囲の甘やかしもあって、今のやや難のある性格になったのは否めない。
「叔父上はっきり言って良いですよ?実の父親に捨てられた事もティナは知ってますし」
「...お前は本当にそのあたり悲観的にならない所が美徳というか...いや、それ以上に言わねばならないのはディビッド、シャウルと同じ過ちを、嫉妬に狂い道を踏み外す事が無い事を私は願うのだ、シャウルの嫉妬は自身も周囲を苦しめる結果となったお前にもバレンティナ様にもそんな思いをさせたく無いのだ...」
ヘルムートは心配をしていたのだ、シャウルは許されない事をした...姉であるドロレスの死もエステルの事もそして捨てられたディビッドの事...事の発端は全てシャウルのドロレスに対する一方的な執着から生じた嫉妬故だ。
性格が似ていないからそうはならないだろう、と思っていたがここ数ヶ月の報告に実際の目で見た時に、その本質に同じものを感じてしまうのだ。
『生贄の娘の血故に生まれた子が女であれば男を惑わし、男であればその血を守る為に女を囲う』というのはあながち間違いないのだろう。
不安な表情を見せるヘルムート、なんだかんだでエステルもディビッドもヘルムートにとっては自分の子供の様に思っているのだ。
「大丈夫ですよ...叔父上、私は父の様にならないと教えられましたから...そんな事をすればどんな結末が待っているかも...」
「?」
ディビッドの言葉に司祭ナサニエルの事か?とヘルムートは頭を巡らせるが、その事に関しては創造者にして忠節なる神から直に見せられたトラウマ級の夢が原因である。
自身がもし父シャウルと同じくそんな事をすれば、今この手に抱くバレンティナを失う事になるという強烈な警告は二度と味わいたく無いのだ。
「...そうか...おや?バレンティナ様...」
ディビッドが膝に乗せて抱き込んでしまっているバレンティナは疲れの為かいつのまにかスヤスヤ、と眠ってしまっている。
「眠ってしまったのですね、さっきも眠そうにしてましたし...一度寝ちゃうと何をしても起きてくれないんですよねぇ」
「流石にバレンティナ様の部屋に戻って寝かせてあげなさい」
とディビッドの言葉に何でそんな事を知っているのか引っ掛かる気もするが、そのままにするのもいけないとヘルムートは人を呼ぶと、すぐに使用人が現れる。
「別に家の者を呼ばずとも私が連れて行きますよ」
「いやお前が勝手に自分の部屋に連れ込んだり、入り浸ったりするかもだからな」
やや不満気にバレンティナを抱き上げて使用人と共に部屋を出ようとするディビッド。
その後ろ姿を見てヘルムートはシャウルの面影を見る。
確かにシャウルに関してはどちらかというと嫌われていたし、姉の件で恨む事も多かったが、よく知った間柄であったし、張り合いながらの腐れ縁のような関係でもあった為そこまで仲は悪くなかった...とヘルムートは思っているのだ。
部屋を出る姿を見てから目を瞑る
「シャウル、ディビッドはお前とは違う道を歩める自信があるみたいだぞ」
小さい頃の自分と姉ドロレスとシャウルの姿を思い出しながらヘルムートは呟くのだった。
ヘルムートは顔を上げてディビッドの顔を見る。
基本ベースはシャウルに良く似ている顔立ちだが、所々にドロレスの面影が重なる顔。
ただ性格は違ってニコニコと笑顔を見せてばかりで、どこか不真面目でいたずら好きで無茶苦茶な事ををしでかしてもやるべき事はさらっとやってのけるも、聖職者として公の場に出るには難があり、正直壊滅的な所はあるがどこか憎めず甘やかしてしまうような性格のディビッド。
孤児としての生活を12歳まで送る事になって気の毒だと思う反面、むしろ12年間の孤児院での生活はディビッドにとっていろいろ悪い影響から守られる結果となったのかもしれない。
ロストックのフラウエン教会の孤児院を運営していた司祭ナサニエルの元での生活は良いものだったらしく、エステルがはしゃいで無理にバーレに連れて帰った時には暫く寂しくてこっそり泣いている事を知っていた。
ちなみにそれに対する反発やエステルやハイラント信者とも言える家の者達など周囲の甘やかしもあって、今のやや難のある性格になったのは否めない。
「叔父上はっきり言って良いですよ?実の父親に捨てられた事もティナは知ってますし」
「...お前は本当にそのあたり悲観的にならない所が美徳というか...いや、それ以上に言わねばならないのはディビッド、シャウルと同じ過ちを、嫉妬に狂い道を踏み外す事が無い事を私は願うのだ、シャウルの嫉妬は自身も周囲を苦しめる結果となったお前にもバレンティナ様にもそんな思いをさせたく無いのだ...」
ヘルムートは心配をしていたのだ、シャウルは許されない事をした...姉であるドロレスの死もエステルの事もそして捨てられたディビッドの事...事の発端は全てシャウルのドロレスに対する一方的な執着から生じた嫉妬故だ。
性格が似ていないからそうはならないだろう、と思っていたがここ数ヶ月の報告に実際の目で見た時に、その本質に同じものを感じてしまうのだ。
『生贄の娘の血故に生まれた子が女であれば男を惑わし、男であればその血を守る為に女を囲う』というのはあながち間違いないのだろう。
不安な表情を見せるヘルムート、なんだかんだでエステルもディビッドもヘルムートにとっては自分の子供の様に思っているのだ。
「大丈夫ですよ...叔父上、私は父の様にならないと教えられましたから...そんな事をすればどんな結末が待っているかも...」
「?」
ディビッドの言葉に司祭ナサニエルの事か?とヘルムートは頭を巡らせるが、その事に関しては創造者にして忠節なる神から直に見せられたトラウマ級の夢が原因である。
