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1章 真珠の寝床編
20.誓約の効果
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なんと珍しくエロ無しです!!(おまろが一番ビックリした)
-------------------------------------------------------------
マリンは鼻歌を歌う程上機嫌だった。
数日前に”トキヤ”というハイブリット()青年との出会いを果たしここ最近はずっと機嫌が良かった。
デルタにチキチキ☆耐久セックスを持ち込まれクタクタになろうとも、マリンに会うために以前よりも仕事を早く終わらせ疲れているマイクにおっぱいで癒し続けた結果、おっぱい星人になったマイクに「お乳、マリンのお乳飲みたい」と毎回無茶振りをされても……機嫌が損なうことは無かった。
そう、全ては今日という楽しみがあったからだ。
本日!!!やっと!!!!爆イケメン&枯れ専性癖ドストライク紳士と3P出来るのだ!!!!!!
(訳:マイク&キース様との会合がある)
マリンはスキップしながらシャワーを出て、念入りにボディーミルクを塗って戦闘態勢を整える。
因みにこちらのボディーミルクは匂いはふんわり香る程度、しっとり潤いを与えトーンアップも叶うというマリン一押しのアイテム。
中々お高い為、”ここぞ”という時にしか使わないレアアイテムである。
ずーーっと待ちわびた今日という日、一切の抜かりなく準備するのに燃えていた。
今日は朝から客を取っていない。万全の体制で魔王()に挑む為、店主に無理を言って通してもらった。
店主の方には既にキース様から話が行っていたらしく「そうだよな…いくらマリンでも、あのS級ブサイクとブサイク貴族の頂点二人を相手にするなら…休まないと正気も保ってらんねぇよな…」と勝手に涙ぐみながら了承してくれた。
予約は夕方からだった為、お昼まで目一杯寝て体調も体力もフルチャージ済み。
ご飯を食べて精をつけ、お風呂で身体の隅々までピッカピカのトゥルトゥルにした。
ムダ毛はスキルで元から処理していたので、スクラブから泥パックそれから────念の為()お尻の準備をしていた為相当時間がかかった。
(まぁ、スキルで問題なく出来ると思うからしなくてもいっかな~と思ったけどね!
一応マナーかな~と思ってね!安心出来るように!備えあれば患いなしってね!!!!!!)
キースは”話し合いの場”を設けてくれと言っただけなのに。
マイクも、貴族絡みの面倒くさい話(脅し)だとピリピリしているのに。
────マリンの頭の中は、3Pすることが決定済なのである。
因みに三者の温度差が手に取る様に分かっている自称:性の女神は爆笑して見守っていた。
「マリン、グッジョブ☆」とサムズアップしていた。
つま先から頭まで、一通り満足に手入れが完了したマリンは大事なところが”こんにちは”しているエロランジェリーを身に纏った。
下も大事なところに切れ目が入っているガーターベルト式。
マリン的には下着無しでも良かったのだが、せっかくの3P()だし情緒も必要かな?と訳の分からない理論でエロランジェリーに至った。
さて、色々準備してたら時間も迫ってきた。
出迎える衣装はどうしようかなぁ~~~と迷っていた所、”ポーーーーン”と部屋の呼び鈴が鳴った。
(?????お客さんな訳ないし、さっきご飯も食べたし……。)
何だかデジャヴを感じるマリンは、適当に一番前に置いてあった清楚系ワンピースを着て入り口へ向かう。
因みに余談だが、乳首が立ってしまったり万が一汗や他の体液()で透けたりはしない。
なぜなら超絶便利なスキルを持っているからだ!!!
