上 下
35 / 155
本編

悩み

しおりを挟む
突然だけど、この世界というかこの国では男性からお付き合いを申し込んだり結婚したり、というのが普通だ。女性からする場合も稀にあるけど、一般的には男性のプライドを著しく傷つける行為とされている。性にも大らかで付き合う前や結婚する前のいわゆるも性の不一致での離婚を減らすために奨励されている。あと、数は少ないけど、全員の同意があれば、複数婚もある。
だから、もし向こうが同意してくれたら私がフィースとイアンの2人と結婚するというのも可能なのだ。

でも、と考えた。
今のままだと、難しくない?私から働きかけるしかないけど、かなり無理がない?
私から少し歩み寄っただけで泣いちゃうくらいなのだ。恋人、ましてや結婚なんて遠い夢に思える。


「ガードルート?」
私はハッとした。今はリプリ団長の書類整理を手伝っていたのだ。
「…大丈夫かい?」
「はい。すみませんでした」
リプリ団長は麗しい顔で少し微笑んだ。
「悩み事かい?」
「…はい」
「どんなことかな?話せる程度で構わないが」
リプリ団長、優しい。麗しいし惚れちゃう。
「恋人ってどうやったら出来るのかな?って思ってました」
ふむ、と顔を上げると不思議そうに言った。
「ガードルートみたいな可愛い女の子なら入れ食いなんじゃないかい?こんなところで働いているから遠巻きにされているのかな」
「いえ、そういう訳ではなくて…」
そこで働いている人と恋仲になりたいんです。
「何せ、悩んでもしょうがないことはあまり考えないことだ。時間が解決してくれることなら待つしかないし、考えている時間が無駄だろう?」
リプリ団長はすごく前向きなんだな、と思う。それに優しい。良い人だ。でもこの人もコンプレックスは強いはずだ。どうやって克服したんだろう?

「団長って結婚されてますよね?」
「うん、そうだよ」
「奥様とはどうやって出会われたんですか?」
「あちらが城で下働きをしててね、偶然助けたのがきっかけで知り合ったんだ」
「…その、奥様とお付き合いするまでに時間かかったりしました?」
リプリ団長は首を傾げながら笑った。

「すごくかかったかな」
「どうしてですか」
「僕が彼女に相応しいとはとても思えなかったんだ。こんな顔だろう?辛い思いをさせたくなかった」
「どうやってそれを、克服したんですか?」
「うーん、彼女の誠意と努力だ。僕が今安定しているように見えるのならそれは彼女がしてくれたことがなければなかったことなんだ」
誠意と、努力。あと時間か。
私はまたうーんと腕組みして、リプリ団長は苦笑してた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

異世界転移した心細さで買ったワンコインの奴隷が信じられない程好みドストライクって、恵まれすぎじゃないですか?

sorato
恋愛
休日出勤に向かう途中であった筈の高橋 菫は、気付けば草原のど真ん中に放置されていた。 わけも分からないまま、偶々出会った奴隷商人から一人の男を購入する。 ※タイトル通りのお話。ご都合主義で細かいことはあまり考えていません。 あっさり日本人顔が最も美しいとされる美醜逆転っぽい世界観です。 ストーリー上、人を安値で売り買いする場面等がありますのでご不快に感じる方は読まないことをお勧めします。 小説家になろうさんでも投稿しています。ゆっくり更新です。

異世界転生先で溺愛されてます!

目玉焼きはソース
恋愛
異世界転生した18歳のエマが転生先で色々なタイプのイケメンたちから溺愛される話。 ・男性のみ美醜逆転した世界 ・一妻多夫制 ・一応R指定にしてます ⚠️一部、差別的表現・暴力的表現が入るかもしれません タグは追加していきます。

異世界の美醜と私の認識について

佐藤 ちな
恋愛
 ある日気づくと、美玲は異世界に落ちた。  そこまでならラノベなら良くある話だが、更にその世界は女性が少ない上に、美醜感覚が美玲とは激しく異なるという不思議な世界だった。  そんな世界で稀人として特別扱いされる醜女(この世界では超美人)の美玲と、咎人として忌み嫌われる醜男(美玲がいた世界では超美青年)のルークが出会う。  不遇の扱いを受けるルークを、幸せにしてあげたい!そして出来ることなら、私も幸せに!  美醜逆転・一妻多夫の異世界で、美玲の迷走が始まる。 * 話の展開に伴い、あらすじを変更させて頂きました。

気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。

sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。 気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。 ※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。 !直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。 ※小説家になろうさんでも投稿しています。

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

異世界転生〜色いろあって世界最強!?〜

野の木
恋愛
気付いたら、見知らぬ場所に。 生まれ変わった?ここって異世界!? しかも家族全員美男美女…なのになんで私だけ黒髪黒眼平凡顔の前世の姿のままなの!? えっ、絶世の美女?黒は美人の証? いやいや、この世界の人って目悪いの? 前世の記憶を持ったまま異世界転生した主人公。 しかもそこは、色により全てが決まる世界だった!?

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

処理中です...