331 / 841
chapter5:Whereabouts of the curse
いろいろあるのよ その2
しおりを挟む
王城の庭園がよく見えるテラスでエステルはサヴェリオを待っていた。
近くには護衛としてマキシムもずっと付き従う。
流石に大国ウルムの城の庭園だけあってどんな季節でも術式により外の温度すら一定に保たれているらしく、秋の季節には見ない花が咲き誇る。
話によるとここの花々は前王の正妃であり、サヴェリオの母が好きだったと言う花を年中咲かせており、今もそのままだと言う...春の庭園と呼ばれる特別な場所でもある。
全体的に薄桃色の花が多い、最も目に入るのはアーモンドの木に咲き誇る花だ。
「何だか不思議な場所よね...秋なのに春の花が咲いているのって...」
アーモンドの花と実はトラウゴット教の象徴する花でもある、ディビッドの銃にもエステルの持つセプター オブ バーレにも彫刻されている。
その昔、導きの預言者マーシャがアーモンドの木で作られた杖を持ち、奇跡でその杖に花と実がなったという由来からだ。
エステルは美しくても不自然な空間をじっと見つめる。
しばらくそうしていると、サヴェリオがやって来た。
「エステル、待たせたな...わざわざ謁見の許可を取らなくとも良いものを」
いつも表情を変える事なく氷の様だとも評されるサヴェリオの表情はとてもそうとは思えない。
「いいえ陛下、私はまだ陛下の『妻』ではありませんし」
とエステルは微笑み返す。
「陛下では無い、エマヌエーレと...」
「はぁ...変わらないわね、全く」
とエステルは呆れ顔でため息を吐く。
「余の想いはずっと変わらぬよ」
「...そうかしら?」
「エステル、其方の方こそ昔よりも計算高くなったと思うぞ」
「...10代のあの頃とは違うもの、貴方もだけど私もいい年の大人なのよ?よくもまぁそんな台詞が吐けるわねぇ、それにあの式典やら夜会のパフォーマンス恥ずかしくてたまったものじゃないわ...」
エステルが随分と砕けた話し方で抗議をしていて兜越しだがマキシムが驚く。
「その性格はあまり変わらぬな、まぁそれが其方の良い所だがな」
サヴェリオはエステルに近づく、ピッタリと。
「近いわ...貴方とは政治上での婚姻関係、契約上の白いモノ、私は神との制約をした以上あの時と違ってこの身を穢す事は出来ない事は知っているでしょう?」
「ああ、でも穢さねば良いだけだ、甘える事くらいは許されるであろう?」
とそのままサヴェリオに抱きしめられる、エステルはそれを甘んじて受け入れる。
ーーーこの世で最も偉大な王でありながら、最も不遇な方よね...
エステルはそう思う...壊れてしまった哀れな人だと。
そう、サヴェリオをこうしてしまった原因の一つがエステル自身でもあると自覚はしている。
それが仕方ない事だったとしてもだ。
エステルは何処か自身が関わった故に不幸にしてしまったと思う者に甘い所があるのかもしれない、それはディビッドにも言える。
「ではそれを許可するから、私個人としてお願いしたい事があるの?」
「ああ...」
近くには護衛としてマキシムもずっと付き従う。
流石に大国ウルムの城の庭園だけあってどんな季節でも術式により外の温度すら一定に保たれているらしく、秋の季節には見ない花が咲き誇る。
話によるとここの花々は前王の正妃であり、サヴェリオの母が好きだったと言う花を年中咲かせており、今もそのままだと言う...春の庭園と呼ばれる特別な場所でもある。
全体的に薄桃色の花が多い、最も目に入るのはアーモンドの木に咲き誇る花だ。
「何だか不思議な場所よね...秋なのに春の花が咲いているのって...」
アーモンドの花と実はトラウゴット教の象徴する花でもある、ディビッドの銃にもエステルの持つセプター オブ バーレにも彫刻されている。
その昔、導きの預言者マーシャがアーモンドの木で作られた杖を持ち、奇跡でその杖に花と実がなったという由来からだ。
エステルは美しくても不自然な空間をじっと見つめる。
しばらくそうしていると、サヴェリオがやって来た。
「エステル、待たせたな...わざわざ謁見の許可を取らなくとも良いものを」
いつも表情を変える事なく氷の様だとも評されるサヴェリオの表情はとてもそうとは思えない。
「いいえ陛下、私はまだ陛下の『妻』ではありませんし」
とエステルは微笑み返す。
「陛下では無い、エマヌエーレと...」
「はぁ...変わらないわね、全く」
とエステルは呆れ顔でため息を吐く。
「余の想いはずっと変わらぬよ」
「...そうかしら?」
「エステル、其方の方こそ昔よりも計算高くなったと思うぞ」
「...10代のあの頃とは違うもの、貴方もだけど私もいい年の大人なのよ?よくもまぁそんな台詞が吐けるわねぇ、それにあの式典やら夜会のパフォーマンス恥ずかしくてたまったものじゃないわ...」
エステルが随分と砕けた話し方で抗議をしていて兜越しだがマキシムが驚く。
「その性格はあまり変わらぬな、まぁそれが其方の良い所だがな」
サヴェリオはエステルに近づく、ピッタリと。
「近いわ...貴方とは政治上での婚姻関係、契約上の白いモノ、私は神との制約をした以上あの時と違ってこの身を穢す事は出来ない事は知っているでしょう?」
「ああ、でも穢さねば良いだけだ、甘える事くらいは許されるであろう?」
とそのままサヴェリオに抱きしめられる、エステルはそれを甘んじて受け入れる。
ーーーこの世で最も偉大な王でありながら、最も不遇な方よね...
エステルはそう思う...壊れてしまった哀れな人だと。
そう、サヴェリオをこうしてしまった原因の一つがエステル自身でもあると自覚はしている。
それが仕方ない事だったとしてもだ。
エステルは何処か自身が関わった故に不幸にしてしまったと思う者に甘い所があるのかもしれない、それはディビッドにも言える。
「ではそれを許可するから、私個人としてお願いしたい事があるの?」
「ああ...」
0
お気に入りに追加
343
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。
白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる