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chapter6:Be baptized
姉の罪 その5
しおりを挟むバレンティナがいる部屋と同じ内装の部屋にアーヴァインと同室のディビッドはしょぼくれ気味でベッドに横になっている。
「ティナの所に行きたい...」
さっきまで悪魔を倒していた人物とは思えない程情けない声でそう言うディビッド。
「そんなにしょぼしょぼするな」
アーヴァインはシャワーから戻ってもまだしょぼくれているディビッドを見てそう言う。
「少しでも離れているのが引き裂かれる様な気持ちで辛いんですよ...辛い...」
辛い辛いと嘆いてばかりでそんな情けない姿に呆れ気味なアーヴァイン。
「まぁまだ付き合って半年くらいならなぁ」
まだ若い恋人同士だし、とアーヴァインは思ってそう言う。
「...半年じゃ無いんですよ」
ディビッドはぼそり、と呟く。
「何か言ったか?」
「いいえ...はぁ...辛い」
ディビッドから放たれるどんよりした空気の重さを感じるアーヴァイン、これをマキシム達は宥めてたりするのか、と苦笑いをする。
「同じ列車に乗ってるしバーレでも一緒にいる予定なんだろう?それにまたウルムに戻れば邪魔するエステルも居なくなるからそれまで辛抱するべきだなぁ...それこそその辺慣れておかなきゃ何か大事があって数年離れる事があったらどうするんだ?」
「...慣れませんよ...きっと...だって私の血を引く実の父や祖先の男達で『白の射手』に選ばれた人々はみんなこんな感じなんだって姉上が言ってましたし、私自身ティナに再度会うまでこんな感じになるなんて思いませんでしたもの」
ディビッドはアーヴァインに背を向けながらそう言う。
きっとその強い恋慕の気持ちは『白の射手』自身の子孫を残す為の本能に近いものなのだろう。
歴代の悪魔を滅ぼす力を持つ『白の射手』として選ばれたバーレの真の王である男は妻と選んだ者を深い愛情と嫉妬深い気持ちを持って囲いこみ、女は『生贄の娘の血』故に周囲の強い力を持つ男を惹きつけ強い子孫を残そうとする、と言う話はあながち嘘では無いんだろう、と今のディビッドを見てアーヴァインは思う。
そしてその先の将来、人類の敵である悪魔リュシフェルを滅ぼす為に産まれてくるハイラントとはどんな存在なのだろう...とも。
「難儀な恋煩いだなぁ」
ディビッドの事をやや可哀想に思えてくるアーヴァイン。
「難儀で苦しくて辛いけどもティナが好きなんですよ...はぁ...」
「はは...」
アーヴァインはただ苦笑するしかできなかった。
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