「は~~~~い!」
ガチャッ
扉の前にいたのは────つい先日、マリンとトキヤを引き合わせるきっかけを作った先輩女郎であった。
「あら…姐さん、どうされました?また本の返却でも…?生憎、今日は私大事な予約が……」
「あぁ、さっき聞いたよ!!アンタ今日”あの”S級ブサメンのキモキモ男と、それと張るくらいキモい客から予約入ってるらしいじゃない?」
そう言うと先輩女郎はガシッ!!!とマリンの腕を掴み内緒話をする様に、声を抑えながらこう続けた。
「アンタには借りもあるし…こんなに美人なのに鼻につかないイイ子なんだ、ちょっとイイコトあってもいいんじゃないかと思ってね♪これから地獄を見るアンタに、天国でも見せてあげようと思ってね♪……ほら、こっちよ!店のモンに見つからない内に行くわよ!!!」
「えっ?!ちょ、ちょっと姐さんっ!わ、私はそんな、ちょっ…力強ぇなオイ!!聞いてんのかこのアマァ!!!」
言うだけ言ってスキップしそうなくらい上機嫌に、そして強引にマリンを引っ張る先輩女郎にはマリンの声は届かず……。
マリンはあれよあれよと連れ去られていった。
一度受付の階まで降り(見つかりそうで滅茶苦茶素早く姐さんが動いていた)、マリンが足を踏み入れたことのない別館の一室の前まで来ると、ようやく先輩女郎の足は止まった。
「さ、ここよ。」
「…姐さん、お礼のつもりなら大丈夫ですから。というかここは?私初めて別館に来ましたけど…。」
「あぁ、そうだろうね。アンタが住んでる本館は基本売れっ子しか住めない様になってるからね。勿論、私も部屋は本館だけど…本館の方は入り客の確認が厳重で面倒だから、こうして目立たない別館にわざわざ来たってわけ。」
ここまでの先輩女郎のセリフで、マリンは今世ではペラペラな紙程薄くなった危機感を感じる。
(おやおやぁぁぁああ???コイツぁ面倒事の匂いがぷんぷんするぜえぇぇぇえ????)
「や、やっぱり帰ります!早く支度をしないと…お客様に粗相があってはいけませんので!!!」
「バカね!そんないい子ちゃんでずっといたらその内心が可笑しくなっちゃうわよ!アンタのその美貌で良い思い出来るんだからちょっとくらい遅れてもブサメン達は文句言わないでしょ!アンタこんなに頑張ってるんだもの、ちょっとくらい良い思いしても罰何か当たんないわ!!」
そう言うと先輩女郎はマリン信じられないくらいの力で引き寄せ、目の前の部屋の中に一緒に入った。
「お待たせしましたモーブ様♪こちらがお話した可哀想なマリンです。マリン、こちら子爵家のモーブ様よ。お貴族様なのに私達女郎にも気さくに優しく接して下さる、それはそれは身も心も見惚れる様な良いお方なのよ♪」
「やぁ……これはこれは。噂に聞いていたが…ふごっ。驚いた!そなたの美しさの前では、私の様なただの身分だけの男は霞んでしまうじゃないか。ふがっ」
「いやだわ、謙遜しちゃって!!マリンはモーブ様に並ぶくらい見目麗しいけど、モーブ様には男性しか持ちえない魅力がた~っぷりで…きゃっ私ったら♪」
「ぶふ、そうか?ふごっ、照れるではないか…ふがふがっ」
部屋の中にいたのは、おおよそ170cmだろうか?マリンよりは背の高い……丸々と太りしっとりと汗ばんだ豚…いや、辛うじて肉の狭間にある造形を見るに人間だったか。ギトギト顔の薄らハゲの子爵男子がそこに立っていた。
「ひっ」
(久々に見たらインパクト大!!!!ひっ!!ちゃんとお風呂入ってるの?!?!体型は別として清潔感の欠片もねぇなこのオッサン!!!貴族男子ならキース様を見習え!!!!キース様は離れててもイイ匂いするイイ男だぞ!!!!!)
ここ最近、天から祝福されたご尊顔達しか目に映していなかったマリンには、刺激()が強すぎる被写体だった。
前世でも客として相手していたし、イケメンが大好物ではあるが別にぽっちゃり体型もちょいブサメンも嫌いではないのだ。
性格が常識的で、且つ清潔感があればの話だが。
いや、勿論イケメンが一番好きだが。何なら今となってはイケメンとしか致したくないくらい我儘になったが。
マジで────清!!!潔!!!感!!!をどこに置いてきやがったこのオッサン!!!!
ふごふご言いやがってせめて呼吸くらいまともに出来る様な体型で止まりやがれ!!!!
「あらあら、ふふふ♪普段ブサイクばっかり見て、モーブ様見て驚いちゃってるわこの子♪」
「ふっふっふ、ふごっ。参ったな……そんな可愛い姿をみたら、私も張り切ってしまうぞ~~?」
「まぁ!私の時も初めからそのくらいで来てくれていいんですよ?……さぁ、マリン。これから地獄の様な仕事が待ってる貴方に、ご褒美よ♪モーブ様は顔も良いしテクも凄いから、思う存分癒されなさい♪」
(うわぁぁぁぁぁ!!!でたぁぁぁぁ!!!嫌な予感的中じゃねぇかぁぁ~~~~!!!キングオブ有難迷惑~~~!!!!)
