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chapter4:Older sister, invasion

側妃達の嫉妬 その1

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※個人的にゃサヴェリオはいろいろ壊れているし相当悪い男だし、事情があったとしても夫としては最低な奴だと思ってます。
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記念式典後の夜会の間、その場への参加が出来ない高貴である女達が居た。

側妃レメディオスと側妃グラフィーナ。

正妃であるフォルトナータは妊婦でもう1、2ヶ月程で産まれて来る為に養生の為と参加を見送ったが、この二人は参加できる立場だったにも関わらず、エステルの為に参加出来なかったのだ。

側妃レメディオスは北にある小国ビュールの姫で、金色に近い茶髪と琥珀色の瞳の小柄で美しい妃。

側妃グラフィーナは東の海に浮かぶ島国リンダウの姫、やや褐色の肌と黒髪、黒真珠のような瞳のエキゾチックな美しさを持つ妃だ。

二人は18、9の時にほぼ同時に輿入れし、どちらが上かと睨み合う仲である。

何故この二人が側妃となったか...それは正妃として決まっていたフォルトナータが幼すぎた為、王族の数が例の事件でサヴェリオ一人となった為に急きょ増やす為、そして外交の為にこの二人は側妃として輿入れされたのだ。

正直な所二人はウルムの属国の姫、子を産んでも正妃の子供が王子ならば、その子が王太子となり、そのまま王になる可能性が高い。

しかしだからと言って側妃が産んだ子供が王になれない訳でも無い、飛び抜けて有能ならば王になる可能性もあるからだ、それに王位を継げないとしても、それなりな立場が保障されている。

側妃レメディオスには王女、側妃グラフィーナには王子が生まれ、現時点ではグラフィーナの方が男子を産んでいる点から優位である。

ただし、王妃の妊娠...そしてエステルの存在が双方に影を落とすのだ。

特にエステルに関しては、完全にサヴェリオの寵愛を受けるであろうと...何故ならサヴェリオの心には自分達ではなく、エステルしか居ない事を輿入れ当初から知っていたからだ。

『余は其方等に子を持たせる事は出来ても、心は許す事はない』

そう言われて初夜を迎え、子を為して以降は二人とも一切閨を共にした事は無い。

それは正妃であるフォルトナータも同じだろう、ただしフォルトナータには最大貴族ロンターニ公爵の後ろ盾がある為、その座は揺らぐ事は無いはずだ。

そんな王妃フォルトナータであってもファーストネームである『エマヌエーレ』を呼ばせないのに、エステルには許されたことを聞いた時には二人は戦慄した。

そしてそのエステルのどんな男も虜にする美しさ...トラウゴット教の預言者という胡散臭い立場が側妃達にとってまるで『恐ろしい魔女』のように映る。

もしサヴェリオとエステルに子でも産まれるならば自分達が冷遇されるのでは...と疑念が湧く。

側妃レメディオスが産んだ王女は今8歳で、ウルムの王族らしい銀髪とアクアマリンの様な瞳を持つ子、とても愛らしいとは思うが国内の貴族か他国の王族へ嫁がせる道しかない。

側妃グラフィーナには7歳の王子が居るが、その見た目が母親譲りで黒髪黒目で肌も浅黒くウルム王族特有の色を持たないし、王妃が男子を産めば、王位継承は下がるが男子だ、少なくとも王族から抜けても大公の座は手に入る。

ロンターニ公爵家はウルム王族の親族で王族の色を持っている為に、その娘である王妃フォルトナータの子は王族の色を持つ子供が産まれる可能性が高い。

ただし、それすらもエステルに対する寵愛によって変わるかもしれないのだ。

サヴェリオは魅力的でもあるがとても恐ろしい男でもある。

帝国に次ぐ大国でもあるウルムの王であり、属国を多く従え、その軍事力も経済力も計り知れない程であり、その国の側妃とは言え妃の座にいるのだ。

しかしもし自国に何か問題があったりなどすれば、蹴落とされる可能性も捨てきれない...

何故なら話として聞いている事ではあるが、悪魔に受肉されたとは言え血の繋がりのあった第五王子を殺し、その母であった前側妃を公開処刑し、唆した元大公ヴェネディッドを幽閉したのだから。
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