上 下
301 / 841
chapter4:Older sister, invasion

寵愛を受ける者の憂鬱 その1

しおりを挟む
そんな会話をしている中で部屋に誰かが入って来る...サヴェリオ陛下だわ!

私とお兄様は深く頭を下げる...そう...エステルお姉様はサヴェリオ陛下の妻で妃の一人となる方だもの、本来なら勝手に会うことなど出来ないから。

「エステル...倒れたと聞いたが大丈夫か?」

サヴェリオ陛下はエステルお姉様に駆け寄る、冷徹で表情を崩す事の無い陛下が心配そうな声でお姉様に話しかけるわ。

「ええ...」

「そうか...」

ちょっとだけ顔を上げて陛下とお姉様に目をやると、陛下がお姉様を抱きしめているわ!

あんなに愛おしそうな目でお姉様を見つめるなんて、サヴェリオ陛下はエステルお姉様が本当に好きなのね。

でも、何だかお姉様の表情は硬いわ...好きで陛下の元にいる訳じゃ無いって事なのかしら?

そう思っている内に陛下が此方を向くから、深く頭を下げる。

「アルカンタル侯シルヴィオとバレンティナ...余の妻に何様か?」

その声は冷たい...背筋がざわりとするわ。

「エマヌエーレ...バレンティナは私の弟の妻となる身...もう身内なのです、それに私を助けてくれたのはバレンティナなのです」

エステルお姉様はそう言うと、陛下はそうか、と言って私達に顔を上げる様に促す。

「そうよな...そうなれば其方等二人も余の親族となるものな」

笑顔を浮かべながらそう話す...確か陛下の言っている通りだわ、もしかしてそれも見越して今回爵位が上がる話もあったのかしら?

「至極光栄にございます」

お兄様がいつになく丁寧に話をするわね。

「シルヴィオ...そこまで畏まるな、余との仲ではないか」

陛下は笑いながらお兄様にそう話をするけど、もしかしてサヴェリオ陛下とお兄様って結構近い関係にあるのかしら?

「バレンティナも...特に其方は余の義妹となるのだ...それにエステルを助けた事感謝するぞ」

陛下は手招きをしているわ、お兄様に陛下の近くへ、と促されるので陛下の近くへ寄る。

「エステルもバレンティナも同じ髪色と瞳故かまるで本物の姉妹の様だな...その姿は『生贄の娘』と言われるが...」

そう言ってサヴェリオ陛下が私の頭を撫でるわ!ひゃあ畏れ多いわ!

「エマヌエーレ...」

私が怖がっていると思ったのかお姉様が少し睨むような目で陛下を見つめるわ。

「エステル、バレンティナは其方の弟のモノだ、手出しはせぬ、其方とのはしっかり果たすから心配するな」

「...ええ」

サヴェリオ陛下はエステルお姉様をうっとりと見つめるわ...それにしても約束って何なのかしら?

それと、その二人の姿をお兄様がいつになく切なそうに、目を向けない様にしてる。

そうよね、お兄様はエステルお姉様の事好きだったのだもの...でもそれはマキシムさんも同じ、いえ...長い付き合いがある分マキシムさんの方が辛いのかもしれないわ。

でもエステルお姉様の相手は誰もが手を出す事の出来ない、サヴェリオ陛下の妃となってしまったのだものね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約を破棄したいと言うのなら、私は愛することをやめます

天宮有
恋愛
 婚約者のザオードは「婚約を破棄したい」と言うと、私マリーがどんなことでもすると考えている。  家族も命令に従えとしか言わないから、私は愛することをやめて自由に生きることにした。

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南
ファンタジー
魔法が衰退し、魔導具の補助なしに扱うことが出来なくなった世界。 公爵家の第二子として生まれたフィルズは、幼い頃から断片的に前世の記憶を夢で見ていた。 そのため、精神的にも早熟で、正妻とフィルズの母である第二夫人との折り合いの悪さに辟易する毎日。 ストレス解消のため、趣味だったパズル、プラモなどなど、細かい工作がしたいと、密かな不満が募っていく。 そこで、変身セットで身分を隠して活動開始。 自立心が高く、早々に冒険者の身分を手に入れ、コソコソと独自の魔導具を開発して、日々の暮らしに便利さを追加していく。 そんな中、この世界の神々から使命を与えられてーーー? 口は悪いが、見た目は母親似の美少女!? ハイスペックな少年が世界を変えていく! 異世界改革ファンタジー! 息抜きに始めた作品です。 みなさんも息抜きにどうぞ◎ 肩肘張らずに気楽に楽しんでほしい作品です!

ショートショート集 ファイナリストの決戦は一秒で終わる。

沼津平成
大衆娯楽
沼津平成の珠玉のショートショート集をアルファポリスで特別公開! ジャンル不明。大衆娯楽の作品も純文学ぅな作品も!

自衛官、異世界に墜落する

フレカレディカ
ファンタジー
ある日、航空自衛隊特殊任務部隊所属の元陸上自衛隊特殊作戦部隊所属の『暁神楽(あかつきかぐら)』が、乗っていた輸送機にどこからか飛んできたミサイルが当たり墜落してしまった。だが、墜落した先は異世界だった!暁はそこから新しくできた仲間と共に生活していくこととなった・・・ 現代軍隊×異世界ファンタジー!!! ※この作品は、長年デスクワークの私が現役の頃の記憶をひねり、思い出して趣味で制作しております。至らない点などがございましたら、教えて頂ければ嬉しいです。

私を侮辱するだけの婚約者はもういりません!

杉本凪咲
恋愛
聖女に選ばれた男爵令嬢の私。 しかし一向に力は目覚めず、婚約者の王子にも侮辱される日々を送っていた。 やがて王子は私の素性を疑いはじめ……

私の愛する人は、私ではない人を愛しています

ハナミズキ
恋愛
代々王宮医師を輩出しているオルディアン伯爵家の双子の妹として生まれたヴィオラ。 物心ついた頃から病弱の双子の兄を溺愛する母に冷遇されていた。王族の専属侍医である父は王宮に常駐し、領地の邸には不在がちなため、誰も夫人によるヴィオラへの仕打ちを諫められる者はいなかった。 母に拒絶され続け、冷たい日々の中でヴィオラを支えたのは幼き頃の初恋の相手であり、婚約者であるフォルスター侯爵家嫡男ルカディオとの約束だった。 『俺が騎士になったらすぐにヴィオを迎えに行くから待っていて。ヴィオの事は俺が一生守るから』 だが、その約束は守られる事はなかった。 15歳の時、愛するルカディオと再会したヴィオラは残酷な現実を知り、心が壊れていく。 そんなヴィオラに、1人の青年が近づき、やがて国を巻き込む運命が廻り出す。 『約束する。お前の心も身体も、俺が守るから。だからもう頑張らなくていい』 それは誰の声だったか。 でもヴィオラの壊れた心にその声は届かない。 もうヴィオラは約束なんてしない。 信じたって最後には裏切られるのだ。 だってこれは既に決まっているシナリオだから。 そう。『悪役令嬢』の私は、破滅する為だけに生まれてきた、ただの当て馬なのだから。

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。 これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。 しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。 それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。 事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。 妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。 故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

処理中です...