ヒシヒシと感じていた嫌な予感が的中してしまい、思わず後退りしたマリンは顔を引きつらせながら丁寧に断った。
「あの、姐さん…それからモーブ様?お気遣いいただき、本当にありがたいんですが……私は大丈夫ですのでそのお気遣いは結構です。私、少しもこの仕事を辛いと思った事ないんですよ。ええ、毛ほども。」
「まぁ…アンタって子は……!!!こんな時までそんなに気丈に振舞って……!!!」
「いえいえいえいえいえ!!!本当に!!!私なんなら自分で望んでこのお店で働かせていただいてますから!!!大体姐さんも知ってるでしょ?!私はイケ…”ブサメンの方しかお相手しない”という誓約を自分から申し出させていただいてるんですよ??そう!!私はブサメンの方としか出来ないんです!モーブ様とは出来ません!!せっかくのご厚意ですが残念でしたね?!?!?!」
「あぁ、あれね。全く……店長もブサメンを相手にする女郎が欲しかったからってあんな嘘つくなんてね?マリンはこんなに良い子なんだから、そんな嘘つかなくたってちゃんと仕事するに決まってるってのに。あぁ、マリン。店長を恨まないで上げてね?あんな嘘広まらせて周りを固めとかないと、いくらアンタが優しいからって最初から信用できなかったんでしょ。」
「あぁ、私も聞いたぞ?ふごっ。その噂。だがちと荒いとは思わぬか?ふごっ。”自分からその様な誓約を持ち掛けた”など……誰が聞いても嘘の内容だと一発で分かるではないか。全く、ここの店主は抜けておるなぁ。」
何と初めから最後までノンフィクションであるマリンの噂は、あまりにも非現実的過ぎて皆店主がついた嘘だと思っているらしい。
(おいおいおいおい!!!こちとら本気で誓約結んで独立の為に金貨稼いどんのじゃ!!!!)
「いえ!!嘘じゃないんです!!本当なんです!!」
「はいはい、分かった分かった。そんなに必死にならなくても、店長には誰も突っ込んだりしないから安心しなさい。────私がいたら思う存分甘えられないでしょ。外に出てるから、楽しんで~~~♪」
”良い事してやった!”と言わんばかりに、輝く笑顔で先輩女郎は部屋から消えていった。
拘束が無くなった為、この隙に……!!とマリンも続こうとした時。
バンッ!!という音とともに、モーブに所詮”壁ドン”をされ行く手を阻まれた。
「ひぃっ!!!!」
ゾワゾワゾワッ!!!!と反射的に鳥肌が立った。
久々の不潔ブサメンが、すぐそこまで迫っているのだ。さっきより距離が近づき、毛穴の状態まで見えてしまう。
流石、手入れもきちんとしていないのだろう…汚肌状態だ…そしてやはりちょっと臭い…辛い…。
「は、放して下さい!私はブサイクな方しか愛せないのです!!不細工な方が好きなのです!!!だからあの誓約を進んで交わしたのです!本当ですよ?!このままだと魔法の鉄槌が貴方に降りかかりますよ?!?!早く離れてください!!!」
「ぐふ、ふごっ。ここには私しかいないのだ。そう強がらなくても良い。……そなたは本当に健気よのぉ、ぐふっ。安心しなさい、これからの嫌な事、全て頑張れるように私が天国を見せてあげるからね、ふごっ。ぐふ、そなたのムッチリしたおっぱいも尻も、股もその奥も……ぐふ、ふごっ!」
(どこが”身も心も見惚れる男”だぁぁぁぁあああ!!!完全にエロ同人に出てくるモブオジサンじゃねぇかぁぁ~~~~!!!キメェ!!!舐め回す様に見てんじゃねぇ~~!!視姦プレイはイケメンしか許してねぇんだよお帰り下さい~~~!!!)
