銭ゲバ令嬢なまぐさ司祭に溺愛される【R18】

Quiet talk2:Bloody Head Silvio

ブラッディヘッド シルヴィオ その2

「お兄様！お帰りなさい！」

「ああ！ただいまティナ！」

シルヴィオがタウンハウスに戻ると、大切な妹であるバレンティナが迎えてくれる。

闇オークションに出品された件がショックだったのか暫く落ち込んでいたみたいだが、今日は何だか晴れやかな顔をしている。

「今日はなんだか元気だね、何かあったのかい？」

「ふふ、秘密ですわ」

「そうか！まぁ乙女の秘密なんてのは探るもんじゃあねぇしな」

例の恋人の所にでも行ってたかと思うも、こんなにも晴れやかになるなら許してやってもいいかとシルヴィオは思う。

面白い男だとは思うが、ダリオの口振りから、どうにも例の恋人はバレンティナに手を出しているに違いない。

まぁ婚約やら結婚もまだの妹に手を出した訳だ、一度はあの女が好む顔を殴ってやろうとは思うが。

「あ！そうそうお兄様に今日私が作ったディナーをご馳走しようと思って腕を振るったの！」

「ほう！そいつは楽しみだなぁ」

「昔領地のお婆様達に教わったコトレッタとミネストローネを用意したわ」

「おお！俺の好物ばかりじゃないか！」

「さぁ、食堂へ向かいましょ？お腹空いたでしょ？」

「そうだな！楽しみだ、はは」

そう言って二人、食堂へ向かう。

シルヴィオは家族が好きだ、特に妹であるバレンティナは小さい頃共に極貧生活を送り、金策に奔走する際に共に頑張った同志である。

父親のジャンマリオは確かにポンコツで人が良すぎて騙されるが、その人の良さや優しさはどうにも憎めず、そんな父親を騙す奴らが悪と判断し、領地の件で手を出せる年齢になったと同時に、騙す連中の後ろ暗いものを暴いて脅して金をむしろ絞り取ったのだ。

裏社会は力社会...そしてそれなりに賢くなければならない。

幸か不幸かシルヴィオは軍事養成学校時代分かった事だが、術能力は全くだったが、そもそも術式が効きづらい体質な上(司祭の回復の奇跡は別)、鈍器特化型の狂戦士の特質があり、そのへんの棒切れがあれば、集団で襲われてもたった一人で殲滅できるくらいに強い。

しかも怒りから狂戦士化した場合の攻撃力は一個中隊レベルの強さである。

それなのに、通常では口は悪くも冷静で頭が良く賢く立ち回る...そうでなければただの血に狂った狂人でしかないが...

ならばと先にベルガモに巣食っていた裏社会組織に単身バールのようなものを持って殴り込みに行き壊滅させ、それを足掛かりに南ウルム裏社会の上層部の連中をイオーゼ海の魚の餌にしてきたのだ...

南ウルムの裏社会を壊滅させたと有名にもなったあたり、借金させた連中全員を脅して簡単に借金はチャラにできたし、更に『慰謝料』として絞り取った金で領地に必要な物を用意し、領地そのものを潤わせた。

そんな姿を見ていた高貴な人物がいた...それがウルムの国王、絶対的君主であるエマヌエーレ・サヴェリオ陛下だ。

呼びつけられ開口一番こう言われたのだ。

「お前は面白い男だなぁ...余の為にその力使わぬか？」

そう言われた時点で断ったら、アルカンタル家が取り潰すと同意義だとシルヴィオは判断した...だから頷いた。

裏社会を潰した件やらそこの仕切るドンになった件などを知っているのかと、底知れぬ所のある陛下に冷や汗をかいた記憶は未だに覚えている。

『同窓会』を始めたきっかけも、サヴェリオ陛下の思いつきから最初はじめたモノだ。

そしてサヴェリオ陛下はもう一つ、シルヴィオの任務を与えている。

シルヴィオの裏社会のツテを使って『悪魔の心臓たる『禁呪の書き板』を探し出す』事を。