銭ゲバ令嬢なまぐさ司祭に溺愛される【R18】

chapter6:Be baptized

惑わす者の甘言 その8

でも人を好きになる気持ちって何なんだろう...だんだん分からなくなってきたわ。

『特別だカら？愛されていルからト言っテ、貴女ハそうヤって振り回されル事を許セるのですカ？』

綺麗ではあるけれど人間味のないその男の声を聞いて背筋が凍る...

「だ！誰！！！！」

ミンミが驚き惑う声、私の横にいつのまにか座っている燕尾服の男の姿。

美しい顔立ちと長くて綺麗なプラチナブロンドの髪に深い藍色の瞳..だけどその瞳は深い闇そのもの。

そう...笑顔で人間を唆し惑わす者、人類の敵そのもの...私は二度この男に攫われて危険に晒された。

「リュシフェル...」

『無理矢理に身体を奪ワれて子供を孕ム事を強要さレて、仕方ないトずるずる関係を続ケて、挙句ノ果てに見知ラぬ場所で敵対心を持つ人に囲まレて生きる事ガ貴女の望む事ですカ？』

「！！」

『何故貴女が苦しマなければならナいのか、その理由はわかってまスでしょ？原因は忌々しイあの男ダという事ニ』

リュシフェルに顔を覗き込まれながら、そう問われる。

「私は...」

『先程言ってタじゃなイですか？大嫌いっテ、もう二度ト顔も見たくなイって、その言葉叶えてあげますヨ』

ニヤッと笑う顔がまるで蛇のようで生理的に嫌悪感を抱くも、その言葉には同意する事も多い。

『ウルムの貴族として自由で困る事もない生活を送る方が良いじゃナいですか？貴女はウルム国内では王族以外に敵う相手はもう居ないんですからネ』

「お姉さんからっ！離れなさい！！」

ミンミが私の腕を掴んで引っ張り距離を取って、近くに置いてあったほうきを持って構えるけれど、怖いのか手が震えているわ。

「『アレ』は危ない存在だよ！お姉さん逃げよう...きゃあ！」

ミンミの身体は勝手に宙に浮いたと思ったら床に叩きつけられる。

「ミンミ！」

倒れたミンミに駆け寄る、大変！頭から血が出てるわ！

『流石に彼の神の僕！その自己犠牲ハ美しいですネ...反吐が出ル程ニ』

「ううう...お姉さん...逃げて、『アレ』は悪魔だから...」

「貴女を置いてはいけないわ...」

ミンミは痛みを堪えながら私を逃そうとするけど放ってなんておけないわ。

『さァ！一緒に行きマしょウ！貴女ノ望みヲ叶えテあげまスかラ！』

「きゃあ！」

リュシフェルに抱きつかれるように捕まってしまう！

「お...お姉さん...」

「離してっ！貴様の甘言など絶対に聴くものですか！」

こんな奴に何度もいいように扱われてならない！

それにディビッドに会えなくなるなんてやっぱり嫌！

私ディビッドのことやっぱり好きだから！

そう叫ぶと、頭の中から声が聞こえる。

『良かった！君がそう決断してくれると信じてた！』

あの子の声と共に私の代わりに身体の主導権が切り替わっていくわ。