いくら性に爆寛容なマリンでも、”生理的に無理”なタイプだっているのだ。
もうアウト!アウト!!アウト!!!スリーアウトチェンジッ!!!!がコンマ1秒で判定された。
あまりのNGさに、逆にマリンは冷静になった。
もうスンッて真顔になった。
あの、いつも柔らかな優しい笑みがデフォルトのマリンが、だ。
もうこうなったらこのモブオジサンはどうなっても知らん。
散々忠告したのに無視するコイツ等が悪い。ワイはもう知らんぜよ。
(そうだ、どうせだったら”誓約”の効果の確認でもしよ~っと。どうせスキル使えばこんなモブオジサン一瞬だし。誓約の効果ってどんくらいで出るんだろ~~。とりあえず、至近距離に来られただけじゃ発動しないのね。)
急に大人しくなったマリンに、モーブはぐふぐふと下品な笑みを浮かべ手を伸ばしてくる。
その手は迷うことなくマリンのたわわな乳に向かっていたが、反射的に逃げた為二の腕が掴まれる形になった。
「おや、ふごっ。そんなに逃げなくてもいいんだよ?ぐふ、優しくしてあげるからねぇ~?」
(ヒィィィイイイ!!!え?!?!触るのもまだOKなの????え!!これもしかして貫通以外セーフなの?!?!え!!誓約うんこやん?!?!?!いやいやいやいや!!流石に無理!!!おっぱいも尻もアソコも……何なら全部マイク達の為に滅茶苦茶準備したのに!!!こんなモブオジサンに触られたくないんですが?!?!?!)
プチパニックになり、”もう検証諦めてスキル使う?”と悩んでる隙に、モブオジサンの次なる一手が出される。
「ぐふ、さぁ……今度こそ、その大きなお乳を揉んで気持ち良くしてあげるからねぇ……ふごっ」
ニタニタと顔まで近づけ────恐らくキスもするつもりなのだろう、流石に我慢の限界が来たマリンは反射的に叫んだ。
「いやぁぁぁぁーーーーーー!!!!誰か助けてーーーーーーー!!!!(モブオジサンに犯されるーーー!!!)」
その時だった。
ピカッ!!!!!!
バリバリバリッ!!!!ズドンッ!!!!!
一瞬の内に強い閃光が広がったと思ったら、地に響く轟音が鳴り響き物凄い音と衝撃が別館を襲った。
マリンがあまりの眩しさに閉じていた目を開けると…そこには、
プスプスプス、と音を出しながら横たわる丸焦げのモブオジサンがいた。
(────誓約、ハンパねぇ・・・・・・。)
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マリンは鼻歌を歌う程上機嫌だった。
数日前に”トキヤ”というハイブリット()青年との出会いを果たしここ最近はずっと機嫌が良かった。
デルタにチキチキ☆耐久セックスを持ち込まれクタクタになろうとも、マリンに会うために以前よりも仕事を早く終わらせ疲れているマイクにおっぱいで癒し続けた結果、おっぱい星人になったマイクに「お乳、マリンのお乳飲みたい」と毎回無茶振りをされても……機嫌が損なうことは無かった。
そう、全ては今日という楽しみがあったからだ。
本日!!!やっと!!!!爆イケメン&枯れ専性癖ドストライク紳士と3P出来るのだ!!!!!!
(訳:マイク&キース様との会合がある)
マリンはスキップしながらシャワーを出て、念入りにボディーミルクを塗って戦闘態勢を整える。
因みにこちらのボディーミルクは匂いはふんわり香る程度、しっとり潤いを与えトーンアップも叶うというマリン一押しのアイテム。
中々お高い為、”ここぞ”という時にしか使わないレアアイテムである。
ずーーっと待ちわびた今日という日、一切の抜かりなく準備するのに燃えていた。
今日は朝から客を取っていない。万全の体制で魔王()に挑む為、店主に無理を言って通してもらった。
店主の方には既にキース様から話が行っていたらしく「そうだよな…いくらマリンでも、あのS級ブサイクとブサイク貴族の頂点二人を相手にするなら…休まないと正気も保ってらんねぇよな…」と勝手に涙ぐみながら了承してくれた。
予約は夕方からだった為、お昼まで目一杯寝て体調も体力もフルチャージ済み。
ご飯を食べて精をつけ、お風呂で身体の隅々までピッカピカのトゥルトゥルにした。
ムダ毛はスキルで元から処理していたので、スクラブから泥パックそれから────念の為()お尻の準備をしていた為相当時間がかかった。
(まぁ、スキルで問題なく出来ると思うからしなくてもいっかな~と思ったけどね!
一応マナーかな~と思ってね!安心出来るように!備えあれば患いなしってね!!!!!!)