自身がもし父シャウルと同じくそんな事をすれば、今この手に抱くバレンティナを失う事になるという強烈な警告は二度と味わいたく無いのだ。
「...そうか...おや?バレンティナ様...」
ディビッドが膝に乗せて抱き込んでしまっているバレンティナは疲れの為かいつのまにかスヤスヤ、と眠ってしまっている。
「眠ってしまったのですね、さっきも眠そうにしてましたし...一度寝ちゃうと何をしても起きてくれないんですよねぇ」
「流石にバレンティナ様の部屋に戻って寝かせてあげなさい」
とディビッドの言葉に何でそんな事を知っているのか引っ掛かる気もするが、そのままにするのもいけないとヘルムートは人を呼ぶと、すぐに使用人が現れる。
「別に家の者を呼ばずとも私が連れて行きますよ」
「いやお前が勝手に自分の部屋に連れ込んだり、入り浸ったりするかもだからな」
やや不満気にバレンティナを抱き上げて使用人と共に部屋を出ようとするディビッド。
その後ろ姿を見てヘルムートはシャウルの面影を見る。
確かにシャウルに関してはどちらかというと嫌われていたし、姉の件で恨む事も多かったが、よく知った間柄であったし、張り合いながらの腐れ縁のような関係でもあった為そこまで仲は悪くなかった...とヘルムートは思っているのだ。
部屋を出る姿を見てから目を瞑る
「シャウル、ディビッドはお前とは違う道を歩める自信があるみたいだぞ」
小さい頃の自分と姉ドロレスとシャウルの姿を思い出しながらヘルムートは呟くのだった。
0
お気に入りに追加
342
あなたにおすすめの小説
婚約を破棄したいと言うのなら、私は愛することをやめます
天宮有
恋愛
婚約者のザオードは「婚約を破棄したい」と言うと、私マリーがどんなことでもすると考えている。
家族も命令に従えとしか言わないから、私は愛することをやめて自由に生きることにした。
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです
紫南
ファンタジー
魔法が衰退し、魔導具の補助なしに扱うことが出来なくなった世界。
公爵家の第二子として生まれたフィルズは、幼い頃から断片的に前世の記憶を夢で見ていた。
そのため、精神的にも早熟で、正妻とフィルズの母である第二夫人との折り合いの悪さに辟易する毎日。
ストレス解消のため、趣味だったパズル、プラモなどなど、細かい工作がしたいと、密かな不満が募っていく。
そこで、変身セットで身分を隠して活動開始。
自立心が高く、早々に冒険者の身分を手に入れ、コソコソと独自の魔導具を開発して、日々の暮らしに便利さを追加していく。
そんな中、この世界の神々から使命を与えられてーーー?
口は悪いが、見た目は母親似の美少女!?
ハイスペックな少年が世界を変えていく!
異世界改革ファンタジー!
息抜きに始めた作品です。
みなさんも息抜きにどうぞ◎
肩肘張らずに気楽に楽しんでほしい作品です!
自衛官、異世界に墜落する
フレカレディカ
ファンタジー
ある日、航空自衛隊特殊任務部隊所属の元陸上自衛隊特殊作戦部隊所属の『暁神楽(あかつきかぐら)』が、乗っていた輸送機にどこからか飛んできたミサイルが当たり墜落してしまった。だが、墜落した先は異世界だった!暁はそこから新しくできた仲間と共に生活していくこととなった・・・
現代軍隊×異世界ファンタジー!!!
※この作品は、長年デスクワークの私が現役の頃の記憶をひねり、思い出して趣味で制作しております。至らない点などがございましたら、教えて頂ければ嬉しいです。
私の愛する人は、私ではない人を愛しています
ハナミズキ
恋愛
代々王宮医師を輩出しているオルディアン伯爵家の双子の妹として生まれたヴィオラ。
物心ついた頃から病弱の双子の兄を溺愛する母に冷遇されていた。王族の専属侍医である父は王宮に常駐し、領地の邸には不在がちなため、誰も夫人によるヴィオラへの仕打ちを諫められる者はいなかった。
母に拒絶され続け、冷たい日々の中でヴィオラを支えたのは幼き頃の初恋の相手であり、婚約者であるフォルスター侯爵家嫡男ルカディオとの約束だった。
『俺が騎士になったらすぐにヴィオを迎えに行くから待っていて。ヴィオの事は俺が一生守るから』
だが、その約束は守られる事はなかった。
15歳の時、愛するルカディオと再会したヴィオラは残酷な現実を知り、心が壊れていく。
そんなヴィオラに、1人の青年が近づき、やがて国を巻き込む運命が廻り出す。
『約束する。お前の心も身体も、俺が守るから。だからもう頑張らなくていい』
それは誰の声だったか。
でもヴィオラの壊れた心にその声は届かない。
もうヴィオラは約束なんてしない。
信じたって最後には裏切られるのだ。
だってこれは既に決まっているシナリオだから。
そう。『悪役令嬢』の私は、破滅する為だけに生まれてきた、ただの当て馬なのだから。
王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。
これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。
しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。
それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。
事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。
妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。
故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる