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chapter4:Older sister, invasion
怨み持つモノ その2
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「あの罪人が?」
「申し訳ございません...まさかあんなにも厳重に監視していたのですが...」
王の執務室でサヴェリオは、家臣の言葉に眉を顰める。
記念式典前にまさか叔父であり、大罪人として塔に幽閉していたベネディッドが忽然と居なくなったと言うではないか。
「やはりあの時余の手で直接処刑すべきだった」
面倒そうにサヴェリオはため息を吐く。
本来ならばダンダリオンの禁呪の書き板の一件で、第五王子の母である側妃と共に処刑する予定だったが、貴族達の反発もあり、命までは取らず塔での生涯幽閉することで手打ちにしたのが仇となった、とサヴェリオは思う。
きっとベネディッドを攫ったのは、サヴェリオを良く思わない貴族の誰か...思われるに立場が危うくなってきているグラノジェルス公爵を中心とした腐敗した貴族派の連中...そして悪魔崇拝者ではないか、とサヴェリオは思う。
「今割ける兵士達をもって探しておりますので...」
「ああ...あとあの者達にも情報を共有する様に、やり口が術士の方法ではない、思うに悪魔が絡んでいる可能性があるからな」
「御意...」
サヴェリオがそう命じると、家臣は執務室から去ると静かになる。
やらねばならない仕事も多いのに、このタイミングでベネディッドが攫われるとは...これは式典で何かが起こりかねない、と思う。
「もし悪魔の手を取るならば...もう赦す必要も無いか...」
サヴェリオは白金の杖を片手に持ち立ち上がり、大きな窓から空を見上げる。
空は今にも雨が降りそうな曇り空だ...あの忌々しい事件のあった日のようだ、と過去を思い起こす。
ウルム国王であるエマヌエーレ・サヴェリオ=ウルムはこの国で最も悪魔を憎んでいる人物である。
自分以外の兄弟を全員殺された恨み、王として素晴らしい父、優しい母、王に相応しい王太子であった兄や争う事を好まない弟達。
全員悪魔ダンダリオンと化した第五王子が殺したのだ。
その時国境での小競り合いの為に王都に居なかったサヴェリオだけが助かった。
サヴェリオはそのまま軍の悪魔対策の精鋭部隊を引き連れて城へ攻め込み、受肉され醜悪な悪魔と化した第五王子を封じた事は今でも思い出される。
その原因を作ったのは第五王子の母である側妃だが、それを手引きしたのはベネディッドで間違いない。
禁呪の書き板を私物化する事はウルム国内では反逆罪であり、見つかったなら王族だとしても例外ではない...それを利用して当時の国王を失脚させるのがベネディッドの狙いだったのだろう。
ただ当初の目論みよりも恐ろしい事態が起こってしまったのはベネディッドとしては予想に反していたのだろうが。
そう...『禁呪の書き板』である『悪魔の心臓』は使い方を間違えると、使用者が『悪魔の受肉の媒介』となり、そうして実体化した悪魔は国を傾けさせる程の脅威であるからだ、だからこそ見つけ次第厳重に封印し誰の手にも渡らないようにするのだ。
それは300年前の学術都市エルコラーロの壊滅事件だけでは無く、サヴェリオが王になるきっかけともなる第五王子による王族惨殺事件も含めてである。
本来ならばサヴェリオ自身がこの立場に在るべきでもなく、軍人として前線に立っていた自身にはふさわしくは無かったのに、サヴェリオだけが生き残ってしまったが故に今この立場に居るのだ。
そして最も愛する女性の夫となる事が出来なくなった事も。
「...近いうちに会う事になるな...」
久々に見たエステルの姿は十代のあの時より更に美しくなっており、きっと実物は更に素晴らしいのだろう。
そしてアルカンタル侯爵の娘バレンティナを差し出す代わりに、あの約束を果たして貰わねばならない...
サヴェリオは目を細めながら空を見つめる...今でも燻る胸の内は例え妻を三人娶り、子もいたとしても変わらなかったのだ...