キースは”話し合いの場”を設けてくれと言っただけなのに。
マイクも、貴族絡みの面倒くさい話(脅し)だとピリピリしているのに。
────マリンの頭の中は、3Pすることが決定済なのである。
因みに三者の温度差が手に取る様に分かっている自称:性の女神は爆笑して見守っていた。
「マリン、グッジョブ☆」とサムズアップしていた。
つま先から頭まで、一通り満足に手入れが完了したマリンは大事なところが”こんにちは”しているエロランジェリーを身に纏った。
下も大事なところに切れ目が入っているガーターベルト式。
マリン的には下着無しでも良かったのだが、せっかくの3P()だし情緒も必要かな?と訳の分からない理論でエロランジェリーに至った。
さて、色々準備してたら時間も迫ってきた。
出迎える衣装はどうしようかなぁ~~~と迷っていた所、”ポーーーーン”と部屋の呼び鈴が鳴った。
(?????お客さんな訳ないし、さっきご飯も食べたし……。)
何だかデジャヴを感じるマリンは、適当に一番前に置いてあった清楚系ワンピースを着て入り口へ向かう。
因みに余談だが、乳首が立ってしまったり万が一汗や他の体液()で透けたりはしない。
なぜなら超絶便利なスキルを持っているからだ!!!
「は~~~~い!」
ガチャッ
扉の前にいたのは────つい先日、マリンとトキヤを引き合わせるきっかけを作った先輩女郎であった。
「あら…姐さん、どうされました?また本の返却でも…?生憎、今日は私大事な予約が……」
「あぁ、さっき聞いたよ!!アンタ今日”あの”S級ブサメンのキモキモ男と、それと張るくらいキモい客から予約入ってるらしいじゃない?」
そう言うと先輩女郎はガシッ!!!とマリンの腕を掴み内緒話をする様に、声を抑えながらこう続けた。
「アンタには借りもあるし…こんなに美人なのに鼻につかないイイ子なんだ、ちょっとイイコトあってもいいんじゃないかと思ってね♪これから地獄を見るアンタに、天国でも見せてあげようと思ってね♪……ほら、こっちよ!店のモンに見つからない内に行くわよ!!!」
「えっ?!ちょ、ちょっと姐さんっ!わ、私はそんな、ちょっ…力強ぇなオイ!!聞いてんのかこのアマァ!!!」
言うだけ言ってスキップしそうなくらい上機嫌に、そして強引にマリンを引っ張る先輩女郎にはマリンの声は届かず……。
マリンはあれよあれよと連れ去られていった。
一度受付の階まで降り(見つかりそうで滅茶苦茶素早く姐さんが動いていた)、マリンが足を踏み入れたことのない別館の一室の前まで来ると、ようやく先輩女郎の足は止まった。
「さ、ここよ。」
「…姐さん、お礼のつもりなら大丈夫ですから。というかここは?私初めて別館に来ましたけど…。」
「あぁ、そうだろうね。アンタが住んでる本館は基本売れっ子しか住めない様になってるからね。勿論、私も部屋は本館だけど…本館の方は入り客の確認が厳重で面倒だから、こうして目立たない別館にわざわざ来たってわけ。」
ここまでの先輩女郎のセリフで、マリンは今世ではペラペラな紙程薄くなった危機感を感じる。
(おやおやぁぁぁああ???コイツぁ面倒事の匂いがぷんぷんするぜえぇぇぇえ????)
