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Chapter2:Jealous lover

会ってやってくれねぇか?

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あの後数日私の治療をお姉様はピッピちゃんを通して行った後、ピッピちゃんはバーレに戻って行ったの。

その間...ほぼ1週間ディビッドに会うことも出来ず、タウンハウスの自室でただただディビッドの事を考えていたわ。

ハイラントの系譜...ううん...それよりもディビッドが捨てられた子供だったという話が頭を離れなかったの。

かわいそうで...思い出す度に涙が止まらなかった。

貴方は子供時代どう思ってたの?

迎えが来て救われたの?

本当に悪魔を倒す事を貴方は望んで選んだの?

背負っている運命に翻弄されて辛くないの?

ただ会いたい、抱きしめてあげたい。

そんな時ノック音がする、ピエトロだわ!

「お嬢様?お嬢様にお客様が来てますよ?」

「お客様?」

「家庭教師をお願いしていたジョナサンって少年ですよ」

「ジョナサン!」



客室には少年姿のジョナサンが、ソファーにちょんと座って待っていたわ。

「お久しぶりです」

こっちに気がついて丁寧なウルム語でそう話す。

『良いわよ、エアヴァルド語の方が話しやすいでしょ』

『...じゃあお言葉に甘えて...あのさ、単刀直入に言うとさ、ディビッドに会ってくれないか...あいつずっと部屋に篭って出てこねぇんだ』

『え?』

『あんな反省もしない奴がだぜ...嫁の事、死にかけさせたってずっと後悔しててさ...仕事休むしメシも食わねぇし、マキシムも毎日声かけるけど全然ダメでな』

はぁ、とジョナサンはため息を吐く。

『俺はあいつの孤児院時代から知っててさ、ずっとあいつの事見てきたけど、あんななったの初めてでさ...』

『ジョナサンは知ってるの』

『俺はサンソンの家系だけど、この目だろ?だから教会預かりで小さい頃からフラウエン教会併設の学校で生活してたもんだからな、それに俺、学校だと飛び級でディビッドと同じ学年で勉強もしてたし』

『そう』

『あいつはさ、いつもニコニコしてて女の子に人気で、でも考えてる事が全く分からない奴だし、ちょい意地悪な所もあって...うーん俺が言うと悪い事ばっかりしか言えねぇや...ただ滅茶苦茶気ぃ使うタイプなのは間違いないんだわ』

腕を組みながらジョナサンは話す。

『そうなの?』

『だって俺いつも歳が下だしねって、悪戯とかしてはくるけど結構面倒見てくれたしさ、クラスのちょっとキツめな子にも振り向いて貰おうと、ちょっかいかけてみたりして、周りに馴染ませようとしてさ...なんて言うかなぁ、誰からも嫌われたくないって気持ちでもあんのかなぁ?あいつ見た目がロストック系じゃねえし、そんな所で捨てられたなんて色眼鏡で見られてたから、でもニコニコして人当たりは良いふりはしてたからな、人に気に入られる様にする為に何だろうけどさ』

『え!』

結構無茶苦茶な所があるし、人間関係構築が壊滅的って言われてるのに???

『自分の子供じゃないって捨てられて、ロストックで境遇に理解してまぁまぁな生活してたのに、急に預言者様の弟だ!ハイラントの系譜だ!って担がれて、信頼できる唯一の肉親であるエステル様の期待に応えたいって周囲を納得させる力を身に付けた...でも全部あいつが望んだ事なのか?そつなくこなせてるけど本当はどう思っているのか全く分からなかった』

『...』

『でもディビッド嫁がいて、あいつがあんなに嬉しそうにしてて...エステル様が迎えに来た時すらそんな顔しなかったのにさ、俺はすっげぇほっとしてたんだ、ちゃんとあいつ人を愛する事ができる奴なんだって...ん?大丈夫か?泣いてるぞ?』

ジョナサンにそう指摘される...

『うん...大丈夫...』

ハンカチで涙を拭う...会いたい...ディビッド...


──────
※サンソンの子孫だけあって情に熱く友達思いな奴なんです、ジョナサンは...こう言う事があれば上司の言う事より友達に寄り添うタイプ。
マキシムはエステル様の言う事こそ1番なので相棒とは言えちょい違う。
あと人格形成をああさせた原因はエステル様に一端はある。
長くロストックで生活してたのに無理矢理バーレに連れてこられりゃ心の何処かでグレると思う。普通。
エステル様は罪悪感もあってか『仕方ないよね』で甘やかした所もあったからああなった。
だからエステル様には行かず後家だの言うし、どこか反発している所もある。(でも肉親の情はあるしエステル様悪く無いし憎んではない)
ちなみに当時叱る役が3歳年上の新米神殿騎士のマキシムだった...今も変わらないけど。
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