そう...サヴェリオ自身も大きな犠牲を何度も目の当たりにし、重圧を耐えた結果どこか『壊れて』いるのだから。
「申し訳ございません...まさかあんなにも厳重に監視していたのですが...」
王の執務室でサヴェリオは、家臣の言葉に眉を顰める。
記念式典前にまさか叔父であり、大罪人として塔に幽閉していたベネディッドが忽然と居なくなったと言うではないか。
「やはりあの時余の手で直接処刑すべきだった」
面倒そうにサヴェリオはため息を吐く。
本来ならばダンダリオンの禁呪の書き板の一件で、第五王子の母である側妃と共に処刑する予定だったが、貴族達の反発もあり、命までは取らず塔での生涯幽閉することで手打ちにしたのが仇となった、とサヴェリオは思う。
きっとベネディッドを攫ったのは、サヴェリオを良く思わない貴族の誰か...思われるに立場が危うくなってきているグラノジェルス公爵を中心とした腐敗した貴族派の連中...そして悪魔崇拝者ではないか、とサヴェリオは思う。
「今割ける兵士達をもって探しておりますので...」
「ああ...あとあの者達にも情報を共有する様に、やり口が術士の方法ではない、思うに悪魔が絡んでいる可能性があるからな」
「御意...」
サヴェリオがそう命じると、家臣は執務室から去ると静かになる。
やらねばならない仕事も多いのに、このタイミングでベネディッドが攫われるとは...これは式典で何かが起こりかねない、と思う。
「もし悪魔の手を取るならば...もう赦す必要も無いか...」
サヴェリオは白金の杖を片手に持ち立ち上がり、大きな窓から空を見上げる。
空は今にも雨が降りそうな曇り空だ...あの忌々しい事件のあった日のようだ、と過去を思い起こす。
ウルム国王であるエマヌエーレ・サヴェリオ=ウルムはこの国で最も悪魔を憎んでいる人物である。
自分以外の兄弟を全員殺された恨み、王として素晴らしい父、優しい母、王に相応しい王太子であった兄や争う事を好まない弟達。
全員悪魔ダンダリオンと化した第五王子が殺したのだ。
その時国境での小競り合いの為に王都に居なかったサヴェリオだけが助かった。
サヴェリオはそのまま軍の悪魔対策の精鋭部隊を引き連れて城へ攻め込み、受肉され醜悪な悪魔と化した第五王子を封じた事は今でも思い出される。
その原因を作ったのは第五王子の母である側妃だが、それを手引きしたのはベネディッドで間違いない。
禁呪の書き板を私物化する事はウルム国内では反逆罪であり、見つかったなら王族だとしても例外ではない...それを利用して当時の国王を失脚させるのがベネディッドの狙いだったのだろう。
ただ当初の目論みよりも恐ろしい事態が起こってしまったのはベネディッドとしては予想に反していたのだろうが。
そう...『禁呪の書き板』である『悪魔の心臓』は使い方を間違えると、使用者が『悪魔の受肉の媒介』となり、そうして実体化した悪魔は国を傾けさせる程の脅威であるからだ、だからこそ見つけ次第厳重に封印し誰の手にも渡らないようにするのだ。
それは300年前の学術都市エルコラーロの壊滅事件だけでは無く、サヴェリオが王になるきっかけともなる第五王子による王族惨殺事件も含めてである。
本来ならばサヴェリオ自身がこの立場に在るべきでもなく、軍人として前線に立っていた自身にはふさわしくは無かったのに、サヴェリオだけが生き残ってしまったが故に今この立場に居るのだ。
そして最も愛する女性の夫となる事が出来なくなった事も。
「...近いうちに会う事になるな...」
久々に見たエステルの姿は十代のあの時より更に美しくなっており、きっと実物は更に素晴らしいのだろう。
そしてアルカンタル侯爵の娘バレンティナを差し出す代わりに、あの約束を果たして貰わねばならない...
サヴェリオは目を細めながら空を見つめる...今でも燻る胸の内は例え妻を三人娶り、子もいたとしても変わらなかったのだ...
そう...サヴェリオ自身も大きな犠牲を何度も目の当たりにし、重圧を耐えた結果どこか『壊れて』いるのだから。
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