「や、やっぱり帰ります!早く支度をしないと…お客様に粗相があってはいけませんので!!!」
「バカね!そんないい子ちゃんでずっといたらその内心が可笑しくなっちゃうわよ!アンタのその美貌で良い思い出来るんだからちょっとくらい遅れてもブサメン達は文句言わないでしょ!アンタこんなに頑張ってるんだもの、ちょっとくらい良い思いしても罰何か当たんないわ!!」
そう言うと先輩女郎はマリン信じられないくらいの力で引き寄せ、目の前の部屋の中に一緒に入った。
「お待たせしましたモーブ様♪こちらがお話した可哀想なマリンです。マリン、こちら子爵家のモーブ様よ。お貴族様なのに私達女郎にも気さくに優しく接して下さる、それはそれは身も心も見惚れる様な良いお方なのよ♪」
「やぁ……これはこれは。噂に聞いていたが…ふごっ。驚いた!そなたの美しさの前では、私の様なただの身分だけの男は霞んでしまうじゃないか。ふがっ」
「いやだわ、謙遜しちゃって!!マリンはモーブ様に並ぶくらい見目麗しいけど、モーブ様には男性しか持ちえない魅力がた~っぷりで…きゃっ私ったら♪」
「ぶふ、そうか?ふごっ、照れるではないか…ふがふがっ」
部屋の中にいたのは、おおよそ170cmだろうか?マリンよりは背の高い……丸々と太りしっとりと汗ばんだ豚…いや、辛うじて肉の狭間にある造形を見るに人間だったか。ギトギト顔の薄らハゲの子爵男子がそこに立っていた。
「ひっ」
(久々に見たらインパクト大!!!!ひっ!!ちゃんとお風呂入ってるの?!?!体型は別として清潔感の欠片もねぇなこのオッサン!!!貴族男子ならキース様を見習え!!!!キース様は離れててもイイ匂いするイイ男だぞ!!!!!)
ここ最近、天から祝福されたご尊顔達しか目に映していなかったマリンには、刺激()が強すぎる被写体だった。
前世でも客として相手していたし、イケメンが大好物ではあるが別にぽっちゃり体型もちょいブサメンも嫌いではないのだ。
性格が常識的で、且つ清潔感があればの話だが。
いや、勿論イケメンが一番好きだが。何なら今となってはイケメンとしか致したくないくらい我儘になったが。
マジで────清!!!潔!!!感!!!をどこに置いてきやがったこのオッサン!!!!
ふごふご言いやがってせめて呼吸くらいまともに出来る様な体型で止まりやがれ!!!!
「あらあら、ふふふ♪普段ブサイクばっかり見て、モーブ様見て驚いちゃってるわこの子♪」
「ふっふっふ、ふごっ。参ったな……そんな可愛い姿をみたら、私も張り切ってしまうぞ~~?」
「まぁ!私の時も初めからそのくらいで来てくれていいんですよ?……さぁ、マリン。これから地獄の様な仕事が待ってる貴方に、ご褒美よ♪モーブ様は顔も良いしテクも凄いから、思う存分癒されなさい♪」
(うわぁぁぁぁぁ!!!でたぁぁぁぁ!!!嫌な予感的中じゃねぇかぁぁ~~~~!!!キングオブ有難迷惑~~~!!!!)
ヒシヒシと感じていた嫌な予感が的中してしまい、思わず後退りしたマリンは顔を引きつらせながら丁寧に断った。
「あの、姐さん…それからモーブ様?お気遣いいただき、本当にありがたいんですが……私は大丈夫ですのでそのお気遣いは結構です。私、少しもこの仕事を辛いと思った事ないんですよ。ええ、毛ほども。」
「まぁ…アンタって子は……!!!こんな時までそんなに気丈に振舞って……!!!」
「いえいえいえいえいえ!!!本当に!!!私なんなら自分で望んでこのお店で働かせていただいてますから!!!大体姐さんも知ってるでしょ?!私はイケ…”ブサメンの方しかお相手しない”という誓約を自分から申し出させていただいてるんですよ??そう!!私はブサメンの方としか出来ないんです!モーブ様とは出来ません!!せっかくのご厚意ですが残念でしたね?!?!?!」
「あぁ、あれね。全く……店長もブサメンを相手にする女郎が欲しかったからってあんな嘘つくなんてね?マリンはこんなに良い子なんだから、そんな嘘つかなくたってちゃんと仕事するに決まってるってのに。あぁ、マリン。店長を恨まないで上げてね?あんな嘘広まらせて周りを固めとかないと、いくらアンタが優しいからって最初から信用できなかったんでしょ。」
「あぁ、私も聞いたぞ?ふごっ。その噂。だがちと荒いとは思わぬか?ふごっ。”自分からその様な誓約を持ち掛けた”など……誰が聞いても嘘の内容だと一発で分かるではないか。全く、ここの店主は抜けておるなぁ。」
何と初めから最後までノンフィクションであるマリンの噂は、あまりにも非現実的過ぎて皆店主がついた嘘だと思っているらしい。
(おいおいおいおい!!!こちとら本気で誓約結んで独立の為に金貨稼いどんのじゃ!!!!)
