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本編

眠りたい

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「私に何かできることはありますか?」
ノアさんは顔を上げてくれた。すごくビックリした顔だ。
「…良いんだ。気を使わなくて良い」
赤くした顔で苦笑する。気を使っている訳じゃないんだけどな。

「ノアさんには私にして欲しいことって何もありませんか」
もしそうならただの押し付けだ。
ノアさんは言いにくそうに迷った末にかすれた低い声で言った。
「君を抱きしめて眠りたい」
「え?」
「ち、違うんだ、そういう意味じゃない。ただ…何もしなくて良いから、君を抱きしめたまま眠ってみたい…一度で良いんだ」
「わかりました」
私は頷いた。


寝る前にガウンを着てノアさんの部屋に向かってベッドの上に2人で座った。
「は、はああ、…すまない。本当に何もしない。誓うから」
なんだか息が上がっている。本当に今夜寝れるのかな?
私はちょっと笑って言った。
「じゃあ寝ましょうか」
ベッドに横になるとそっと上から抱きしめてきた。
「ああ、…夢みたいだ」
私は胸に顔を埋めているノアさんの顔を抱きしめた。

すこし経つとすすり泣くような、そんな声が聞こえてきた。
「…ん、ノアさん?」
「すまない、本当に嬉しくて、勝手に涙が出てくるんだ」
くぐもった声が聞こえてきた。
私はその短い黒い髪を撫でた。ちょっとチクチクするけど、柔らかい。
「ずっと、辛かったですね」
「ああ」
「今は辛くないですか?」
「ああ」

ノアさんは私の顔を見てすこし笑ってくれた。
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