「いえ!!嘘じゃないんです!!本当なんです!!」
「はいはい、分かった分かった。そんなに必死にならなくても、店長には誰も突っ込んだりしないから安心しなさい。────私がいたら思う存分甘えられないでしょ。外に出てるから、楽しんで~~~♪」
”良い事してやった!”と言わんばかりに、輝く笑顔で先輩女郎は部屋から消えていった。
拘束が無くなった為、この隙に……!!とマリンも続こうとした時。
バンッ!!という音とともに、モーブに所詮”壁ドン”をされ行く手を阻まれた。
「ひぃっ!!!!」
ゾワゾワゾワッ!!!!と反射的に鳥肌が立った。
久々の不潔ブサメンが、すぐそこまで迫っているのだ。さっきより距離が近づき、毛穴の状態まで見えてしまう。
流石、手入れもきちんとしていないのだろう…汚肌状態だ…そしてやはりちょっと臭い…辛い…。
「は、放して下さい!私はブサイクな方しか愛せないのです!!不細工な方が好きなのです!!!だからあの誓約を進んで交わしたのです!本当ですよ?!このままだと魔法の鉄槌が貴方に降りかかりますよ?!?!早く離れてください!!!」
「ぐふ、ふごっ。ここには私しかいないのだ。そう強がらなくても良い。……そなたは本当に健気よのぉ、ぐふっ。安心しなさい、これからの嫌な事、全て頑張れるように私が天国を見せてあげるからね、ふごっ。ぐふ、そなたのムッチリしたおっぱいも尻も、股もその奥も……ぐふ、ふごっ!」
(どこが”身も心も見惚れる男”だぁぁぁぁあああ!!!完全にエロ同人に出てくるモブオジサンじゃねぇかぁぁ~~~~!!!キメェ!!!舐め回す様に見てんじゃねぇ~~!!視姦プレイはイケメンしか許してねぇんだよお帰り下さい~~~!!!)
いくら性に爆寛容なマリンでも、”生理的に無理”なタイプだっているのだ。
もうアウト!アウト!!アウト!!!スリーアウトチェンジッ!!!!がコンマ1秒で判定された。
あまりのNGさに、逆にマリンは冷静になった。
もうスンッて真顔になった。
あの、いつも柔らかな優しい笑みがデフォルトのマリンが、だ。
もうこうなったらこのモブオジサンはどうなっても知らん。
散々忠告したのに無視するコイツ等が悪い。ワイはもう知らんぜよ。
(そうだ、どうせだったら”誓約”の効果の確認でもしよ~っと。どうせスキル使えばこんなモブオジサン一瞬だし。誓約の効果ってどんくらいで出るんだろ~~。とりあえず、至近距離に来られただけじゃ発動しないのね。)
急に大人しくなったマリンに、モーブはぐふぐふと下品な笑みを浮かべ手を伸ばしてくる。
その手は迷うことなくマリンのたわわな乳に向かっていたが、反射的に逃げた為二の腕が掴まれる形になった。
「おや、ふごっ。そんなに逃げなくてもいいんだよ?ぐふ、優しくしてあげるからねぇ~?」
(ヒィィィイイイ!!!え?!?!触るのもまだOKなの????え!!これもしかして貫通以外セーフなの?!?!え!!誓約うんこやん?!?!?!いやいやいやいや!!流石に無理!!!おっぱいも尻もアソコも……何なら全部マイク達の為に滅茶苦茶準備したのに!!!こんなモブオジサンに触られたくないんですが?!?!?!)
プチパニックになり、”もう検証諦めてスキル使う?”と悩んでる隙に、モブオジサンの次なる一手が出される。
「ぐふ、さぁ……今度こそ、その大きなお乳を揉んで気持ち良くしてあげるからねぇ……ふごっ」
ニタニタと顔まで近づけ────恐らくキスもするつもりなのだろう、流石に我慢の限界が来たマリンは反射的に叫んだ。
「いやぁぁぁぁーーーーーー!!!!誰か助けてーーーーーーー!!!!(モブオジサンに犯されるーーー!!!)」
その時だった。
ピカッ!!!!!!
バリバリバリッ!!!!ズドンッ!!!!!
一瞬の内に強い閃光が広がったと思ったら、地に響く轟音が鳴り響き物凄い音と衝撃が別館を襲った。
マリンがあまりの眩しさに閉じていた目を開けると…そこには、
プスプスプス、と音を出しながら横たわる丸焦げのモブオジサンがいた。
(────誓約、ハンパねぇ・・・・・・。)
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